山内 佑輔
新渡戸文化学園 プロジェクトデザイナー/VIVISTOP NITOBEチーフクルー/SOZO.Ed副代表/Microsoft Innovative Educator Expert

実社会と学びを繋ぐ授業をデザイン。ワークショップの手法をもちいて、子どもたちのクリエイティビティを育む環境をつくりだす。学校内では様々なアーティストや専門家、企業と連携した授業を実践。2020年4月から新渡戸文化学園へ移り、VIVITA株式会社と連携しVIVISTOP NITOBEを開設。「教室や教科、学年などの枠をなくし、教師も生徒も共につくり、共に学ぶ」を掲げ、新しい学びのあり方を模索したり、放課後の子どもたちの活動を拡張中。
学校外ではTechnology×Creative×Artをキーワードに各地でワークショップやイベントを展開。キッズワークショップアワード優秀賞を受賞。出張図工室プロジェクト「山と水の図工室」の活動では東京新聞教育賞を受賞。その他にも、地域と連動した創造型プロジェクトに複数携わる。二児の父。

ファシリテーションスキル研修参加者インタビュー③
~山内 佑輔さん~

平成 31 年度の未来の教室の実施事業者に一般財団法人活育教育財団が採択され、実施された「ファシリテーションスキル研修」(2019年12月~2020年2月)には、全国から教育関係者48名の方が参加してくださいました。今回は東京から参加してくださった山内先生に、ファシリテーションスキル研修を通して学んだことを語っていただきました。

【ファシリテーションスキル研修とは】

今後ますます多様化、ITの進化、グローバル化が進み、社会の急速な変化による新たなニーズや課題に応えられる人材を育成するための新たな教育を身に着ける研修です。 

具体的には自律性、協働性、多様性理解などのグローバルスキルをテーマとしたPBL型のワークショップをデザインする方法と、実施するノウハウを身に付けていきます。

研修を終えた後、参加者の皆様が学校の授業やワークショップの形を進化させ、グローバルな環境下で複雑な課題解決ができる変革型人材の輩出ができるようになることを目指しています。

詳細はこちらからご確認ください。

子どもたちの好奇心を引き出すファシリテーション

ーファシリテーションに興味をもったきっかけついて教えてください。

山内:ファシリテーションという言葉に出会ったのは、学校の先生になる前だったんです。僕のキャリアは少し変わっていて、最初は大学の職員を9年間やっていました。

その中で卒業生を対象としたイベント(ホームカミングデー)の企画に関わっていたことがあるのですが、例年だとほとんどが高齢者の方だったので、親子で参加できる子ども向けのコンテンツを充実させて「もっと面白い企画を作りたい!」と考えていました。

そんな時にNPO法人 CANVASに出会ったんです。CANVASは様々なワークショップを子ども向けに行っている団体です。CANVASが主催するワークショップに参加している子どもたちの目の輝き方、楽しそうにしている様子に感動しました。

CANVASのワークショップでは、例えば子どもたちの目の前に紙コップが1万個置かれて、ファシリテーターは「これで何を作りたいですか?」と問いかけるだけなんです。

衝撃でした。「問いを変えるだけで、こんなにも変わるんだ」と実感した瞬間でした。

僕は今までこういったワークショップや授業では大人や先生から「教えられる」ことが当たり前だと思っていました。「教えない」ことを通して子どもたちのクリエイティビティを育むファシリテーションを見て、「自分もできるようになりたい!」と思うようになったんです。

ーファシリテーションを実際にやってみてどう感じましたか。

山内:率直に「難しい!」と感じました。学園祭以外でもCANVASと関わるようになっていて、アニメ製作のファシリテーションを子ども向けにやらせてもらったことがあったんです。

子どもを対象にしたワークショップのファシリテーションをする時は、場の雰囲気をより深く感じて、時には指示を出したり、出さなかったりとその抜き差しの加減が重要なポイントになってきます。これは教えられるものではなくて、自分がファシリテーターとしてその場に立って初めて体感できることでもあります。

正直、子どもに一方的に授業をする方がよっぽど簡単だと思いましたが、毎回面白さと達成感があるのでやめられなくなりました。そこで大学職員をやめて、小学校の先生(図工の先生)に転職することを決めました。

ーKatsuiku Academyのファシリテーション研修にはなぜ参加しようと思ったのですか?

山内:最初にこのファシリテーションスキル研修を知ったのは、Facebookの投稿を目にしたことがきっかけでした。その時、直感的に「参加したい!」と感じました。

ずっとファシリテーションスキルの理論をしっかりと学びたいという思いが常にありました。僕は現場でファシリテーターとして実践を積むことはできていたのですが、その理論を今まで勉強したことはなかったんです。今までの経験と理論を結び付けたいと思っていました。

この研修で学べる理論には、グロースマインドセット、心理的安全性、モチベーション向上、ストーリーテリング、SEL教育、エンゲージメント、学習理論などがあり、その理論を応用し、ゼロからPBL型のワークショップをデザインして実施するための手法が学べると知ってワクワクしました。

VUCAの時代に必要な未知なるものへの好奇心

ーファシリテーションスキル研修に参加してみて、大きな気づき・学びは何でしたか?

山内:正直気づきや学びが多すぎて選ぶのが難しいのですが、あえていうなら2つあります。

一つ目は、ノートの取り方です。最初の回で「ノートは綺麗さを重視することなく、思いのままに書いてください」と言われ、文字ではなく、「絵や線だけでもいいんだ!」と気付いたことが自分の中で大きかったです。

今までどこか文字で綺麗に残すことに焦点がいっていましたが、線や絵でもいいということに気付いてから自分はビジュアルで書くことが好きなのだと気付きました。それから研修が終わった後も自分の考えをまとめる時には、ビジュアルでまとめるようになり、ペンがスイスイと動くようになったんです。

このおかげで、情報のインプット、アウトプットがとてもスムーズにいくようにようになりました。文字よりも絵で残す方が、自分が今なぜこのようなことを考えているのか気軽に整理しやすくなったんです。

このノートの取り方に関しては、学校で自分の生徒にも伝えており、2020年1月頃に図工の時間に「ノートをバージョンアップしよう」というテーマで授業を実施したぐらいです。この授業では、ノートを取る際に自身の気持ちや感情を表現することに取り組みました。

多くの生徒が絵で表現することが苦手だと思っていますが、そうではなくて、その時々に感じている気持ちを表現することの方が大切なんです。その気持ちを絵で表現すると、観察力、想像力、表現力の3つを育むことになり、それがやがて創造力にも繋がっていきます。

実際に生徒たちはすごく楽しそうでした。図工の時間だけではなく、他の教科でもノートをとることが面白くなったようでした。ノートテイキングに集中すると、理解力が高まったり、図解する力が身についたりするようで、プラスの効果が出ています。

二つ目は、グロースマインドセットの考え方です。

僕は常々ワクワクする気持ちには2種類あると思っています。1つは、予測できることへのワクワクです。「あのケーキ屋さんに行ったらおいしいケーキが食べられる」、「あの美容院に行けば素敵なヘアスタイルにしてもらえる」などですね。

もう1つは未知との出会いへのワクワクです。今はVUCAの時代だからこそ、予測できることに対してのみワクワクするのではなく、未知のものに対してもワクワクすることがとても大切になってくると思います。

これからどんな未来がやってくるのか誰にも分かりません。それに対して「何がやれるか今はまだ分からないけど考えてみよう!」という発想をもち、一から新しいものを生み出していくことに対してワクワクし、それを乗り越えていける子どもたちを育てていきたいなと思っています。

それはまさに、「能力は努力や方法によって変えられる」と考えるグロースマインドセットを育むことです。「今はできないけれども努力を重ねたり、工夫することで自分もいつかは出来る」と自分を信じられるように子どもたちをサポートしていきたいと思っています。

自分がまずは楽しんで創造、挑戦する

山内さんにとって理想的なファシリテーターはどんな人ですか?

山内:そもそも僕は、ジェネレーターになりたいと思っているんです。

ジェネレーターとは、慶應義塾大学総合政策学部教授・井庭崇さんと、探研移動小学校主宰・市川力さんによって作られた言葉で、「自ら面白がりながら創造・探究を進め、周囲も巻き込んで刺激・誘発しながら、みんなで成し遂げてしまう人」のことを指します。

僕はファシリテーションをせず、自分がまず楽しんで遊ぶ。そんな様子を子どもたちに見せて刺激していきたいと思っています。

しかしこれだけでは授業は成り立ちません。大切なことを教えることも時として大切です。

ファシリテーションは、何か枠が決まっていて、何かしらの気付きを得てもらいたかったり、ゴールを達成したいときには非常に有効な手法だと思っています。場面に応じて、ファシリテーターになったり、ジェネレーターになったりと使い分けていきたいと思っています。

僕が目指すゴールは子どもたちの「変容」です。グロースマインドセットをもって、不確実な社会に対しても臆せず飛び込み、人生を楽しんでいける子どもたちを増やしていきたいと思っています。

そのためにもまず自分がグロースマインドセットをもって、挑戦し続け、楽しんでいる姿を見せていきたいです。

年齢で区切らないクリエイティビティを育む場づくりへの挑戦

ー今挑戦していること、またこれからどんなことに挑戦していきたいですか?

山内:今僕は、新渡戸文化学園にプロジェクトデザイナーとして勤務しているのですが、新渡戸文化学園の中にVIVISTOP NITOBEという子どもたちが自由に遊んで学べる場づくりを行っています。

今後はスペースを広げて、小学生、中学生、高校生が入り混じって物づくりができる場を生み出したいと思っています。小学生が高校の授業に参加できたり、気軽にアクセスできるような場を作りたいんです。

美大生やアーティストも呼んできて、本気で製作活動をしている様子を小学生、中学生、高校生が体感できたりするといいなと思っています。

僕は年齢で区切るのではなく、自分の好きなことや追求したいことを思いっきりやれる場がすごく大切だと思っています。特にアートの分野に関しては、かなり個人差があり、実年齢はあまり関係ありません。

異年齢が交じり合うことで、いい影響を与えあい、学び合い、高め合うことができる。そんな場づくりにファシリテーションスキル研修で学んだことを活かして挑戦していきたいと思います。

ーKAのファシリテーター研修プログラムのおススメポイント何ですか?他とは何が違ったでしょうか?

山内:自分が「ファシリテーター」として参加するという感覚が常にありました。他の研修だとついつい受講者になりがちなのですが、Katsuiku Academyさんのファシリテーションスキル研修では、誰もが主体的に参加せざるを得ない状況になります。

ファシリテーターの町田さんが「ファシリテーターとしてさっきの空気をどう感じていた?」など常に問いかけてくれるのですが、その都度自分がファシリテーターとして場にコミットできていたかどうか振り返ることができました。気持ちの面で大きく揺さぶられた感覚があります。

本気でファシリテーションスキルを学びたい人は、絶対に参加すべきだと思います!!

まとめ

山内先生は、このファシリテーションスキル研修で学ばれたことを1つ1つ自分事にして、現場で即実践をされている先生でした。また、VIVISTOPNITOBEの運営を通して新しいこと、まだやったことのないことに果敢に挑戦されておられます。

グロースマインドセットを地で行く山内先生からは、まずは大人が未知なものに対して恐れずに飛び込むこと、そして思いっきり楽しむ姿を見せることが大切だと教えてくださいました。山内先生、ありがとうございました。