学校や企業でも大きなプロジェクトに取り組む際には一人で挑戦するよりもチームで行動することが多いのではないでしょうか。一人で行うよりも多様な視点を活用し、どんな課題が降ってきても結果を出し続けるような効果的なチームとはどのような要素を持っているのでしょうか。今回の記事ではチームワークや効果的なチームが持っている心理的安全性などの重要な要素を研究を紐解きながら紹介していきます。

チームとは?

チームとはそもそも何なのか?

組織行動学では、チームとグループで定義が異なります。グループの定義は仲間や集団等、共通の性質や同系列に属する人や物を表すために活用されます。チームとはただ単に集まっているだけではなく、ある目的を達成するために協力して行動を一緒にしている集団を指しています。

早く行きたければ、ひとりで行け。
遠くまで行きたければ、みんなで行け。

「If you want to go fast, go alone. If you want to go far, go together. 」

アフリカのことわざですが、チームの必要性について語っているように感じられます。

長期的な大きな目標を実現するにはたくさんの事を同時に進めていく必要があります。一人でより早く結果を出すことは可能な場面もあるかもしれませんが、より長期的な大きな目標を達成するには作業を分担し、様々な人たちの視点を取り入れ、人を巻き込みながら取り組みを進めることが必要になってきます。

共有している目的を達成するために集まっている集団だからこそ、降りかかってくる様々な課題にも共に立ち向かって進んでいく事がチームでは可能となります。

効果的なチームとは?

同じ目的で集まっている人たちの集団であっても必ずしもチームが効果的に活動しているとは言い切れません。

チーム内でのメンバー同士の対人関係において問題が生じたり、目標を達成するために必要なスキルが足りていなかったり、そもそもの目標が明確になっていなかったり、またはチーム内で目標が共有されていなかったりと機能していないチームは世の中にたくさんいます。

皆さんもそのようなチームを見たり、またはそのようなチームに所属した経験があるのではないでしょうか。

企業でも学校でも重要視されているチームでの活動ですが、効果的なチームの特徴を見つけるために様々な研究が世界中で行われています。その中でも最も有名な一つであるグーグルのチームに関する研究を紐解いていきます。

グーグルが研究:職場データから見た効果的なチームが持つ5つの要因

効果的なチームとは何なのか?どのような要素を持っているのか?

多くの人が日常的に何かしらのチームに所属しながら作業を進めています。上記の問いに答える事で、日々の作業の大部分を占めるチームでの活動をさらに効果的に進める事ができます。世界中で、この問いに対する研究が行われており、グーグルも社内で研究プロジェクトを立ち上げました。

哲学者アリストテレスが残した言葉とされている「全体は部分の総和に勝る」(the whole is greater than the sum of its parts)にちなみ、グーグルではそのプロジェクトを「Project Aristotle」と名付けました。このプロジェクトの目的は、上記の「効果的なチームを可能とする条件は何か」という問いに対する答えを見つけ出すことです。

グーグルは社内で180のチーム(115のエンジニアリング系のチーム、65の営業系のチーム)を対象とし研究を進めました。この中には業績が高いチームも低いチームも含まれており、メンバーのスキルや年齢・性別などの特性を含んだチームの構成であったり、チームの中にいるメンバー同士の関係性がチームの結果にどのような効果を与えているのかを研究しました。

グーグルでは、社内にあるデータを活用し、250項目のデータを分析し、チームの結果に影響を与えている要因について調べていきました。その中で判明したのは、チームの結果はチームメンバーが誰なのかよりもチームがどのようにして協働・協力しているのかが重要である事がわかりました。

また、チームとして協力していく中で重要な影響を与えていると思われる要因を下記の5つに絞る事ができました。

1. 心理的安全性:対人関係において不安を感じず、リスクある行動を取れるか
2. 相互信頼:お互いに信頼して仕事や作業を任せる事ができているか
3. 構造と明確さ:チームの目標やそれぞれの役割、目標実現のための計画は明瞭であるか
4. 仕事の意味:各チームメンバーが自分の仕事・役割に対して意味を感じているのか
5. インパクト:自分の仕事がチームだけではなく、組織や社会全体して対して影響力を持っていると感じられるか

 

チームに最も必要な要素の心理的安全性とは?(英語:psychological safety)

グーグルのプロジェクトでは、5つの要因が重要である事が判明しましたが、その中でも群を抜いて最も重要であるとされているのが心理的安全性です。グーグルが行った社内の研究では心理的安全性が高いチームに属しているメンバーは離職率が低く、お互いのアイデアを活用する事ができており、収益性が高いという特徴が表れていました。

また、5つの要因のうち、心理的安全性が他の4つの要因の土台になっているとも言われています。

では心理的安全性とはどのようなものなのか?

心理的安全性とは英語の”Psychological Safety”を翻訳した言葉が原点になっています。チームにおいての心理的安全性という概念についてグーグルの研究より前に提唱していたのが組織行動学を専門とするハーバード大学のエイミー ・エドモンソン教授です。

彼女が定義している心理的安全性とは、「チーム内で対人関係においてリスクのある行動をしてもこのチームでは安全であるという、メンバー同士が持っている共通・共有している考え」

“A shared belief held by members of a team that the team is safe for interpersonal risk taking.”

チームメンバーがそれぞれ不安や恐怖などを感じる事なく、安心してチーム内で発言や行動ができている状態が心理的安全性があるチームといえます。それぞれが自分らしく振る舞えるまたは、安心して何でも言い合えるチームと捉えることもできます。

例えば、会議の中で上司が見落としているミスやリスクに気づいた部下であるチームメンバーがいた場合、心理的安全性が存在するチームでは部下であってもその場で発言する事が可能です。ただ、心理的安全性が低いチームではミスやリスクに気づいたとしても上司に対する恐れなどから発言を避けてしまう行動が見受けられます。

またはチームメンバーでの話し合いでわからない点が出てきた場合、心理的安全性が高いチームでは素直にチームメンバーが分からない点を疑問として発言したり、直接質問したりする事ができます。それはプロジェクト関わってくるキーワードの理解に関する質問かもしれませんし、そもそものプロジェクトの目的に関する質問かもしれません。

一度皆さんも想像してみてください。一緒に作業をしているチームメンバーに素直に「このプロジェクトの目的って何だっけ?」と改めて聞くには相当な勇気が必要ではないでしょうか。「今までそんな基本的なことも理解せずに働いていたの?」とチームメンバーから批判されたり、あきられることもあるかもしれません。

このような対人関係においたリスクをとる事を避けて、過ごしてしまった場面は皆さんも一度は経験しているのは出ないでしょうか。

心理的安全性が存在するチームではお互いに気づいたことを発言できるため、それぞれの視点からの気づき学びの機会も増えていきます。

 

エドモンソン教授の研究から紐解く心理的安全性の測定方法

心理的安全性についてエドモンソン氏は自らの本で研究内容をまとめています。(チームが機能するとはどういうことか――「学習力」と「実行力」を高める実践アプローチ)

彼女の研究の中では心理的安全性を測る上で各メンバーに下記のような文章が自分にどれだけ当てはまるかを聞いていきます。

1. チームの中でミスをしてしまうと、非難される
2. メンバーはお互いに課題や難しい問題を指摘する事ができる
3. メンバーは自分と異なるという事を理由に他者を拒絶する事がある
4. チームに対してリスクのある行動をしても安全である
5. チームの他のメンバーに助けを求めることは難しい
6. チームメンバーは誰も、自分の仕事に対して意図的に足を引っ張るような行動をしない
7.チームメンバーと仕事をするとき、自分のスキルと才能が尊重され、活かされていると感じる。

上記の7つの質問に対して、ポジティブな回答が多ければ、その回答者はチームに対して心理的安全性を感じていることが伝わります。

ポジティブな回答が少なく、ネガティブな回答が多い場合は、その回答者はチームに対して心理的安全性を感じられていない傾向があると言えます。

チームメンバーそれぞれに上記を行い、その上でチーム全体の心理的安全性が見えてきます。心理的安全性があるチームは特定のメンバーのみが安全性を感じているのではなく、全員が感じている事が重要になります。

 

チームワークを高める:心理的安全性を高める方法

心理的安全性の重要性を理解したところで、チームワークを高めるために心理的安全性を高めるにはどのような事が可能なのか。

具体的な方法を共有する前に、心理的安全性の高いグループを作るとは決して仲良しグループを作る事ではありません。お互いが気になっていることなどを不安や恐れをなしに発言できるという事が重要であり、お互いに対する責任感や仕事や結果に対する責任感をしっかりと持ってチームとして対応しているため効果的なチームとなっています。

心理的安全性を上げるために行える3つの行動をエイミー ・エドモンソン氏がTED TALKで紹介しています。

  1. 仕事・課題を実行の機会ではなく学習の機会として捉える:

仕事や課題において不確実性が高く尚且つ様々な要素が絡みなっている事を認めて、何が起こるか分からないからこそ全員の力や視点が必要である事を強調する。その上で、作業をやりこなすタスクとして捉えるのではなく、学習の機会として捉える事が重要となる。

  1. 自分が間違いを起こすこともあると認める:

自分が足りていない部分がある事を素直に認めて、周りにもそれを公言する事で周りからも発言を促す事ができます。会議中に話している際に「私が見落としてしまっている部分もあるかもしれないので、気づいたら教えてください。」などとチームメンバーに伝えるなどの小さな行動でも心理的安全性を作る事が可能です。

  1. 好奇心を体現し、積極的に質問する:

好奇心を持って、自分が分からないことや気になっている事に関して積極的に質問する事で周り方の発言を引き出す事ができます。また素直にお互いに気になっている部分を聞くという土台も作る事が可能です。

エドモンソン氏も話していますが、心理的安全性に関してはまだまだ分からない点が多く、今後も研究が必要とされている分野です。今後もさらなる進展によって今までの研究とは大きく異なる点も出てくる可能性がありますが、上記の理論をベースに実践しながらぜひ皆さんも心理的安全性をチームにもたらす言動を試してみてください。