ゴールデンウィークが明けると、「明日から仕事か…」「もう学校が始まってしまう…」といった沈んだ気分になってしまい、気が乗らなかったり仕事や勉強に手がつかない、といった経験はありませんか?

いわゆる「五月病」と呼ばれる状態ですが、なぜゴールデンウィークが明けた頃に五月病になってしまうのでしょうか?

その要因を一つに限定するのは難しいですが、大きな要因の1つとして、目まぐるしい環境の変化が挙げられます。

特に4月は新生活による生活環境の変化が激しい一方で、5月頭にはすぐに大型連休に突入するため、生活リズムの変化が大きく揺れ動く時期とも言えます。

このような目まぐるしい生活の変化が影響して、五月病を引き起こしていると考えられます。

今回は、この五月病による環境の変化を引き合いに、環境の変化が私たちに与える影響についてご紹介していきます。

もくじ
1: 社会心理学におけるストレスの定義
2: ライフイベントや日常の出来事をどう捉えるか?
3: 自分自身が選択(コントロール)している感覚がストレスを減らす
4: 環境から受けるストレスへの対処方法
5: まとめ

1. 社会心理学におけるストレスの定義

社会心理学において、ストレスは「自身を脅かす出来事に対する生理的な反応」と当初は定義されていました。

例えば、親から怒られることで気持ちが沈んだり自分の部屋で塞ぎ込むような場面や、苦手なジェットコースターに乗せられそうになって抵抗している場面などが、この定義の意味する場面になります。

他にも、住み慣れた生活環境から新しい部屋へ引っ越した時は、慣れ親しんだ空間から新しい空間に移ることによって不慣れな感じを受けることがストレスになると捉えられます。

この定義が紹介された後、1967年に精神科医のトーマス・ホルメスとリチャード・ラーはネガティブな出来事だけでなく、ポジティブな出来事に対してもストレスを感じる要因となると説明しています。

これは、予期せぬ嬉しいサプライズや久しぶりの友人との再会などは嬉しい出来事であると同時に、予定していたことが出来なくなってしまうことによってストレスを感じる可能性も含んでいると考えられるからです。

これらのストレスの説明をまとめると、ストレスはポジティブ・ネガティブなイベントが起きて、それらが自分では対処できない時に感じるものと言えます。

冒頭の五月病をこの観点から見てみると、4月は新しい環境への変化に伴いワクワクや楽しさを感じる一方で、不慣れな環境や仕事によってネガティブな感情も感じる時期でもあります。

このように、あらゆる出来事が起こりそれらに対処できなくなることで大きなストレスを感じてしまい、その結果、心理的な不調によって五月病に陥ると考えられます。

2. ライフイベントや日常の出来事をどう捉えるか?

社会心理学の観点からみたストレスのポイントは、「起きた出来事をどう捉えるか」です。これは、起きた出来事をどう捉えるかはその人次第と言えるからです。

例えば、雨が降った時に気分が乗らない人もいれば、雨が好きだと思う人もいるでしょう。他にも、日々のミニテストに対して「毎日のように勉強しなければいけなくてめんどくさい」と思う人もいれば、「毎回勉強したことを確認できるいい機会だ」と捉える人もいるでしょう。

上記二つの例の前者のような捉え方をするとストレスを感じやすくなりますが、後者のような捉え方をすればストレスをあまり感じずに済みます。

このように、いかにストレスを感じにくい捉え方をするかが大事になってきます。言いかえると、自分に起きたことが自分で対処できると思えるような捉え方をすることが重要になってきます。

3.自分自身が選択(コントロール)している感覚がストレスを減らす

自分がコントロールしている感覚は、教育心理学ではLocus of Control(ローカス・オブ・コントロール; 統制の所在)として説明されています。

ローカス・オブ・コントロールは、「起きた出来事は自分の手に負えない」と考えるか、「起きたことは自分でコントロールできる」と考えるか、どちらの傾向が強いかを説明している理論です。

日常場面に置き換えると、10ページの論文を読む課題が出た時に、「10ページも読めない」と考えるか、「1日2ページずつ読んでいけば読み終えることはできる」と考えるかが挙げられます。

前者は起きたこと(10ページの論文の課題)が手に負えないと捉える状況で、後者は工夫することで起きたことは自分の手で対処することが出来ると考えている状況です。

このように、自分で工夫して対処する方法が分かれば、必要以上にストレスを受けることを避けることができます。

自分はできると考える自己効力感についてもっと知りたい方はこちらの記事をご覧ください。

4. 環境から受けるストレスへの対処方法

ここまで、自分に起きたことの捉え方を変えることが、ストレスの対処法になることをご紹介してきました。

しかし、頭で考えるだけでは忘れてしまうこともありますし、自分がコントロールできるような考え方に気づけていないことも少なくありません。

そこで、もう少し具体的な方法で自分の捉え方に気づいてコントロールする方法をご紹介します。

リフレーミング

1つ目の方法は、リフレーミングと呼ばれる方法です。リフレーミングは、今認識していることを別の角度から捉え直す方法で、スポーツ心理学、教育心理学、臨床心理学などで広く活用されている方法です。

この方法を使えば、自分の短所と思える要素を長所と捉えることもできますし、難しそうなこともある程度できるように感じる難易度に捉え直すこともできます。

リフレーミングをする上で大事なポイントは、まずは一度感じるままに認識することからスタートする点です。その理由として、自分に都合が悪いと感じて都合よく解釈してしまうこととリフレーミングは、異なるからです。

苦手なことであれば、まずは苦手なこととして認識するのが重要です。その上で苦手に感じるものをどのような角度から捉え直せば少し出来そうな感じになるかを考えてみます。

例えば、数学の公式を覚えるのが苦手だと感じたら、まずは苦手なものとして受け入れます。その上で、「どうすれば覚えやすく出来そうか?」「まず覚えられそうな部分はないか?」「別の公式を覚えた時にはどんな方法を使ったか?」など色んな角度から考え直してみます。

色々と工夫を凝らした末に「公式全部覚えるのは難しそうだけど、公式に一部分をまずは覚えることなら出来そうだ」といった具合に、出来そうな部分を見出して取り組めるようにしていきます。

リフレーミングの進め方をまとめると次のような手順になります。

  1. まずは、起きた出来事をあるがままに認識する
  2. 認識した出来事を色んな角度がら捉え直してみる(細分化する、反対の意味を考える、過去の成功例を参考にする、など)
  3. 捉え直す際には、自分がコントロールできる、対処できると思える規模や内容にすることを意識する

ジャーナル

ジャーナルはいわゆる日記ですが、今回の場合は自分の捉え方を書面に書き出して可視化することを目的として行います。

自分が苦手だと思うことや得意だと思うことをいったんノートに書き出してみます。自分の頭の中で考えていたことも、一度文字にして見える形にすることで再認識したり気づきが得やすくなります。

自分の捉え方に気づくことが目的であれば、思うがままに書き出してみるといいでしょう。もし、自分が苦手にしていることに既に気づいていてその捉え方を変えたい場合は、先にご紹介したリフレーミングの手順に沿ってノートに書き出してみましょう。

ただ頭で考えるよりも、明確に自分の捉え方や捉え方の変化を認識しやすいので、リフレーミングをしやすくなります。

冒頭の五月病の状況の場合、まず一度自分の生活で起きたことを書き出して整理してみるといいでしょう。その後、書き出した出来事を1つ1つ見直していき、それぞれ自分が対処できる(コントロールできる)形に捉え直していくことで、ストレスを軽減することが可能となります。

振り返りに関する記事はこちらからお読みいただけます。

5. まとめ

今回は、五月病を引き合いに、環境の変化が私たちに与える影響について社会心理学の観点から考えていきました。

社会心理学では、ストレスは自分の身に起きたことが自分では対処できない(コントロールできない)と思った時に受けるものとされています。

この性質から、ストレスを軽減するには起きた出来事を自分がコントロールできると認識できるように変えていくことが効果的と言えます。

その具体的な方法として、別の角度から捉え直すリフレーミングと、自分が認識していることを可視化するジャーナルをご紹介しました。

今回ご紹介した内容やメカニズムは、あくまで1つの学問領域からの捉え方です。別の学術分野では異なる捉え方をすることもありますので、今回ご紹介した内容が唯一の正解でもなければこの方法でなければいけない、といったものでもありません。

数ある1つの理論やメカニズムとして参考にしていただき、もし納得のいく内容であれば活用してみてください。

参考文献

Aronson, E., Wilson, T. D., & Akert, R. M. (2015). Social psychology: The heart and the mind. Pearson.

Crum, A. J., Jamieson, J. P., & Akinola, M. (2020). Optimizing stress: An integrated intervention for regulating stress responses. Emotion, 20(1), 120.

Williams, J. M. E. (2016). Applied sport psychology: Personal growth to peak performance. McGrew Hill Education.