一生懸命に練習してきたのに、試合や本番になると力が上手く発揮できない。

そんな経験をしたことがある方も多いのではないでしょうか?

その反面、様々なスポーツで解説者が

「大事な場面で冷静に試合を決めてくれる選手」

「あの選手はメンタルが強い」

などと説明しているのを聞いたことが皆さんも一度はあるのではないでしょうか。

ではスポーツ選手としてメンタルが強いとはどういうことなのか?

緊張するような大事な場面でもパフォーマンスを発揮している人と発揮できていない人の違いはどこにあるのでしょうか?

今回の記事では近年特に注目を受けているスポーツ心理学に関してご紹介します。アスリートではなくても、皆さんの日常生活でも活用できるヒントも合わせて紹介していますので、ぜひ一読ください。

もくじ
1. スポーツ心理学の目的
2. スポーツ心理学の領域・概要
3. アスリートに限らずパフォーマンスを高める
4. 人間が鍛えられる要素は3つだけ?
5. メンタルトレーニングに取り組むアスリート・チーム事例
6. まとめ

1. スポーツ心理学の目的

国立スポーツ科学センターのウェブサイトでは、スポーツ心理学の定義として下記が掲載されています。

「スポーツ心理学とは、スポーツに関わる課題を心理学的側面から明らかにして、スポーツの実践や指導に科学的知識を提供する学問」

もっと簡単に言えば、スポーツに関わっている人がどのような考えを持って、どのような行動をして、どのように感じているのかを分析しています。

その分析や研究によって明かされた情報が何に活用されるかというと、一番わかりやすい目的は「スポーツに関わっている人が最大のパフォーマンスを発揮すること」です。

2. スポーツ心理学の領域・概要

スポーツ心理学という分野は幅広い領域と内容を包括しています。

日本スポーツ心理学会の『スポーツ心理学辞典』ではスポーツ心理学の領域と内容を下記にまとめています。

 

分野 各分野の概要

スポーツ運動の発達

生涯の身体・運動発達やスポーツ経験の心理的発達への影響の検討。

スポーツの運動学習

「運動制御」や「運動学習」の二つの側面からの運動スキル獲得の検討。

スポーツの動機付け(モチベーション)

スポーツへの参加・継続に関わる動機付け(モチベーション)や動機付けに関わる心理社会的要因の検討。

スポーツの社会心理

スポーツ集団の中での個人としての行動やグループとしての特性や行動が個人に与える影響の検討。

競技の実践心理

競技スポーツの心理的特質、実力発揮に関わる心理要因、コーチングに関わる心理要因の検討。

スポーツメンタルトレーニング

リラクゼーションやイメージなどのメンタルトレーニングの心理、身体、パフォーマンスへの影響の検討。

健康スポーツ心理

身体活動・運動のQuality of Lifeやメンタルヘルスへの効果、身体活動、運動への参加・継続に関わる心理社会的要因の検討。

スポーツ臨床

スポーツに関わる悩み・課題解決だけではなく、人格的成長を目指すための心理支援方法の検討。

3. アスリートに限らずパフォーマンスを高める

上記のスポーツ心理学の目的と領域や概要を読んで、「スポーツに関わっていない私は関係ない」と思う方もいらっしゃるかも知れません。

ただ、スポーツ選手に求められる大事な場面でも冷静に落ち着いてパフォーマンスを出すことやチームのモチベーションを引き上げる等のメンタルスキルはスポーツに限られたことではありません。

スポーツ選手がメンタルスキルを鍛えるのは、試合などのプレッシャーが大きな場面でも練習してきた自分の力やチームの力を最大限に発揮するためです。

上記の中でも書かれているように「参加・継続に関わる動機付け(モチベーション)」や「集団における個人の行動がどのように集団を影響しているのかの検討」、「イメージなどのメンタルトレーニングの心理、身体、パフォーマンスへの影響」はスポーツ選手ではない私たちも応用できるものが溢れています。

モチベーションに関してもっと深く知りたい方は下記の記事をご覧ください。

例えば、チームで進めてきたプロジェクトで大切なプレゼンテーションがある場面で、どのようにすれば練習してきたプレゼンテーションを当日行えるのか考えることもあるかと思います。

そこへ導くまでチームのモチベーションをどのように維持するのか、チームの中で自分の役割を考えて行動すること、当日のプレゼンに向けて練習を重ねパフォーマンスを出すことに向けて皆さんもたくさんの試行錯誤を重ねてきたと思います。

私たちもそれぞれプレッシャーがかかる場面でパフォーマンスを求められることが多々あると思いますが、トップのプロスポーツ選手はそれが日常的に求められます。

何万人の観客の前や、テレビやネット配信などの映像を含めると何千万人の前で高いパフォーマンスが求められます。

また、スポーツの種類にもよりますが、陸上などは0.01秒の世界で結果が決まるような厳しい世界です。

そのような大きなプレッシャーの中でも自分のベストパフォーマンスをどのように出すのか、そのハイパフォーマンスを出すために行っている工夫はスポーツ以外の場面でも応用できます。

4. 人間が鍛えられる要素は3つだけ?

オリンピック選手やアメフトのスーパーボウル優勝チーム、またはスポーツ以外でも世界中の有名企業のメンタルコーチを務めているスポーツ心理学の世界でトップ5人に入ると言われている米国のマイケル・ジャーヴェイス博士(Michael Gervais)氏は人が鍛えられるのは3つのみだと話しています。

1、自分の技能(craft)

2、自分の体(body)

3、自分の心(mind)

多くの方が仕事などを通して自分の技能を磨いています。

それは技術的な部分でエンジニアであれば新しいコードの言語を身につけることかも知れませんし、教員であれば新しい教え方を磨くことかも知れません。

中には自分の体をトレーニングするためにジムに通ったり、ジョギングしたり、体を維持するための努力を継続している人もいると多います。

ただ、多くの人が自分の心を鍛えることに時間をかけることを行っていません。

これは今までのスポーツ界の歴史を見ても同様です。

スポーツを行うために主にそのスポーツに関する技術を選手たちが磨いていた時代から、栄養学などの進歩にも影響され体を鍛えるためのトレーニングが加わってきました。

近年では脳科学や医学の進展も影響しており、心のあり方等のメンタルトレーニングが脳や体にどのような影響を与えるのかが明らかになっており、心を鍛えるということが注目を受けやすくなってきました。

また、すでに多くの選手達がこの技術や体の2つを最大限に鍛えているため、さらなる差別化をするためには心を鍛えて、メンタルスキルを高める方法が重要視されています。

ジャーヴェイス博士もトップアスリートの中でも一握りの世界トップアスリートが共通して持っている要素としてメンタルスキルを挙げています。

具体的には、彼らは同僚の選手たちよりも自分の考え、感情、感覚を敏感に捉えており、自分の人生のミッションとそれらが一致していない場合にしなやかに修正を行っていると話しています。

自分のことをより深く理解する自己理解に関しては下記の記事をご覧ください:

「メンタルが強い」という言葉を聞くとあたかも生まれつきに備え持っているものと勘違いしてしまう方も多いかも知れません。

ただ、メンタルスキルと「スキル」として括っているのは、それらが鍛錬を重ねれば習得可能だからです。

上記の領域や概要でも見て取れるようにメンタルスキルも様々なスキルが存在します。

今回ご紹介するメンタルスキル・トレーニングは自分のことを内省するためにも活用できるマインドフルネスです。

マインドフルネスの詳しい研究や効果、実践方法に関する情報を知りたい方は下記の記事をご覧ください。

5. メンタルトレーニングに取り組むアスリート・チーム事例

スポーツ界でメンタルスキルとして近年注目を受けているのがマインドフルネスです。

様々な研究によって集中力の向上やパフォーマンスの向上が発表されており、スポーツ界でもそれらを取り入れて結果を出しているチームがたくさん存在しています。

バスケの世界トップリーグである米国のNBAではフィル・ジャクソンコーチが率いたマイケル・ジョーダンも所属していたシカゴブルズやコービー・ブライアントが所属していたロスアンジェルスレイカーズもマインドフルネスを取り入れていました。また現在でも現役選手としてトップのレブロンジェームスもマインドフルネスを取り入れており、2012年のプレーオフの試合中、タイムアウトの中で集中を高めるためにマインドフルネスを行っている場面が見受けられました。

また個人スポーツでもテニスで世界トップ選手として活躍しているジョコビッチ選手も毎日15分のマインドフルネスを行っていると宣言しています。

気になる方はぜひマインドフルネスの練習を行ってみてはいかがでしょうか。

6. まとめ

今回の記事ではスポーツ心理学のご紹介を行いました。スポーツ心理学はアスリートが最高のパフォーマンスを出すことを一つの大きな目的としている分野です。

ただ、そこで明らかになっている情報はスポーツに関わる人に限ったことではなく、大きな目標を達成したい人や、プレッシャーが多い中でも結果を出し続けたい人の全てが応用できるヒントが散らばっています。

自分のことを深く理解すること、自分の状態や内面を意識して敏感に捉えること、そしてその上で目指している方向へと導くことはメンタルスキルであり、スキルである以上鍛錬を重ねれば鍛えることが可能です。

どのような形で鍛錬をすればいいのか気になる方は下記の記事をご覧ください。

すでに技術・体を鍛えているという方は心を鍛える方法も試してみてはいかがでしょうか。