「Society 5.0」という言葉をご存知でしょうか?
これは、2016年に日本政府が目指すべき社会の姿として提唱したものです。
Society 5.0の時代においては、IoT技術の進展や、自動運転技術の開発などが進み、より効率的に社会問題の解決が図られるようになります。
そのような時代の変化に伴って、子どもたちや人々に求められる力も変わっていくでしょう。
その中で、現在の教育のあり方や目指す方向性もまた、変化していくと考えられます。
今回の記事では、Society 5.0の時代ではどのような力が求められるようになるのか、その影響下で日本の教育のあり方がどのように変わっていくのか、内閣府や文科省の資料をもとに考察していきます。
目次
1:Society 5.0とは?
2:Society 5.0で求められる力とは?
3: 大学受験で求められる力はどのように変わる?
4: Society 5.0の時代における、教育の変化の展望
1:Society 5.0とは?
そもそもSociety5.0とはどのような概念でしょうか?
Society 5.0とは、2016年に閣議決定された、「第5期科学技術基本計画」において、日本政府が目指すべき社会の姿として提唱したもので、
狩猟社会(Society 1.0)、農耕社会(Society 2.0)、工業社会(Society 3.0)、情報社会(Society 4.0)の次にくる社会のあり方として定義されています。
内閣府のHPでは、
「サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会」
と定義されています。
つまりSociety 5.0とは、進化するIoTや人工知能の技術を用いて社会課題を解決し、経済発展を志向する、情報社会のその先の社会を指した概念です。
▼参考 Society1.0 ~ 5.0の定義
Society 1.0 | 狩猟社会 |
Society 2.0 | 農耕社会 |
Society 3.0 | 工業社会 |
Society 4.0 | 情報社会 |
Society 5.0 | 超スマートな社会 |
Society 5.0で求められる力とは?
技術がより高度化していくSociety 5.0の時代において、どのような力が求められるようになるのでしょうか?
文部科学省が2018年11月に出している資料をみてみましょう。
Society 5.0で共通して求められる力
まず共通して求められる力として、
・文章や情報を正確に読み解き対話する力
・科学的に思考・吟味し活用する力
・価値を見つけ生み出す感性と力、好奇心・探求力
の3つがあげられています。
特に3点目について、技術が高度化していく時代だからこそ、人間にしかできないような、溢れる情報の中に「価値を見出す」ことの重要性が増していきます。
そして、その上で重要なのが、やはり感性や好奇心といった、創造的な部分の力でしょう。
好奇心に関しては、Katsuiku Academyでも過去に詳細を記したブログがあるので、ご興味ある方はぜひご一読ください。
Society 5.0で新たな社会を牽引する人材
次に、新たな社会を牽引する人材として、
・技術革新や価値創造の源となる飛躍知を発見・創造する人材
・技術革新と社会課題をつなげ、プラットフォームを創造する人材
・様々な分野においてAIやデータの力を最大限活用し展開できる人材
の3点があげられています。
AIやデータ、技術革新に感度高く反応し、それを実社会に転用していく力が全体的に求められていることがわかります。
1点目の、飛躍知を発見・創造する人材に関しては、もちろん土台となる知識を獲得するのは前提ですが、創造的なアイデアを生み出す力も大事になってくるでしょう。
創造的なアイデアの出し方に関しても、Katsuiku Academyのブログでも過去に詳細を記したブログ記事があるので、ご興味ある方はぜひご一読ください。
大学受験で求められる力はどのように変わる?
変化の激しい時代の中で、求められる力は徐々に変わっていくでしょう。
これは社会人にはもちろんですが、学生にもダイレクトに影響していくのではないでしょうか?
では国内の大学は、今どのような人材に興味を示しているのでしょうか?
今回は、一般入試に加え、AO・推薦入試も導入している東京大学と慶應義塾大学を一例としてご紹介します。
東京大学の推薦入試が求める人材とは?
国公立大学である東京大学ですが、2016年度からは、推薦入試も実施しています。
東京大学のホームページでアドミッション・ポリシー(自学の特色や教育理念を反映したうえで、入学者の受け入れ方針をまとめたもの)を確認してみると、
・自ら主体的に学び,各分野で創造的役割を果たす人間へと成長していこうとする意志を持った学生
・自らの興味・関心を生かして幅広く学び,その過程で見出されるに違いない諸問題を関連づける広い視野,あるいは自らの問題意識を掘り下げて追究するための深い洞察力を真剣に獲得しようとする人
を求める、歓迎する、といった記述が見受けられます。
主体性や創造性に加え、ますます複雑化していく世界の諸問題に関連を見出す広い視野や、その姿勢を重視していることがわかります。
慶応義塾大学(SFC)の推薦入試が求める人材とは?
国内でいち早くAO入試を本格的に採用した、慶應義塾大学の湘南藤沢キャンパス(SFC)。
そんなSFCには、総合政策学部と、環境情報学部の2つが存在します。
それぞれの学部のアドミッション・ポリシーを確認してみると、以下のような人材を求めていることが書かれています。
○総合政策学部
・総合政策学部は「実践知」を理念とし、「問題発見・解決」に拘る学生を求めます。
・入学試験の重要な判定基準は、自主的な思考力、発想力、構想力、実行力の有無です。
「SFCでこんな事に取り組み学びたい」という問題意識に基づいて、自らの手で未来を拓く力を磨く意欲ある学生を求めます。
○環境情報学部
・ひとつの学問分野にとらわれることなく幅広い視野を持ち、地球的規模で問題発見・解決できる創造者でありリーダーを目指そうとする学生を歓迎します。
・環境情報学部の理念や研究内容をよく理解した上で、「SFCでこんなことをやってみたい」という問題意識を持って入学してくれることを願っています。
こちらもまた、主体性を非常に重んじていることがわかります。
自らの好奇心に耳を傾け、しかし興味分野のみに囚われることなく、幅広い視野を持って問題を発見、追究、解決していく。
そのような、自分の未来を自分で切り拓くことのできる人材が求められているようです。
4:Society 5.0の時代における、教育の変化の展望
さて、ここまで社会がどのように変化し、どのような力が求められるようになるのかについて考察してきました。
最後に本節では、Society 5.0に対応していく人材を育てるにあたって、教育がどのように変化していくのか、文部科学省の発表をもとに考察していきます。
先ほども参照しましたが、文部科学省が2018年11月に出している資料をみてみましょう。
文部科学省として取り組むべき政策として、以下の3点をあげています。
Ⅰ.「公正に個別最適化された学び」を実現する多様な学習の機会と場の提供
Ⅱ.基礎的読解力、数学的思考力などの基盤的な学力や情報活用能力をすべての児童生徒が習得
Ⅲ.文理分断からの脱却
1点目の個別最適化された学びというのは、様々な文脈において価値を見出す人材に必要な、感性や好奇心、探究心を磨くことと深く関わる取り組みとなりそうです。
2点目について大きな論点となるのは、いかに情報活用能力を高めるかという点でしょう。
3点目も、特定の分野に囚われることなく、幅広い視点から問題を発見し、解決する人材を育成するに当たって、非常に重要な取り組みと思われます。
視野を広げるのに取り組めることについても、以前のブログで読むことができます。
現状で導入している大学は、東京大学を始めいくらかは見受けられますが、まだまだ少ない印象です。
これから日本においてもリベラル・アーツ教育が一般的になっていくことが期待されます。
みなさまも、今回紹介した事例を参考にしつつ、高校や大学選びを進められてはいかがでしょうか?
Katsuiku Academyでは、今後も教育に関する最先端の情報をアップしていきますので、ぜひニュースレター登録もよろしくお願いします。
◆参考ソース
▼6.Society5.0に向けた人材育成 について – 文部科学省
▼Society 5.0 – 科学技術政策 – 内閣府
https://www8.cao.go.jp/cstp/society5_0/
▼東京大学アドミッション・ポリシー | 東京大学
https://www.u-tokyo.ac.jp/ja/admissions/undergraduate/e01_01_17.html
▼3つの方針 | 慶應義塾大学 湘南藤沢キャンパス(SFC)
https://www.sfc.keio.ac.jp/pmei/policy.html
▼Society 5.0とは|経団連|KeidanrenSDGs – 経団連SDGs
Next Education Awardという教育者を表彰するアワードを設立しました。
第一回目となるアワードに関する詳細を知りたい方は下記をご覧ください。