志賀アリカ
国際基督教大学卒、NPO・教育・戦略コンサルティングファームでの経験を経て、2021年に長野県小布施町の図書館長に最年少で就任。
好奇心・想像力・創造力こそが、互いを繋げ、社会をほんの少し過ごしやすくしていくのだと信じ、全ての活動を展開している。現在は図書館長として、本と人・町と人・人と人との物語の交差点となるような場づくりのために奮闘中。過去Katsuiku Academyではファシリテーターを務める。

Katsuikuファシリテーターインタビュー①~志賀アリカさん~

今回はKatsuiku Academyの過去のキャンプ事業でファシリテーターとしても活躍してくださっていた志賀アリカさんにインタビューを実施しました。学生の時から様々なことに関心を寄せて挑戦されてきたことが、どのように今に繋がっているのかお話を伺いました。

「自分にもできることがある!」子どもがそう感じられる社会に

ー学生時代から様々な事に挑戦されていたようですが、何かきっかけがあったのでしょうか。

志賀:母が以前通訳だったこともあり、小さい時から日本と海外を行き来することが多く、幼いながらに生まれた国や環境による差異・格差を肌で感じ取っていました。

中学生になった頃、何か社会に役立つ活動がしたくて青少年赤十字の支部を学校内で立ち上げることを決めました。青少年赤十字は日本では1万4千校を超える加盟校と340万人以上のメンバーがいる組織で、実践内容は学校の自由裁量なんです。

私がこの活動を始めたとき、ちょうどまだ新潟県中越地震(2004年)の復興が進んでいたころでもあり、募金活動や災害時の復興活動(東京で本部に集められている毛布を梱包する作業など)を行っていました。

多くを学ばせていただきましたが、子どもが参画できることには限界があり、次第に子どもが主体的に企画や実行をしていける場が欲しいと思うようになっていました。

子どもの主体性の大切さに気付いてからはどのようなことに取り組まれたのでしょうか

志賀:高校時代に「フリー・ザ・チルドレン・ジャパン(FTCJ)」に出会い、活動を始めました。フリーザチルドレンは、1995年当時12歳だったカナダ人の男の子がパキスタンでの児童労働問題との出会いをきっかけに立ち上げた団体です。

「子どもだからこそできることがある」をモットーに、18歳以下の子どもが主体となって活動している点がユニークで、募金や署名活動だけではなく、児童労働や貧困、教育格差などの課題に興味を持ってもらえるような啓発イベントを企画したり、バレンタインでフェアトレードのチョコを売るプロジェクトなどを推進していました。

この団体の素晴らしいところは、とにかく大人が子ども達の意見に耳を傾け、尊重してくれることです。この頃の体験は「自分の考えには価値がある」という私の根本的な価値観を育んでくれました。

積極的に活動していたのですが、ある時から、良い活動なのになぜか拡がらない、という壁に突き当たり「自分事になる・ならないの違い」について考えるようになりました。

そこで気がついたのは、自分がこうして活動出来ているのは運よく原体験を持てたということです。元来私は行動的だったわけではなく、むしろ面倒くさがりの怠け者でした。

しかし幼い頃から海外に行き来する経験や、家庭環境に恵まれていたおかげで、いつの間にか社会問題を自分事として捉え行動できる小さな活動家のようになっていました。

ただ原体験の有無は、自分事として捉え行動していくためにはとても重要な要素ですが、それだけが全てではありません。
心を揺さぶるような体験は日常に転がっているわけではありませんし、体験しようと思っても中々できるものではありません。

インパクトの大きい体験に頼るよりも、心の機微さえあれば、日常からいくらでも世の中で起きている不思議な事や違和感を感じ取ることはできるはずです。社会をより良くしていくには、一人一人の心の感度や問いの芽を育むことが何よりも大切だと思ったのです。

ここから、「問う力や好奇心を育むにはどうしたらいいのか」を強く考えるようになりました。

好奇心に関して気になる方はこちらのブログもご覧ください

外と内に問いを持つことの大切さ~現場での体験を通して~

問いを持つ力を育んでもらうためにどのようなことに取り組まれたのでしょうか?

志賀:大学生になったタイミングで「7DAYS Program (現在は活動停止中)」というプロジェクトを仲間とともに立ち上げました。

周囲や常識に惑わされず、自分の心に率直になり、「なぜここに私はいるのか」を問い続けて欲しいとはじまった、新大学1年生向けの7日間のキャンプです。

参加学生は既に社会課題に関心のある層なのですが、このプログラムでは思考よりも、とにかく感じてもらうことを大切にしていました。

例えば、山谷地区でのフィールドワークなどが組み込まれており、全く何も起こらず帰ってくる人や、町の方と缶蹴りをしてくる人、食堂で一緒にご飯をしてくる人など、各々が様々な体験をし帰って来ました。

各自の体験を持ち寄り、語り合い、感じたことを振り返ることを各ワークでとても大切にしていました。結果、自分で無意識に蓋をしていた気持ちや価値観に触れて、隠されていた本音や見たくない自分を垣間見てしまう瞬間もありました。

それこそが大切で、行動力や意思もあり、将来性のある人達が、強く優しくあるためには、外側(社会)への問いと、内側(自分)への問いの両方を持ち、向き合う力を鍛えなければならないと思っていたんです。

自分を知れば、世界の見方が見えてきて、世界が見えてくるとまた自分を知ることにも繋がっていく。それを何度も繰り返すことで、言葉と行動が一致し、地に足をつけて次のステップに踏み込んでいけると思っていました。

7日間を通じて、参加してくれた仲間たちが発する言葉にはリアリティや重みが増し、知れば知るほど分からないことは増えるのだから、とにかく迷いながらも進んでいくしかないというタフネスを身につけていきました。

今でも共に暗中模索しながら、それでも進み続ける勇気をくれる良い仲間です。

成長に繋がる振り返りについて知りたい方はこちらをご覧ください

人に優しい変容の場づくりへの挑戦

大学卒業後はどのような視点から就職活動をされたのでしょうか?

志賀:卒業後は自分をゼロから鍛えてくれる環境に行きたいと思っていました。井の中の蛙のような自覚があったので、大海を知りたいと思っていたのです。

一方で、ずっと個人的に大切にしてきた「変容し続ける」を体現できる、あるいは大切だとしてくれている会社に行きたいという気持ちもありました。

そこで従来の発想にとらわれないユニークな形でビジネスリーダーや組織変容のコンサルティングもしている株式会社シグマクシスという会社に出会い、入社させていただきました。

とても濃い4年間で、組織開発や人材育成に関わる様々な経験をさせていただき、プロフェッショナルとしての矜持、多様な人生や価値観、立場が違えば見えるものも変わる、枠を外し続ける思考法など、多くのものを受け取りました。

その中でも特に、転職を決意する一番大きなターニングポイントとなったのは、自分の中にある「人を変えようとする」一面に気づいたことでした。

これまでは「世の中のために人はもっと変わるべき、良くなるべき、成長するべき」と思っていたのですが、様々な方に触れて、それが自分のエゴであることに気がついたんです。

今まで変容は正義だと信じていましたが、 変わりたいけど変われない人もいれば、変わりたくない人もいる。変わることで多くを失うかもしれない人もいる。そもそも毎日を過ごすので精一杯で、そんな余力はない人たちが実はほとんど。

それ以前に、日々の生活の中にある幸せをしっかり守ることが出来ずに苦しんでいる人もいることを知りました。

私は人を知らなさすぎて、もっと多くの人を見て、直接触れなければ教育の現場には戻れないと思わされる気づきでした。

ー今は小布施町立図書館の最年少の館長として働かれていますが、なぜ図書館を選ばれたのでしょうか?今後挑戦していきたいことがあれば教えてください。

志賀:今まで私は「社会を変える、人を変える」という壮大なテーマに突き動かされて活動をしてきました。しかしふと振り返ったときに、実際に自分ができることは本当に小さなことだなと感じるようになりました。

小さなことを地道に積み重ねることさえ実は難しいことで、私自身今でも出来ているとは言い難いのですが、長年地道に取り組んでみて初めて、少し変化が見えるだけなのかもしれないと思うようになりました。

それからというもの、多くの人に影響を与えようとするよりも、小さくても良いので現場を持ち、生身の人間と寄り添い合いながら進めていく、そんな静かで優しい変容をサポートできる人になりたいと感じるようになりました。

そんな時にたまたまSNSで小布施町立図書館長の公募が流れてきたのを見ました。

図書館は老若男女問わず、来るもの拒まず、本当に多様な人に開かれた場で、生涯にわたって各々が学び続ける場です。静かで優しい変容の場としても、とても面白い可能性があるのではないかとピンときて応募しました。

図書館自体が情報の宝庫であり、訪れる人々の人生が交じり合う物語の交差点です。訪れるだけで様々な人や物語に触れることができる図書館でなら、元々大切にしたかった問いや好奇心の芽を育むことも出来るのではないかと感じました。

少しずつではありますが、町の人たちに寄り添いながら、気づくと足が向かっているような拠り所となる図書館としての姿を探究していきたいと思っています。

小布施町立図書館HPより

自分で考える能力ー真のインテリジェンスを身に着けるためにー

ー最後にこれから子供達に求められる力、能力について教えてください。

志賀:本当にたくさんあると思いますが、特に大切なのは「自分で感じて考える能力」だと思います。

私は幼い頃から母に「あなたはどう思うの?」「自分の幸せは自分の心が決めるのよ」と言われ続けて育ちました。

そのおかげで何かを選択する際は、いつも「自分がどう感じているか」を自分に問いかけながら意思決定することができましたし、何よりも母がそれを常に尊重してくれていました。

世の中で起きていることや自分の身の回りに対してまず違和感や問い、あるいは感動を持てる感度を日々鍛えること、そして情報や知識で整理するだけではなく、自分の頭でしっかり考えることが大事だと思います。

物を知っているだけではただの情報に過ぎず、自分なりに考えたことと合わさって初めて知恵になるのではないでしょうか。

思考を鍛えられる場面も増えてきましたが、感度の部分はまだまだです。周囲の大人には子ども達に「ねぇ、今どんな気持ち?」と尋ねることでサポートをしていってほしいと思っています。

日々の違和感を大切にし、自ら感じ、考えながらチャレンジし続けている高校生に関心がある方はこちらのブログもご覧ください

まとめ

志賀アリカさんは、小さい頃から積極的に様々な活動をされて来られました。
そのどれもが自分の感情や想いに素直に従ったものであり、常に挑戦を続けておられます。

今は長野県小布施という場所で最年少の図書館長という立場で日々、イマジネーションとクリエーションを生み出すために奮闘されておられます。人に優しい変容の場としての図書館の在り方に期待しています。
インタビューをお引き受けいただきありがとうございました。