保護者が子どもと一緒にできることについて、今回は「振り返り」にフォーカスを当てています。子どもと振り返りをすることで、子どもをより理解することだけでなく、保護者自身の価値観にも気づき、家族の関係の質を高めることもできます。

この記事では発達段階に応じた2つの振り返りの例も提案しています。学期末・学年末や定期テスト後、連休や長期休みなどお時間のあるときに、ご家庭でぜひ取り組んでいただけたらと思います。

もくじ
1: 子どもと振り返りをすることの意義・価値
2: 子どもとできる振り返りの進め方例:①幼稚園~小学校低学年向け、②小学校高学年以上向け
3: 教育現場における子どもとの振り返りの例:「みんなの学校」・「振り返りジャーナル」
4: まとめ

ビジネスや成長に活用する「振り返り」について知りたい方はぜひ下記のブログをお読みください:

1. 子どもと振り返りをすることの意義・価値

「振り返り」をすることで、自らの言動や傾向を客観的に捉え、次に向けた改善点の洗い出しを行い、その改善点を実行することができます。特に子どもとの振り返りを通した効用については、能力を育てる観点・SEL(Social Emotional Learning:社会性と情動の学習)における観点などから、下記のような効果が指摘されています。

1-1. 振り返りは子どものどのような能力を育てるか?

子どもとの振り返りそのものを通じて、
 ● 見通しを持つ力
 ● 疑問を持つ力・質問する力
 ● 仮説をつくる力
が高まるという研究があります。またEQ(Emotional Intelligence)を高める働きもあるといいます。EQは動機づけや自己抑制・自己理解、共感性やソーシャルスキルなどコミュニケーションに欠かせない能力です。

EQに関しては、下記リンク先から詳しい定義や測定方法、カリキュラムの例などが読めます:

1-2. SEL(社会性と情動の学習)における振り返りの効用

またSEL(Social Emotional Learning)では、振り返りは
 ● 自己認識(Self awareness)
 ● 他者への気づき(Social awareness / Relationship skills)
を高めるものとされます。

振り返りやSELの学習等を通して、子どもの時に自分の意見を尊重される経験をした場合、自分の行動に責任を持つ傾向があるという研究も発表されています。

上記の研究を行ったオーストラリアのビクトリア州では、移民や海外出生などにより母語が英語でない子どもたちの自尊心が低く、社会的および感情的な幸福感が高まりづらいことがありました。文化的に多様な背景を持っている子どもたちの自尊心の低さを受けて、振り返りを効果的に活用することで、子どもたちの自己肯定感を高めていったという実践もあるそうです。

この実践は子どもに関わる教師・専門家が、子どもとのやり取りや関わりについて一緒にまたは各自で継続的な振り返りをするというものでした。振り返りでは、子どもに関する先入観によって不公平または不平等が起こっていないか、また教師・専門家が持つその子のイメージがどのようなものなのかを確認したり交流したりしていました。

そこで教師・専門家自身が自分の感情や偏見に気づき、価値観や信念を見直し、子どもたちへの支援や関わりを改善していきました。それに応じて、子どもたちは自分たちが尊重されていると感じ、自己肯定感が高まっていったといいます。

2: 子どもとできる振り返りの進め方例:①幼稚園~小学校低学年向け、②小学校高学年以上向け

ではどのように振り返りを進めていくのが効果的なのでしょうか。ここではご家庭でできる形で、発達段階によって2つのパターンを紹介します。

振り返りには「メタ認知」が大切だと言われます。メタ認知とは、自分が理解している・知っている(=認知している)ことを客観的に把握することです。思考パターンにこの「客観性」が出てくるのが、思春期に差し掛かる小学校高学年ごろと言われています。

したがってここでは、「メタ認知」能力がまだ発達していず自分中心に考える「幼稚園~小学校低学年向け」と「メタ認知」能力が発達し客観性を持って自分を見始めた「小学校高学年以上向け」に分けて、振り返りの進め方の例をお伝えします。

ビジネスでも活用できるメタ認知について知りたい方は、こちらの記事をご覧ください:

2-1. 幼稚園~小学校低学年向け「振り返り」質問例:3~10歳

子どもは3歳ごろから少しずつ、自分の感情を表現したり、出来事を自分で受け止めたりするようになります。そういった子どもの感情や出来事の表現を受け止められるのが「振り返り」の時間の価値となります。

1ヶ月~3ヶ月に1度、下記のような振り返りの質問に子どもも保護者自身も答えることで、子どもが感じたことや大切にしていることが共有できます。絵の好きなお子さんなら、質問に対する絵をお互いに描き、それをもとにお話するのもいいかもしれません。1つの質問にお互いが1分程度で答えるところから始め、全部で5~10分程度で構いません。3人以上の家族でも、ぜひやってみてください。

1.◯月/秋(季節)のできごとで、心に残っていることは?
2.なにかお話ししておきたいことは?
3.◯◯(一緒に話している保護者)や家族に聞いてみたいことは?


1の質問で、子どもがどんなことに心が動いたのかを受け止めることができます。振り返り始めの頃やまだ年齢が小さいうちは、すぐ前に起きたことや昨日の出来事など「えっ、それなの?」と思うようなエピソードを話してくれるかもしれませんが、振り返りを続けることで、少しずついろんなことに心が動いていることを感じられるようになります。

2の質問では、その時に関心のあることや悩みを共有してくれることがあります。「特に無いよ」ということであれば、保護者自身が1の話題と関連したお話をしてみるのも良いです。そうして共有されたお話によって、すぐにではなくても広がる話題が出てきます。

3の質問では、家族に対して感じていることを共有できます。この時期は自分の居場所や愛着を形成する大事な時期で、身近な家族が大事な居場所でもあります。ここで家族に対しての意見を聞いてみることで、家族の中での関係の質に関する振り返りができます。

この時期の子どもの感性や感情に触れる交流は、とても楽しいものです。ぜひお子さんとのやり取りを通して、楽しい時間を過ごしてみてください。

2-2. 小学校高学年以上向け「振り返り」質問例:11歳以上

思春期に差し掛かった子どもは、感情を制御することも多くなってきます。「これは皆と違う」「自分だけがこんなことを考えているのだろうか」という考えが、知らず知らずのうちに子どもを追い詰めていることもあります。「振り返り」によって、身近な大人に自分の考えを受け止めてもらうことで、少しずつ考えを整理したり新たな見方ができるきっかけとなったりします。

学期末や長期休みの週末などに、下記のような振り返りの質問に1つ1~3分程度でお互い答えてみましょう。10個すべてを回答する必要はないので、こちらも20~45分程度、体調や時間に応じて行うとよいものです。

1.この4ヶ月で「楽しいな」と思った出来事は何?なぜ楽しかったのでしょう?
2.この4ヶ月で「大変だな」「難しいな」と思った出来事は何?その大変さを減らすために、どんな工夫ができた?
3.「勉強/仕事」について。どんなものがあれば、どんなことができたら、 「もっと学べた/仕事ができた」と思う?
4.「学校/会社」について。どんなことを楽しみにしている?何が「いいことだな」と思う?
5.「学校/仕事」について。どんなことが不安?または大変なことは何?
6. この4ヶ月で、新しく気付いたことや学んだことは何?そして「意外だな」と 思ったことや、新しく発見したことは何?
7. もしタイムマシンに乗って、4ヶ月前の自分に会えるとしたら、過去の自分にどんなアドバイスをする?
8.感謝していることは何?家族や友だちや先生などの「人」でも、または「学校」や「ニュース」などの「もの・こと」に対することでもいいので、感謝していることをなるべくたくさん言ってみよう。
9.コロナなど社会に大きく影響する問題が将来起こる可能性もあるね。それを踏まえて、人はどんな力や知識を持つことが大事だと思う?それらを身に付けるために、どんなことができると思う?
10.今後自分が「やってみたい」「挑戦してみたい」と思う新しいこと、または過去以上にもっと取り組みたいと思うことは何?


ここで子どもが共有してくれたことを保護者が素直に受け止められないことも、また逆のことも、もしかしたらあるかもしれません。そのような場合には、次章に書く教育現場での振り返りを参考にしてみてください。つけたい力にフォーカスする対話や、ノートやメモに書いてもらうことでお互いに共有・記録できる方法などを試してみてもいいかもしれません。

3: 3.教育現場における子どもとの振り返りの例:「みんなの学校」・「振り返りジャーナル」

3-1. 身につけたい力にフォーカスした振り返りで「不登校ゼロ」へ:大阪市立大空小学校=「みんなの学校」の例

大阪市の住吉区にある大空小学校は2006年に開校し「すべての子どもの学習権を保障する学校をつくる」という学校理念のもとに、特別支援の対象となる児童も含めすべての子どもたちが同じ教室で学びます。この学校では唯一のルールとして「自分がされていやなことは人にしない・言わない」という約束があり、地域住民・学生ボランティア・保護者らの支援も積極的に受け入れた地域に開かれた学校で「不登校ゼロ」を実現しました。

大空小学校の初代校長・木村泰子先生によると、学校では身につけたい「4つの力」として
 1.人を大切にする力
 2.自分の考えをもつ力
 3.自分を表現する力
 4.チャレンジする力
を掲げ、1年生から6年生までそれぞれの子どもが学期ごとにどの力をつけたいか考え、学期末にはこの力について振り返りを書き、また次の学期に進んでいくというルーティンがあるそうです。

また大空小学校には「振り返り文化」があり、大空小学校の名物授業でもある「全校道徳」ではグループに分かれて大人も子どもも混じってディスカッションしたあと、「振り返りシート」にそのときのテーマについて自分の考えを書いていくようにしているそうです。

海外でも、SEL(Social Emotional Learning)を活用したカリキュラムを通じて振り返りを取り入れている学校があります。下記ブログから詳しく読めます:

3-2. 子どもとクラスの成長を促進する:学校で活用されている「振り返りジャーナル」の例

現・軽井沢風越学園校長の岩瀬直樹先生により広がった「振り返りジャーナル」という実践があります。学校の一日終わりの終礼などの時間で毎日B5半分のノートに振り返りを書き綴り、自分や他の人・クラスの成長を自分自身でたどり学ぶことを目的にしています。書くことで自分の書いたものを客観視し、次に活かし振り返りができる、と岩瀬先生は言います。

「振り返りジャーナル」実践のステップは以下の通りです。

1.帰りの会に取り組む
2.先生は「今日のテーマ」を黒板に書く
3.子どもたちはテーマに応じて振り返りジャーナルを書く
4.書き終わったら先生に提出する
5.先生はそれを読んで1人30秒程度でフィードバックする or 簡単なコメントを書く

振り返りジャーナルを続けることによって、子ども自身の成長だけでなくクラス全体での成長が促されたり、先生がより生徒を理解して関係の質を向上させたりなどの効果もあるようです。

振り返りジャーナルについて詳しくは、岩瀬先生のブログを確認いただければと思います。

学校で「振り返りジャーナル」がなくとも、書くことが好きな子は日記やアプリによる記録で振り返りを進めるのも、いいかもしれませんね。

4: まとめ

振り返りを通して、自分や他者を理解し成長を促すことは、大人だけでなく子どもにももちろん当てはまります。Teach For Allという国際NPOのCEOである Wendy Kopp氏は、4人の子どもとの週末の振り返りをルーティンにしているそうです。今回紹介したような進め方や例を参考に、お子さんに応じて取り組んでみてはいかがでしょうか。


■ 参考リソース

・VEYLDF Evidence Paper 8 Reflective Practice (英語) – オーストラリア・ヴィクトリア州の実践等報告
https://www.education.vic.gov.au/Documents/childhood/providers/edcare/evirefprac.pdf

・AI時代を生き抜くために、子どもに今必要な「見えない学力」とは – 大阪・大空小学校 初代校長 木村泰子先生寄稿
https://diamond.jp/articles/-/256195?page=4

・小学1年生が本気で「いじめ」を考える…驚きの「全校道徳」とは何か – 大阪・大空小学校 初代校長 木村泰子先生寄稿
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/55810

・No breakfast, but bagels for lunch (英語) – The New York TimesによるWendy Kopp氏へのインタビュー
https://www.nytimes.com/2011/04/10/nyregion/10routine.html