「どうやったら自立して自分のことをやってくれるのか」

「毎回注意するのは疲れてしまう」

自分の身の回りのことを責任をもってできるように早くなって欲しい。

自分で物事を考えて行動できる人になって欲しい。

子育てをしている中でこのような想いを多くの方が持ったことがあるのではないでしょうか。

今回は自立を促す「見守る」ことについて、子どもと関わる際に活用できる方法について共有します。Katsuiku Academyで行っているプログラムでも重要にしている「見守る姿勢」とはどのようなことが含まれるのか、子どもと関わる保護者、先生、指導者等の方々にぜひ一読して欲しいです。

もくじ
1:ルソーの消極的教育
2:「見守る」と「監視する」と「放置する」の違い
3:子どもの状態を見ること
4:年代別にみる子どもが抱える課題:エリクソンの発達段階
5:まとめ

1. ルソーの消極的教育

多くの思想家に影響を与え、近代の民主主義の土台を作った一人として有名な18世紀の哲学者のジャン・ジャック・ルソーは哲学や政治経済で活躍されたイメージを持っている方も多いと思います。彼は政治経済や社会のあり方だけではなく、教育的な思想にも言及しており、モンテッソーリやデューイなどの多くの教育学者や実践者に影響を与えました。

ルソーが提唱した教育思想はまとめて「消極的教育」と呼ばれています。

ルソーの教育的思想の元には性善説が影響していると言われています。人間が自然のままの状態であれば、内在する「成長したい」という考えやよりよく生きようとする想いが欲求として存在しているため、それらに基づいて行動すると考えています。

人が関わる・介入する機会が増えれば増えるほど、上記の自然な状態から離れてしまうと考えており、大人が積極的に関わるのではなく、消極的に関わるという教育​​を提唱していました。

つまり、大人はいちいち物事を教育として教えるという関わり方ではなく、子どもたちが自発的に行動できるように、大人はあくまでもそれをサポートする存在であるべきだということです。

ルソーの時代で必要とされたスキルや物事の考え方は現代と異なる部分もあるため、今の時代を生きている子どもに彼の教育的思想をそのまま反映すべきということではないですが、見守るという教育を実践する上では彼の消極的教育を知ることは一つのヒントになるかもしれません。

消極的教育では子どもを放置するということではなく、見守るという形での援助が求められます。

2. 「見守る」と「監視する」と「放置する」の違い

具体的に「見守る」とはどのような形で現れるものなのか。

見守るの根底には子どもに対しての信頼が存在します。

重要な注意点を伝えれば子どもが自分で考えて行動してくれるという信頼です。

ニュアンスとして似ている見守る、監視する、放置するというのを大きく分けると下記の考え方があると思います。

見守る:大きな枠の中で子どもに自分で考えて決める範囲を与える関わり方

監視する:全てのことに対して親から言及、注意して細かく伝える関わり方

放置する:枠も何も与えず、注意や言及もしない関わり方

「監視する」関わり方を常に行ってしまうと、子どもが自ら考えて行動して、失敗したり、成功したりする経験を奪ってしまうことに繋がります。自分で物事を選んだ経験が少ないため、親や先生の許可がないと行動を起こせなくなってしまったり、周りの大人の顔色を伺いながらの行動が現れやすい傾向ができてしまいます。

「放置する」関わり方を常に行ってしまうと、自分の限界や社会の枠組みを理解せず大きすぎるリスクを犯してしまったり、社会との接点をうまく取れない状況に陥りやすくなります。

「見守る」という関わり方では、注意すべき点はしっかりと注意を行ったり、その時の子どもにとって必要な枠組みを与えることで、ある程度の安心・安全の中で子どもが自主的に行動することが可能となってきます。

自主性や自分で決めることで子どものモチベーションにつながる自己決定理論についてもっと知りたい方は下記の記事をご覧ください。

3. 子どもの状態を見ること

上記では見守る関わり方によって自主性が育まれることを紹介しましたが、必ずしも常に見守ることのみが正解ということではなく、場合によっては監視する関わり方や放置する場面も重要になってきます。

ではどのような具合で見守るべきなのか。

見守るという観点でとても重要になるのは「子どもの状態をみること」です。

どの程度の距離感で見守るべきなのかを判断するには目の前にいる子どもをみて、調整していく必要があります。今目の前にいる子どもがどこまでのことができて、どこからが本人の次のステップなのかを判断する必要があります。

4. 年代別にみる子どもが抱える課題:エリクソンの発達段階

見守る上で、子どもが発達段階において直面する課題をみることが一つのヒントになるかもしれません。下記の発達段階の年齢はあくまでも目安であり、必ずしも全員が下記の年齢で記載されている課題に直面するとは限りません。中には早い段階で課題に直面する人もいれば、場合によっては少し遅れて直面する人もいます。

発達段階の理論の中で今回はエリクソンの8つの発達段階を活用していきます。生まれてから20歳までの5つの段階に今回はフォーカスして紹介していきます。

発達段階1:乳児期:信頼感 vs 不信感(生後-2歳)

最初の発達段階は生まれてから2歳までの乳児期となります。子どもからするとこの時期では自分の安全等は親に頼るしかありません。

毎日が初めて体験することに溢れており、不安や不快、恐怖を感じることも多くあります。

この時期に親が不快や不安に対処してくれることで、親への信頼感を得ることができます。親への信頼感をえることで、今後人生で出会う新しいことや周りの人たちに対して希望をもったり、信じることが可能となります。

逆に負の感情が適切に対処されない状況で育った場合は不信感が拭えず、周りの人や新しいことに対しても不信感を強く感じる傾向があります。

発達段階2:幼児前期:自主性 vs 羞恥心(2歳-3歳)

この時期は自分でできることがどんどん増えていきます。自分で食べ物を食べたり、遊ぶおおもちゃを選んだり、自主的に行動する機会が増えていきます。

自主性が発揮できる場面が増えると同時に、自分で選んだことがうまくいかなったらどうしよう、失敗して怒られたらどうしようなどの不安や羞恥心が芽生える時期でもあります。

見守るという観点では、身の危険や危ないことをしっかりと注意をしながらも、失敗しても受け入れるスタンスをとることが大切になってきます。不安や羞恥心よりも自分で選ぶことの楽しさや自分でもやりたいという気持ちが優先されることで、自主性を育むことができます。

発達段階3:幼児期後期:自発性 vs 罪悪感(4歳-5歳)

この時期は自発性がどんどん出てくる時期になります。

前の二段階で世の中のことを信じることができ、自分のことを自分で決める自主性が芽生えている中、この段階ではさらに自分から行動をしていく自発性が試される時期になります。

周りのことに興味を多く持つ時期であり、自発的に周りのことに関わっていく時期になります。例えば誰と遊ぶのか、どのように遊ぶのか、どのように身の回りのことを行うのか等が含まれます。

親が自発的に探検することや試すことを援助してくれる環境であると、自発性が伸びる時期になり、逆に探検することや自発的に行動する度に注意され続けたりすると自分が自発的に行動することに対して罪悪感を感じてしまい自発性が発揮しづらい状況にもなりえます。

発達段階4:勤勉性 vs 劣等感(5歳-12歳)

この時期は学校生活等を通して今までの家族とは異なる集団生活が増えてきます。

その中で自分と同年代の仲間と出会い、生活することで周りと自分を比較する場面が増えてきます。

比較する中で、自分が劣ってしまっていると感じることも多くなってきます。最初は劣っているとしても努力を重ねて小さな成功体験をしたり、親や周りの人たちに努力を重ねるプロセスを褒められたり、認められたりすることで自己効力感や勤勉性の重要さが定着していきます。

新しい挑戦に対して最初はできなくてもできるようになるという考え方や、努力を重ねれば自分もできるようになるという感覚を覚えられる時期です。

逆に劣ってしまっていることを感じたまま、周りからも援助されない状況で過ごしてしまうと劣等感が強く残ってしまう時期にもなります。

自己効力感についてもっと知りたい方は下記の記事をご覧ください:

発達段階5:アイデンティティ vs アイデンティティの混乱(13歳-19歳)

この時期は自分は何者なのか?というアイデンティティを探求する時期になります。今までとは異なる行動や言動が目立つ時期でもあり、たくさんのことを試すことで自分らしさを磨いていく時期になります。

自分らしさやアイデンティティを確立させることで、今後の人生の方向性などを考える大切な土台になります。

アイデンティティの確立ができない状態のままでは自分の方向性が定まらず、世の中においての自分の居場所や役割などについて悩む傾向が強くなります。

エリクソンの発達段階とアイデンティティの形成について詳しく知りたい方は下記の記事をご覧ください:

5. まとめ

18世紀のルソーの教育思想を紐解いたり、子どもの発達において各段階の課題を紹介しながら「見守る」という子どもとの関わり方をみてきました。

どのような形で子どもと関わるべきなのかは記事内でも紹介しましたが、目の前の子どもを見ることがまず大事なステップになります。

今回の記事で紹介した各発達段階の課題等もあくまでも一つの考え方や大きな目安でしかなく、最も大切な情報や知識は目の前の子どもを観察することで得られます。どのようなサポートを必要としているのか、見守るという言葉にもある通り、見た上で守るという考えをもって接することで自己成長をサポートすることが可能になっていきます。

ぜひみなさんの子どもとの関わりに少しでも上記の情報が役に立てばと思います。