どうしたら子どもは幸せな人生を歩めるのか?

どうすれば子どもは困難な状況でも自立して乗り越えられるようになるのか?

保護者や先生等の立場で子どもと接する機会が多い方がよく抱える悩みかもしれません。

具体的にどのようなスキルが必要なのか?どのような学校に入ればいいのか?

テストの点数はどれくらい気にすればいいのか?いい学校に行かないと幸せには成りにくいのか?

今回の記事では世界が注目している非認知能力に関して紐解きます。非認知能力が人生においてどのような影響を当てえているのかいくつかの研究をみながら紹介します。

IQではない。非認知能力とは?

非認知能力という言葉を聞いたことはありますか?

認知能力とはは一般的に学力(IQ)や従来の試験の結果などで測ってきたような「頭の良さ」を指します。一方で非認知能力とは、やる気や自己管理力、忍耐力、協調性、共感力、社会情緒力などのIQなどでは測れない認知能力以外の力を指しています。

従来の頭の良さを持っているからと言って、社会で成功できるわけではないです。プレッシャーに弱かったり、一度失敗すると落ち込んでしまったり、人間関係を上手く構築できなかったり。また、一時期勉強がとても良く出来たとしてもモチベーションや気力がなくなってしまったら、その後人生の成功や幸せを感じられるとは限りません。

また、VUCA時代などの言葉で表されるように先行きが不透明で不確実性が高い世の中では、一つのスキルを学ぶだけで人生が安泰とは限らず、常に学び直したりすることが求められます。また、複雑な課題を解決するには多様な視点を取り入れる必要があるため、他者を理解する共感力や周りと一緒に協働する力が必須になります。

非認知能力の重要性

やる気や自己管理力、忍耐力、協調性、共感力や社会情緒力はなんとなく大事そうに思えるが、具体的にどれほどの影響力を人生に与えているのか?

世界中で非認知能力に関する長期的な研究が行われています。

1、自制心:

非認知能力の一つである自分の欲望などを抑える自制心に関する研究がニュージーランドで行われました。研究対象者は1037名で彼らは生まれた時から32歳までの期間、研究に協力していました。10歳あたりまでに培った自制心がそのあとの人生においてどのような影響を与えるのかをフォローしました。

研究結果では、自制心が観察された対象者たちはより健康的な大人になっており、アルコールやドラッグなどの中毒者も少ないことが見受けられました。また自制心が低かったグループは健康以外にも経済状況でも貯金がないなどの苦しい状況に陥りやすく、犯罪率も自制心があるグループに比べて高いことが分析されました。

2、社会情緒力:

周りの友達を助けたり、大事なおもちゃを渡したり、周りに共感する等の「思いやり」を示していた幼児が大人になるにつれてどのような道を進むのか。19年間の長期間を通じて、幼児の成長を追った研究結果が2015年に発表されました。

研究では753名の幼児が1991年から2010年の期間を通して観察されました。「思いやり」が高いと当時の先生に評価された幼児のグループは他のグループに比べて高校を予定通りに卒業し、大学で学位を習得し、正社員として雇われる割合が高いことが判明しました。

幼い頃から相手のことを思いやる力を育むことで長期的にポジティブな影響が得られる可能性があることが見受けられます。

上記の二つの研究に限らず、世界中で非認知能力に関する様々な研究が行われており、その研究結果などからもIQ以外の力が求められている時代であることが示されています。

笑顔で勉強する子供たち 授業 先生

日本でも注目され始めている!?

これまでも非認知スキルは「生きる力」として特に乳幼児の保育教育などで重視されてきました。しかし近年は、OECDとベネッセの共同研究プロジェクトでも現代社会においての非認知スキルを含めた社会情動的スキルの意味合いや必要としているターゲットが変化して来ていることを示唆するなど、更に注目が高まってきています。知識社会の知のイノベーションやグローバル化、多様性に富むようになった社会の中でも、学び続け主体的に活躍できるようになるスキルとして非認知能力は学校教育においても取り組んで行くべきであり、学力と切り離せないというのです。

非認知能力が足りていない

非認知能力が必要であることがわかった以上、現状の教育はどのような状況なのでしょうか。

非認知スキルのひとつである社会情緒力を測る為、海外で行われた148,189人の6年生-12年生(日本の小学校6年ー高校3年)を対象とした調査では、29~45%の生徒しか共感性や意思決定力、問題解決力等といった社会的スキルを持ち合わせていませんでした。高校生の40~60%は学校で学習することに対して気力がなく、30%は非行等に走ってしまうこともわかっています。

学力(IQ)だけではなく、それと合わせて非認知スキルを養うことが社会で自立的に活躍する為にも重要になっており、地域や通っている学校にももちろんよりますが上記の研究を通して学校教育の中でもより伸ばす余地があることが感じられます。

学校教育でできること:SELプログラムの導入

海外では既に研究者と教師のコラボレーションにより、どのように非認知スキルの育成が学力等の認知スキルと関わり合っているかについての研究が進んでいます。

その中でもSocial and Emotional Learning と呼ばれるSELプログラムは、対人関係能力を育成するプログラムとして虐めや学内で起きている問題を処理する為だけではなく、社会性や感受性を身につけた生徒たちがどのように自分の行動を自ら改善していくのかどうかについても研究の視野にいれ、広く学校教育に導入され始めました。

最も注目された研究は、2011年に213の学校で行われたSELプログラムの結果の分析です。プログラムを通じて大幅に学生の社会的、感情的能力は向上されました。社会的、感情的な能力に留まらず33のプログラムにおいては生徒の学業成績が11パーセンタイルポイント向上していました。

 

非認知能力の育て方

現在、世界中で非認知能力の育て方の手法やそれらの有効性が研究されています。まだ多くの研究が必要とされている分野です。自分の子どもや生徒の非認知能力を育てるために身近な大人がすぐに行えることがあります。

非認知能力を行動で表すこと:

子どもに限らず周りに同じような考えや行動を増やすためには自らがロールモデルとしてその行動を表すことがとても大事です。

予期せぬ出来事が起こる度に、イラついている姿や落ち着きのない状況を見せ続けていながら、子どもには言葉で「落ち着いて考えなくてはダメだよ」と伝えても説得力はないことは明白です。

自制心や思いやり、共感力などの社会的情緒力を身につけさせるためには身近な大人がそれらを自らの言動を通して示していくことが最も効果的な方法です。

家族に対してどのような形で接しているのか?

同僚とはどのような関係を築いているのか?

日々の自分はどのような行動をとっているのか?

現状を振り返った上で、身につけて欲しいと思っている非認知能力をより日常的に見せるためには自分の行動をどのように変える必要があるのか考えてみてください。

最初は小さな変化かもしれませんが、日々の積み重ねで非認知能力の重要性を自らの言動で見せ続けることが大きな変化にもつながります。

 

今までの教育では、「どのように生徒の学力を向上させるか」これは多くの人が常に追い求めてきた問いです。研究者も、教育者も、保護者も生徒本人も、大変関心のあるところでしょう。

しかし今こそ、学力をどう向上させるかだけではなく、子ども個人のやる気や意思の土台となる非認知能力をどのように向上させるかに着目することが、学力を向上させると共に、21世紀を生き抜く力を身につけさせることになります。