記事の重要ポイントまとめ

  • 他者の行動を観察し、学べると示したモデリング理論
  • モデリング理論の有名なボボ人形の実験で子どもが周りをみて、模倣することで学ぶことが見受けられた
  • 子どものロールモデルは身近な人になりやすいため、大人としてどのようなモデリングの対象になるか考えていかなくてはいけない

「こんなこと教えていないのにいつ学んだんだろう?」

「自分と言動がどんどん似てきているな」

自分の子どもや生徒をみていて上記のようなことを体験したことはないでしょうか。

今回のブログでは人がどのようにして他者から学ぶのかを紹介します。

人はどのように学ぶの?

人は経験から学ぶことができます。経験は大きく分けて2つに分類されます。

一つは自分が直接体験する直接経験と、もう一つは他者の経験を見聞きする代理経験です。

1950年代以前には心理学の分野では、一般的に人は自らが経験した直接経験から学ぶ(直接強化・直接的学習)と思われており、他者の行動を観察するだけでは学ぶ(社会的強化・社会的学習)ことはできないと思われていました。

その考えを実験結果を通して変えたのがアルバート・バンデューラの「モデリング理論」です。

観察して学習するモデリング理論の提唱者のアルバート・バンデューラとは?

アルバート・バンデューラは1925年にカナダで生まれた心理学者です。

カナダのブリティッシュ・コロンビア大学を卒業し、その後米国のアイオワ大学で博士号を取得しました。

1964年にはスタンフォード大学の教授となり、現在もスタンフォード大学の名誉教授です。彼が提唱した社会的学習理論(モデリングによる学習)や自己効力感についての理論は心理学に限らず、教育学や社会学にも大きな影響を与え続けています。

バンデューラの自己効力感に関する記事はこちらをご覧ください。

モデリング理論の有名な心理学の実験「ボボ人形実験」

バンデューラは人は他者の行動を観察し、それを模倣する(見て真似をする)ことで学習できると考えており、それを「モデリング理論」として研究を行いました。

バンデューラが提唱するモデリング理論の最も有名な実験が1961年-1963年に行われた「ボボ人形実験」です。

ボボ人形実験では、子どもを対象にボボ人形という空気で膨らませたビニール人形が実験で活用されました。

対象の子どもたちを3つのグループに分けて実験が行われました。

Aグループの子どもたちには、ボボ人形に対して大人たちが攻撃的な行動をとっている映像が見せられました。その映像の中では、大人がボボ人形を叩いたり、蹴ったり、罵声を浴びさせている様子が録音されていました。

Bグループの子どもたちには、ボボ人形に対して大人たちが攻撃的な様子を一切見せない映像が見せられました。大人たちはこの映像の中では他のおもちゃで遊んだり、静かに過ごしていました。

Cグループの子どもたちには、何も映像を見せませんでした。

その後、子どもたちをそれぞれボボ人形を含めたおもちゃがたくさんある部屋に入れ、観察しました。

Aグループの子どもたちは、BグループやCグループに比べて、ボボ人形に対して攻撃的な言動が遥かに多いことが見受けられました。

この実験の結果により、人は他者の言動を見るだけでも学習するというモデリング理論が広がりました。

バンデューラの社会的学習理論(モデリングによる学習)とは?

バンデューラはボボ人形実験を元にモデリング理論を発展させ、「社会的学習理論」(Social Learning Theory)としてまとめました。

社会的学習理論とは、「他者の行動を観察することによって、人は学習することができる」と提唱している理論です。それまでの心理学では学習は学習している人自身の行動によって成立すると思われていました。

学習者が直接体験していることだけではなく、他者の行動を観察し、模範することで学習が可能であることが提唱され、それまで定義されていた学習方法の範囲が大きく変わった理論です。

モデリングの4つの過程

バンデューラが提唱した他者の行動と結果を観察し、模範することで自ら学習するモデリングの学習では、4つの過程があります。

① 注意過程:

この段階では、モデルとなる対象とそのモデルが持っている特徴を選択し、観察している過程です。

モデルとなる対象は多く存在します。例えば子どもの場合は親や兄弟・教師などの身近な存在から、テレビや本などで知った著名人・有名人も含まれます。

② 保持過程:

この段階では、観察したモデルを記憶に残している過程です。頭の中でその人やその人の特徴を記憶として保持しています。

モデルがとっている言動を抽象化したり、頭の中でその対象の言動を繰り返し模倣することで、記憶に残しています。

③ 運動再生過程:

この段階では、記憶に残したモデルの言動を自ら再生する過程です。

頭の中で記憶することと、実際に再現できることは全く異なる場合もあります。ただ、再生することで、自分が実現できている行動と頭の中で記憶したモデルの行動との差が見え、その差を埋めるための調整を行うことも可能となります。

④ 動機付け過程:

この段階では、モデルを模倣することで学習した行動を続けることの動機付けを行う過程です。

その行動を実践することによって得られた満足感や楽しさや周りから褒められたなど様々な動機付けが存在します。

動機付けには自分ではなく、外から受ける外発的動機(褒め言葉など)や自分の中から発生する内発的動機(自らの満足感など)が存在します。外発的動機や内発的動機についてより詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。

モデリングの応用方法:行動療法としてのモデリング

バンデューラの研究によって、人は自らの体験だけではなく、他者の言動を観察し、模倣することで学習することが可能だとわかりました。

モデリング理論は様々な分野で応用されています。特定の行動を学習するため、またはある行動を終わらせるために活用するケースが多いです。

例えば、バンデューラはモデリングを、特定のものに対して恐怖症を持っている患者がその恐怖症を乗り越えるために、活用していました。

ヘビや犬に対して恐怖症を持っている患者が、モデルである他者がヘビや犬と普通に接していることを観察することで、恐怖対象との関わり方を変えていく療法も存在します。

子どもにとって身近な大人はモデルの対象

モデルの対象は、自分の憧れの人や尊敬している人であるケースも多いですが、子どもにとって身近な大人がモデルになることも多いです。自分と似ている環境や状況にいる人たちをモデルにしやすいとも言われています。

そのため、自分の子どもや日常生活で接している子どもたちにとってあなたは重要なモデルになっている可能性があります。

あなたが意図していなくてもあなたの言動は、子どもたちに観察され、模倣され、学習されています。

また上記は子どもと大人に限らず、仕事での同僚やチームメンバーに対しても同じことが言えます。

あなたは周りの人たちにどのようなモデルとして行動をしていますか?

周りに再現してほしい行動をまずは自ら体現していくのが、モデリングの重要な学びかもしれません。