「身近にお手本になるような人がいればいいのに」

「いろいろと相談できる相手がほしい」

変化が激しい世の中で会社員からフリーランスになるなど、働き方や生き方の多様な選択肢が増えています。多様な選択肢が増えている中、自分と同じような立場の人が少なかったり、自分が抱えている課題を相談できる相手がいればと思ったことはありませんか。

そのような中、企業や教育現場で活用されているメンター制度が注目を受けています。

今回は企業や教育現場、社会課題に対しても活用されているメンターについて紐解いていきます。

もくじ
1:メンターの意味と役割
2:メンターが求められる背景
3:教育現場やNPOで活躍するメンター
4:まとめ

1. メンターの意味と役割

メンター(Mentor)とは日本語で「助言者」や「指導者」と訳されることがあります。

メンターの語源はギリシャ時代のオデュッセウス王やその息子のテレマスコの助言者および師として活躍した「メントール」の名前が語源となっているといわれています。​​

企業や教育現場等においてメンターの役割が異なることもありますが、一般的にメンターは相手の相談にのりアドバイスを与えたり、またはお手本になる人としてスキルや生き方を学ぶ存在のことを指します。

企業や教育現場等のメンター制度を活用して明確にメンターという立場に立っている人もいれば、いろいろな人の相談にのったりしている中で、本人には自覚はない中でメンターとしての役割を果たしている人もいます。

厚生労働省が2013年に発行した「メンター制度導入・ロールモデル普及マニュアル​​」では、メンターの役割として「キャリア形成上の課題解決を援助して個人の成長を支えるとともに、職場内での悩みや問題解決をサポートすること​​」と示しています。

2. メンターが求められる背景

メンターが制度として教育現場や企業の中で導入されている背景には社会全体としての動きおよび企業側としての動きが影響しています。

社会全体としての課題:孤立・孤独化

多様な働き方が増えていたり、先行きが読みづらく変動性が高まっていたり、社会の高齢化等が進んでいたり、VUCA時代と呼ばれる現代社会では社会全体として様々な変化が加速している印象を受けている人も多いのではないでしょうか。

VUCA時代に求められるリーダーの力について知りたい方はこちらをご覧ください。

多様な生き方が増え、個人として活動・活躍できる方法が増える一方、個人がお互いに繋がりをもつ等の他者との関係性が、希薄になっていくともいわれています。

英国では孤立が国家に与える影響は年間320億ポンド(約4.9兆円)と試算しており、2018年には世界初となる孤独担当大臣のポストを新設しました。

孤立や孤独化によって苦しんでいる個人が増えているという研究も発表されています。2010年に米国で行われた調査では45歳以上の1/3が孤独を感じており、2017年にHarvard Business Reviewに掲載された記事では公衆衛生局長官​​のVivek Murthy氏は孤立や孤独が健康状態に悪影響を及ぼしており、1日15本のタバコを吸う行為と同じぐらいの悪影響が見受けられるとも発表しています。

世界中で孤立や孤独化が注目されており、日本では2021年2月に英国に次いで世界2番目の孤独・孤立対策担当大臣が任命されました。

日本では他の先進国に比べても孤独と感じている人の割合が多く、ユニセフが2007年に発表したOECD諸国における子どもの幸福度調査では「自分は孤独である」と感じる15歳の子どもの割合は29.8%となっており、2番目のアイスランドの10.3%を大きく引き離し独走状態です。

また孤立しているのは子どもだけではなく大人も同じ課題を抱えています。2005年に発表されたOECDの社会的孤立に関する調査では仕事以外でスポーツや教会、地域の活動において友人や職場の同僚と交流があるかという質問に対して日本は「めったにない」や「全くない」と答えた割合が15.3%となり、調査された21ヵ国の中ではもっとも高い数値でした。

孤立や孤独化が進んで人との繋がりが薄くなっている社会的背景や多様な生き方が可能な現代社会だからこそ相談ができる仲間やお手本となる人と繋がりをもつメンター制度等が注目を受けているのかもしれません。

国際的な意識調査でも近年注目される幸福に関して気になる方は下記をご覧ください。

企業側の課題:雇用制度の変化・人材育成

上記の社会背景に加えて、企業側では終身雇用制度の崩壊、労働時間の短縮、人手不足などの多様な課題が重なり、今まで行ってきたように時間をかけて新人を育てることが難しくなっています。

また若手社員側からみると、以前のように上司や先輩に相談できる機会が少なくなっており、自分自身がどのような選択を行い、どのように成長していきたいのかが描きづらいと感じている人もいます。

上記のニーズに応えるために、直接の上司と部下という関係性ではなく、数年先の他部署や他部門の先輩と若手社員や新入社員をつなげる斜めの関係性でメンター制度をとっている企業も増えています。

メンターは数年先の先輩として企業に属しているため、業務的なアドバイスや企業で大切なスキルやマインドについて教えることができるだけではなく、若手社員にとっては自身のキャリア形成を行う上で大切なお手本となる存在です。

日本では高島屋やネスレ日本、キリン等の大手企業がメンター制度を導入していることを公開しています。

企業や教育の変化については「Society 5.0の時代」についてまとめたリンク先の記事も参考になります。

3. 教育現場やNPOで活躍するメンター

メンター制度は企業だけではなく、教育現場や社会的課題に対しても活用されています。

ビッグブラザー・ビッグシスター

ビッグブラザー・ビッグシスターとは1904年からメンターと子ども達を繋ぐ活動を行なっている米国のNPOです。100年以上にわたり活動を行なっており、対象は5歳以上の子どもで特に貧困や困難な状況にいる若者と20歳以上のメンターを繋げています。

片親であったり、貧困状況にいる対象者は孤立・孤独化しやすい傾向があり、対象者のお手本となる大人を紹介することで社会との繋がりや目標ともなりうる生き方を見せることができます。

メンターとして多くの大学生が活躍しており、対象者と同じような困難な状況を経験してきたメンターやメンターを紹介してもらった経験がある人も多く存在します。

日本での事例

日本でも上記で紹介したビッグブラザー・ビッグシスターのような活動を行なっている団体が複数存在します。

また、NPO等の社会的活動以外にも大学でメンター制度を活用している大学も存在します。

親元や高校時代を過ごした地域から離れて初めての寮生活や一人暮らしを始める期間は孤独や孤立しやすい状況です。

またバイトを始めたり、今までは1日の始まりから終わりまで学校にいなくてはいけなかった生活よりも柔軟な学校生活に取り組んだり、たくさんの変化を向かえる中、お手本となる先輩や信頼して相談できる相手がいることはとても役立ちます。

同志社女子大学ではビッグシスター制度として、入学前に新入生を上級生と繋げており、新生活への不安の解消を試みています。

4. まとめ

今回の記事ではメンター制度に関してご紹介しました。孤立や孤独が進んでいる社会背景や企業が抱えている課題からメンター制度の取り組みが注目を受けています。

上記にも記載した通り、制度にならいメンターとなるケースもありますが、周りにいる後輩や仲間の相談に乗ったり、アドバイスをする中で既に本人の自覚なしにメンターとして活躍している場合もあります。

みなさんも孤立や孤独を少しでも感じている場合は周りに助けを求めてみたり、またはそのような方々が周りにいれば相談に乗ってみたりしてみてはいかがでしょうか。

相談に乗ることと関連して、いま注目されている「コーチング」についてもリンク先から詳しく読めます。