石川 麻衣子 (いしかわ まいこ) 一般社団法人Kids Code Club 代表理事

Next Education Award 最優秀賞 受賞~石川麻衣子さん~

Next Education Award(NEA)とは「今後世界が迎える課題を解決する人は現場から生まれる」という信念のもと、そのような子供を育む教育をしている教育者にスポットライトをあてて表彰する制度です。 一般財団法人活育教育財団が主催し、2021年度からスタートいたしました。

2021年12月に応募を開始し、約2ヵ月という短い期間で数多くの方々にご応募をいただきました。1次の書類審査、1.5次の録画面接、2次のオンライン審査を経て、最終的に10名の方がファイナリストに選出されました。

2022年5月1日に行われたファイナル(最終審査)では、最優秀賞2名、特別賞3名の計5名の方が受賞する結果となりました。今回は、最優秀賞を受賞された一般社団法人Kids Code Club代表理事の石川麻衣子さんにインタビューをいたします。

「NEA」についてはこちらをご参考ください。

手探りで進んできたKids Code Club

ー今回NEAに応募いただいたきっかけを教えてください。

石川:知り合いにNEAのことを教えてもらったのがきっかけでした。実はここ数年は人前で話すことを控えていたんです。

というのも、2016-2019年頃までは積極的に団体のことをお話させていただいていたのですが、目の前の子どもたちに集中するためにあえてその機会を減らしました。

その結果少しずつ成果が出てきて、子どもたちの変化も見られるようになりました。この事実を多くの方に知ってもらい、自分たちの活動内容に対してフィードバックをいただきたいと思うようになりました。そんな時にNEAのことを知り、「これはチャンスだ!」と思い応募いたしました。

私達の活動はプログラミングを教えることがメインのため、教育業界でご活躍されている審査員の方達に聞いてもらえる機会など滅多にありません。応募対象が学校関係者向けだと思っていたのですが、民間事業である私が応募できたのはとてもありがたかったです。

プログラミングも含むような、授業に活用できるPBL(Project Based Learning)について、下記リンク先から読めます。

ー最優秀賞を獲得されてどのように感じていますか?

石川:とても嬉しく、自信になりました!今までKids Code Clubは、メンバー全員で意見を出し合い、協力しながら手探りで進んできました。このような素晴らしい賞を受賞でき、「今までやってきたことは間違いではなかったんだ!」という確信を持つことができました。

今回の受賞をメンバーに共有した際、全員が心から喜んでくれ、私自身今まであきらめずに続けてきて本当によかったと思いました。受賞後あきらかにメンバー達が自信がついてイキイキしているように感じています。

また受賞に限らず、最後にファイナリスト10名の方と審査員の方との交流会があったこともとても良かったです。私は今までプログラミング関係者との交流が多く、教育関係者の方とお話をする機会が乏しかったんです。

教育関係者の方のプレゼン内容や交流を通して、私が想像していたよりも先生たちが定められた範囲の中で創意工夫をしながら授業をされていることを知り、とても勉強になりました!

全ての子どもたちが等しく学べる場所を作る

ーKids Code Clubが取り組んでいる活動内容を教えてください。

石川:Kids Code Clubでは大きく分けて4つの取り組みがあります。

一つ目は、「放課後プログラミングクラブ」というもので、週2日(火曜・金曜の夕方)約40-50人の子供たち同士がプログラミングを教え合うという内容です。今回はこちらの実践を中心に応募させて頂きました。

二つ目は、「英語で学ぶコンピューターサイエンス」というシアトルのIT企業で活躍するエンジニアに、英語でコンピューターサイエンスを教えてもらうプロジェクトで、米国シアトルのNPOや複数の企業・学校などとタッグを組んで実施しています。不定期で週末の午前中に開催しており、1回の開催で約120人ぐらい参加しています。

三つ目は、「親子で1分間プログラミング」というプロジェクトです。こちらも不定期で週末の午前中に開催しており、シアトル在住の元マイクロソフトの方から親子向けに、Javascriptのコーディングを教えてもらっています。「キッズTA」という、他の子どものテキストコーディングへのステップアップをサポートできる子どもを育成する制度も設けています。

四つ目は、「パソコン・Wi-Fiの無償貸出」です。こちらはひとり親などの低所得者層向けのもので、就学支援・生活支援・食料支援を行っているNPOの方々と連携して行っています。ただ単に機器を貸し出すだけではなく、上記の3つの学習機会とセットで提供しており、プログラミングに少しでも触れてもらう機会を増やしています。現在は30世帯の方が利用されておられます。
この4つの内容全ては「無償」で提供しているものになります。

ーなぜ無償で提供されようと思われたのでしょうか?

石川:私自身、貧困のため大学の学費を払えずに中退し、学ぶことを諦めた経験があります。そのため、家庭環境に関わらず全ての子どもたちが等しく学べる場所を作りたかったんです。

大学中退後はずっとワーキングプア状態で、苦しい生活を続けていました。

そんな時に友人から古いパソコンをもらい、暇さえあれば試しに色々触っていたんです。

その頃から「いつかウェブ制作やIT関連で生きていきたい」と思うようになりました。職は転々としていたものの、起業することを夢見て、働きながら独学でWeb制作の技術を学び続けました。

できることがどんどん増えるのが面白くて、夢中になりました!その後、たくさんの方の支援をいただきながら、3年かけて、技術者としてようやく自立することができました。

また自身に子どもができたこともあり、「子どもの貧困」という問題に向き合いたいと強く思うようになりました。子どもの貧困に関する課題は色々とあるかと思いますが、私にできることは何かと考えた結果、「ITを通して貧困解決の手助けができるのでは?」と考えました。

多くの方のサポートや支えがあったおかげで今の私があるので、今度は自分が将来を担う子どもたちに恩返しをしたいという想いが日に日に強まりました。

その後は、ボランティアで単発のイベントを年に数回行うようになったのですが、子どもたちが継続して学ぶ場がないという課題にぶつかりました。

また世の中にプログラミングを学べる無料教材はたくさんあるのですが、それだけでは子どもたちがやる気になったり夢中になったりするのは難しいと感じるようになりました。大事なのは、「共に学び合う仲間の存在」だということに気付きました。

コロナの感染拡大が広まる中で、家で孤立している子どもたちのために、場所に制約のないオンライン上でそのような場を作ってみようと思い立ち、「放課後プログラミングクラブ」という事業を始めました。

ここでは大人が一方的に教えたりはしないので、「教えないプログラミング教室」と呼ばれており、分からないことがあったら質問をしたり、完成した作品を見せ合ったりしながら、子どもたち同士が教え合い、学び合う場所になっています。

プログラミングはトライアンドエラーを何度も繰り返すため、成長や成功体験を感じられるのに最適なプログラムだと感じています。

何かを始めても続かない、「継続するためのコツ」についても下記リンク先で紹介しています

学習科学を学び誰もがアクセスできるインフラを作りたい

ー今後の目標について教えてください。

石川:今後は規模をより大きくしていきたいと思っています。具体的には、3年後までにKids Code Clubの登録者数を1万人にしたいと思っています。今は4つの事業合わせて1000人ほどの登録なので、その10倍を目指すことになります。

規模を大きくしたい理由は、プログラミング学習の場を「誰もがアクセスできるインフラ」にしていきたいからです。無償でプログラミングが学べる場所はまだまだ少ないのが現状です。

世界中のどんな家庭環境の子どもでも、仲間とともに無償でプログラミングを学び続けられる場所をもっと多く作りたいというのが今の私の夢です。

また私自身が自分の感覚や思い込み、経験から居場所作りをするのではなく、「学習科学」などの根拠がある学びを通して、どのような学習環境が自発的な学びに繋がるのかなどを科学的に探究することも合わせてやっていきたいと思っています。

「学習環境」について、「システム」や「学ぶ人との関係性」に注目した学習環境理論などをリンク先のブログで紹介しています。

編集後記

石川さんからはご自身の体験を踏まえて、多くの子どもたちに無償で学べる場を提供したいという強い思いが伝わってきました。

またそんな石川さんの熱い想いに共感するようにたくさんの方が周囲に集まることで、4つの事業を無償で多くの子どもたちに提供できていることも分かりました。

経済格差が広がり、子どもの6人に1人が経済的に苦しい状態で生活をしていると言われている中で、深刻化する子どもの貧困に歯止めをかけていくためには、石川さんのような活動が今後非常に大切になってきます。

今後の石川さんのご活躍を心から応援しております。インタビューにご協力いただきありがとうございました!

石川さん以外のNEAのファイナリストの背景や取り組みについて知りたい方は下記の記事をご覧ください。