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地域の未来を担う人材をどう育てる?人材活躍を推進するには?~地方創生における人材育成・活用

「私たちが住む地域をより豊かにしていくために、地域の未来を担う人材をどのように育てていくべきか?」

人口減少・超高齢化という日本が直面する大きな課題に対し、国が一丸となって進めている地方創生。この地方創生の中でも、「地域で人材を育成し、地域での人材の活躍を推進する」ことが非常に重要視されています。地域の未来を担う人材を育てることは当然ながら、活躍しやすい場を醸成していくことで、地域外から人材を呼ぶ手段にもなり、結果として地域の活性化が循環していくためです。

本ブログでは、具体的な事例を交えながら、地方での人材育成・活躍の場づくりについてご紹介していきます。

もくじ
1. 地方創生とは?
2. 事例①島根県隠岐郡海士町:廃校の危機から生徒数が2倍へと増加した、離島の隠岐島前高校の取り組み

3. 事例②徳島県名西郡神山町:地方創生の聖地、神山町の取り組み
4. まとめ

1.地方創生とは?

地方創生は、2014年12月に閣議決定された「まち・ひと・しごと創生長期ビジョン/総合戦略」という政策に関連して用いられた言葉で、将来にわたって「活力ある日本社会」を維持するため、地方と東京圏がそれぞれの強みを活かし、日本全体を引っ張っていくという意味合いを持っています。

第2期「まち・ひと・しごと戦略」に入った2021年現在では、以下4つの基本方針と、2つの横断的な目標が掲げられています。

・基本方針:
 1. 「稼ぐ地域をつくるとともに、安心して働けるようにする」
 2. 「地方とのつながりを築き、地方への新しいひとの流れをつくる」
 3. 「結婚・出産・子育ての希望をかなえる」
 4. 「ひとが集う、安心して暮らすことができる魅力的な地域をつくる」

・横断的な目標:
「多様な人材の活躍を推進する」
「新しい時代の流れを力にする」

このような方針の元、島根県の離島・海士町にある隠岐島前高校では、地域の課題を発見し解決に挑戦していく授業を導入しながら、地域全体で学校を改革することで、県外からの応募生徒を増やし、廃校寸前から生徒数応募数が2倍にまで増加した、というような成果も出てきています。

また、サテライトオフィス誘致などで移住者を増やした徳島県神山町のような、独自の地方創生事業を展開し新たな動きを見せる自治体も出てきています。神山町では新しく高等専門学校設立の発表もされています。

これからの日本、特に地方において、より良い人材育成を行うことや、人材が活躍しやすい土壌を作ることは、地方創生において大きな役割を占めることがわかります。
では、地方における教育・人材育成・人材誘致などについて、具体的にどのような取り組みを行っていけば良いのでしょうか?
参考として、具体的な地方創生における事例をご紹介します。

2.【事例①】:廃校の危機から生徒数が2倍へと増加した、離島の隠岐島前高校の取り組み

島根県立隠岐島前高校(以下「島前高校」)は、海士町大字福井にある全日制普通科共学の公立高等学校。島根県の北60キロ、日本海に浮かぶ隠岐諸島の島前地域(西ノ島町、海士町、知夫村)では、家から通学できる唯一の高校です。

現在は、生徒数の増加もあり活性化している島前高校ですが、以前は全国の離島や中山間地域と同様、廃校の危機に陥っていました。

「高校がなくなること」への危機感から、2008年より島前高校と島前三町村(西ノ島町、海士町、知夫村)の行政・議会・中学校・保護者・同窓会から構成される「隠岐島前高等学校の魅力化と永遠の発展の会」を発足させ、島外からも生徒が集まる学校づくりを目指す「島前高校魅力化プロジェクト」を開始。「島留学」をキャッチコピーとして2010年度から全国募集枠を設定して県外生受け入れを開始し、島根県ならびに中山間・離島地域での全国募集の先駆けとなりました。

島前高校の生徒増成功を受け、島根県の公立高校では積極的な県外生受け入れを行い、現在は多数の公立・県立高校まで県外生募集を拡大しています。

特色1、地域課題探究教育

島前高校の生徒たちは、地域に実在する課題にチームで取り組むことで、地域に対する愛着を持つだけでなく、地域の一員として何ができるかを考え、他者とつながりながら物事を解決することを体感的に学んでいます。学びの場は授業だけではなく、地域の祭りや清掃活動、保育園や福祉施設でのボランティア、行動範囲の全てを学びと繋げられています。

特色2、グローバル×ローカルな学びの場

ブータンやロシアをはじめとする世界の国々と交流していて、地域に飛び出す機会はもちろんのこと、地域から飛び出す機会も数多く用意されています。海外研修では自分たちの地域の課題について、海外の大学生にプレゼンテーションする機会が設けられ、地域からの視点だけでなく、グローバルな視点で物事を捉える機会が提供されています。

特色3、充実したキャリア教育

地域の仕事人や起業家に加え、世界中の様々な分野で活躍する講師を迎えての特別授業や、体感型ワークショップなどを通して多様な生き方、働き方、価値観に出会い、視野を広げています。

特色4、学校と連携した公立塾

学校と連携した公立塾「隠岐國学習センター」。多くの生徒は学校での活動後、そのまま学習センターへと向かいます。ここは全国から集まった多彩な講師陣がいらっしゃり、主体的に自ら学ぶ力を育む「自立学習」と、対話や実践を通して自分の興味や夢を明確にしていく「夢ゼミ」の2つの特徴的なカリキュラムから構成され、生徒たちの進学に向けたサポートまで行っています。

島前高校は、上記のような独特でかつ地域と強く連携した活動を通して、廃校寸前校から全国から応募が集まる人気校となりました。

このような成果を受け、2018年から全国から生徒を募集している公立高校向けの留学支援事業である「地域みらい留学」も立ち上がっています。

地域における人材育成の重要さを理解し、地域とともに学校を改革し、長期的な視野で地域の発展を考えられる人材を呼び込む土壌創りが、今後の地方創生の在り方のひとつのモデルになっているように感じます。

3.【事例②】:地方創生の聖地、神山町の取り組み

徳島県神山町(かみやまちょう)は、徳島県の中部、吉野川の南側に並行して流れる鮎喰川上流域に位置する町。神山町は地方創生の「聖地」のような場所で、地方創生のロールモデルとしてたびたびメディアでも取り上げられ、多くの視察者が訪れ、移住者も集っています。

今では想像できませんが、実は1970年代以降は若者たちの町外への流出が止まらず過疎化に悩んでおり、10年前の神山町は、いわゆる限界集落でした。

しかしこの10年間で、多様なスキルを持った人たちが続々と移住するようになり、さまざまなプロジェクトが立ち上がっています。都市のITベンチャーも新たな働き方を模索し、サテライトオフィスを開くようになり、2010年以降ですでに計16社以上の企業が神山に集積しています。

なぜ徳島の限界集落に、これほどITベンチャーやスキルフルな人たちが集うのでしょうか?神山町の変遷を簡単に時系列でご紹介します。

1999年、アートを軸にしてまちづくりを行う『神山アーティスト・イン・レジデンス事業』がスタート。“国内外のアーティストを過疎のまち・神山に呼んで作品づくりを住民とともに行う”という前例のないアイデアが注目を集め、外国人アーティストの間でもその評判が伝わったことから、神山町の名前は“過疎のまち”から“国際交流のまち”として認識されるようになりました。

この活動の成果を受け、2004年にNPO法人『グリーンバレー』が設立。アート・イン・レジデンスをはじめとして“神山町をステキに変える”をコンセプトに掲げて活動を行っていたら、徐々に移住希望者が増えてきました。

2010年、神山町のユニークな取り組みに着目した東京のITベンチャー企業が、町内の古い空き家を改装してサテライトオフィスを開設。川辺の岩場にのんびり腰掛けながらノートパソコンを開いたり、オンラインミーティングをする姿が様々なメディアで紹介されると、“新しい働き方ができるまち”として注目を集め、今度は「神山町にオフィスを置きたい」「神山町で新会社を設立したい」といった企業が続々と名乗りをあげはじめました。

現在、神山町内には、働く場所を選ばないIT・デザイン・映像関連の企業を中心として多くの会社のオフィスが存在します。社員やその家族といった移住者も増え、仕事が人を呼び、人がさらに人を呼ぶ、『地方創生モデル』の循環が生まれています。

人材の育成に関しても、大きな動きが出てきています。

神山町に2023年、私立の高等専門学校「神山まるごと高専」が開校することが発表されています。もし、これが実現すれば20年ぶりに日本に新しい高専ができることになります。

まるごと高専の生徒たちが学ぶのは、テクノロジー×デザイン×起業家精神。

「手を動かしてモノをつくり、それを社会に問う」

それが、正解のない時代に求められる力であり、言い換えればそれは、どんな状況でも、どんな場所でも自分で生き抜ける力である、と定義されています。

高いレベルの創造スキル、社会と向き合い他者と関わる力を武器に、自分の人生の舵を取る起業家としての姿勢を併せ持つ魅力的な学生が育つ場所にしていくそうです。2023年の開校が楽しみですね!

神山町は地方創生の聖地と言われていますが、20年以上という長い時間をかけて、しっかりと今の形を成して来られたのが感じられます。地域に根ざして活動してきた方々が、時間をかけ、その地域の活性化や人材育成に取り組むと同時に、その地域の発展に資する人材を呼び込む土壌を創られ続けた結果、今の神山町の形になっているようです。

ここにまたひとつの地方創生のモデルがあるように感じました。

4.まとめ

東京圏(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県)への転入超過数を見ると、増加傾向は大きくは変わっておらず、東京一極集中や地方の人口減少にはまだ歯止めはかかっていません。特に20・30歳代の移動が顕著で、依然として進学・就職・転職による若者の移住が東京一極集中の大きな要素となっているようです。

一方、2020年4月以降東京圏への転入超過数は前年同月比でみると微減ではありますがマイナスで推移しています。2020年7月には、2013年7月以降初めての転出超過となりました。https://www.mlit.go.jp/kokudoseisaku/content/001362551.pdf

このような流れを見ても、コロナウィルスの影響もあり、地方への移住やワーケーションへの注目度が高まっているのも事実のようです。

今回ご紹介した島前高校や神山町の事例は、地方創生の大きな波の先駆けとなってくれているように思います。またこれは海士町や神山町が特別な地域だからできた事例ではなく、日本全国における他の地域でも、皆で協力して取り組めば実現できることなのかもしれません。

「学ぶこと」、「働くこと」、それらは「生きる力」全般に通じるものです。このようなマインドやスキルを養うには、学校などの場をベースとした諸機関、人的ネットワークのつながりが非常に重要になると考えます。学生時代に培った人的ネットワークは、生活に密接につながった地元ネットワークとなり、生涯「切れにくい」つながりとなるでしょう。例えば将来いつか若者が起業するようなタイミングが来たときに、地域を基盤とした縦横のつながりが起業家の大きな社会関係資本となり、将来その地域に貢献する企業が立ち上がるかもしれません。

また、地域には商業、工業、農業、水産などの専門学校も多く残っています。そこでは、地域産業に関係する人たちとのネットワークが形成されており、地域産業に特化した課題解決などの使命があり、身近な起業家学習にもつながりやすいです。地域では、そうした実践的な問題解決のプロセスを身近に学ぶことができます。この、地域の社会関係資本が形成されやすいというのも、地域そのものが持つ可能性と言えると思います。

今、我々が取り組むべき課題は、地域での学校、事業者、産業支援機関、金融機関、行政機関など、様々なステークホルダーとの「地域つながりづくり」であり、そこに社会との関係性を学ぶ「学び続けるコミュニティ」が持続的に形成されることではないでしょうか。

各地域一体となって、長い時間をかけてでも、地域での人材育成に取り組み人材の活躍の場を創り、地方創生に皆で取り組んでいくことの意義を、再度見直してみるきっかけになれば幸いです。

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