自分が抱えている課題を解決したい時や、今よりも自分自身を成長させたいと思った時には、他人からもらえるフィードバックを頼りにすることは多いと思います。

先生であれば生徒の学習状況に対してフィードバックをするでしょうし、スポーツのコーチであれば選手のプレーに対してフィードバックをしているでしょう。

意識的にフィードバックをしている感覚はないかもしれませんが、保護者も子どもが家での約束事が守れているかどうかに対してフィードバックをしています。教室でも、生徒同士が教え合う形でフィードバックをする場面はよくあります。

あらゆる場面で普段何気なくしているフィードバックですが、日常的に使われている物だからこそ、その効果は最大限に使いたいところです。

今回のブログでご紹介するフィードバックに関するアイディアを意図的に活用することで、より相手の成長を促すフィードバックをすることが出来るようになります。

主に先生が使えるフィードバックを想定した内容になっていますが、保護者にも使える内容になっていますので、ぜひ試してみて下さい。

もくじ
1: なぜフィードバックをするのか?フィードバックの定義と重要な要素
2: 効果的なフィードバックをするために大事なポイント
3: フィードバックを使って成長を促す環境を作るには?
4: まとめ 

1: なぜフィードバックをするのか?フィードバックの定義と重要な要素

まず、フィードバックがなぜ成長や学習に効果的なのかを考えていきましょう。

フィードバックに関する研究は多方面で行われており、フィードバックに対する定義や説明が多少異なります。そこで、いくつかの研究論文で使われているフィードバックの定義や説明を取り上げて見ていきましょう。

HattieとTimperley(2007)の研究より
フィードバックは自分のパフォーマンスや理解に対して与えられる、パフォーマンスを修正する為の情報、代用案、考えを整理するのに役立つ情報、モチベーションを高める心理的な支援、自分自身で調べた取り組んでいる問題に対する答え、といった情報である。

フィードバックは現在の自分の理解とこれから学習すべき内容のギャップを埋めるための、学習課題や学習プロセスに関係した情報であり、努力、モチベーション、学習への没入度合いなどの学習のプロセスにも影響を与える。

フィードバックそのものはティーチングのプロセスであり、フィードバックとして与えられた情報をもとに学習態度が変わった結果、学んでいる事への理解が深まると考える。

Nicolら(2006)の研究より
フィードバックは生徒の学習やパフォーマンスの目標や学習における基準に関係した情報であり、主に知識のアップデート、取り組み、課題へのモチベーション、の3つに影響を与える。
主体的に学習する態度を身につけている生徒は、先生からフィードバックをもらう前に、自分で自分に対してフィードバックをしている。

学習者の課題や目標達成に関連していない、情報が難しくて理解できない、情報が多すぎて処理できないなど、学習者が有益さを感じられないフィードバックは効果が薄い。

このように、フィードバックに対する説明は三者三様ですが重要な点を取り上げると、

1) 学習者が学習や上達を促すために取り入れる情報である
2) 今現在行っている自分の学習や取り組んでいる目標に関係した情報である
3) フィードバックによって行動が改善された結果、学習効果やパフォーマンスが上がる

の3つがフィードバックを理解する上で欠かせないポイントになります。

2: 効果的なフィードバックをするために大事なポイント

では、どのようなフィードバックをすれば学習の効果を高められるのでしょうか?

(1)相手の達成したい目標や解決したい課題を理解する

フィードバックは受け取る側にとって役に立つ情報であることが大前提になります。

ここで言う「役に立つ情報」とは、「相手が達成したい目標到達の手助けとなる情報」、「今抱えている問題を解決するヒントとなる情報」「困難だと感じる課題に取り組むモチベーションが湧くような情報」と言い換えられます。

つまり、相手の目標や課題を理解することが、フィードバックとして本当に求めている情報を選ぶ上で役に立ちます。

例えば、テストの返却の際に「この文章問題はゆっくり読めば解けるよ」と間違えた問題に対してフィードバックしたとします。しかし、生徒が問題文で何を求めればいいかが分からなかったので、「問題をゆっくり読む」というフィードバックはあまり役に立たないフィードバックでした。

このようなケースでは、先生のフィードバックは生徒が本当に求めていた情報を伝えていないので、的外れなフィードバックになっています。

このようなフィードバックのズレを防ぐために、フィードバックを相手にする前に、相手の目標や克服したい課題を聴いてみることで、自分が伝えたい情報ではなく、相手にとって必要な情報を選びやすくなります。

(2)フィードバックをする回数を減らして、要約した情報を渡す

フィードバックの頻度が高い先生や、生徒が気づく前に先回りしてフィードバックをしてくれる先生に対しては好印象を持つ人が多いのではないでしょうか。

しかし、フィードバックの原則として、頻度が高すぎるフィードバックは学習効果を損ねてしまうことが過去の研究で明らかになっています。これは多すぎるフィードバックによって、生徒の受け取る情報が多すぎて処理しきれない、自分で試行錯誤する機会がなくなってしまう、などの影響が考えられています。

そこで、情報を受け取りやすい量にして生徒が試行錯誤する時間を設けるために、ある程度自分で課題に取り組んだ後に、取り組み全体を通して大事なポイントを要約した情報をフィードバックとして渡すことが効果的です。

例えば、計算問題を解いている様子を見ていて途中式を書かずに問題を解いている生徒を見かけたとします。

その時に、見つけた瞬間に手を止めさせて「途中式書いてないよ」とフィードバックしてしまうのではなく、一通り問題を解き終わった後に「この計算練習をしている時に、途中式を書かずにといた問題はミスしている事が多いね」と伝えるのが要約された情報です。

このように、要約された端的なフィードバックをすることで、生徒が受け取りやすい核心を突いた情報を伝えることが出来ます。

3: フィードバックを使って成長を促す環境を作るには?

ここからは、前述のフィードバックの原則やアイディアを用いて教育場面でフィードバックを活用して成長を促す環境を作る方法を考えていきます。

過去のブログでご紹介したアクティブリスニング・スキルや心理的安全性などのアイディアを併せて使うとより効果的ですので、そちらもご参照下さい。

学習活動の目的や目標を活用する

先生と生徒間で生徒の目標や取り組んでいる課題が共有されていると、先生の思い込みで選んだ的外れなフィードバックを減らし、生徒が求める情報を提供する事ができます。

大きく分けて、生徒が目指す目標と今現在取り組んでいる解決したい課題の2つが把握出来ていると、渡す情報の準備も出来て生徒が必要としている情報を渡すこともできます。

この時に、アクティブリスニング・スキルを活用すると生徒の話を理解する姿勢を持ちやすくなります。

もし、グループディスカッションでフィードバックを活用するには、生徒同士でフィードバックをし合う機会を作るのも効果的です。

その際に、あらかじめどのような内容についてフィードバックをするかをまとめておくと、ディスカッションを通して身につけたいスキルや内容に対する情報が共有しやすくなります。

例としては、下記のようになります。

ディスカッションを通して身につけたいコミュニケーションスキル
・大きく相槌を打って相手の意見を尊重する姿勢で聴く
・相手の説明が分かりにくかった時に、自分の理解を要約して相手に確認する

ディスカッションを通してチャレンジして欲しいこと
・答えが1つだけではない問題を解決するために、必要な意見を出し合う
・出てきたアイディアを使って、課題を解決出来そうな方法や手段を考える

このように、グループディスカッションで求められている事を事前に共有することで、ディスカッション後の振り返りの時に、どんな内容についてフィードバックすればいいかが明確になります。

要約したフィードバックを活用する

全体に向けての一斉授業の際に、一人ひとりの生徒に細かくフィードバックできれば理想的ですが、労力と時間が非常にかかってしまいます。

しかし、出した課題の1つ1つに対してフィードバックをする事が効果的かというと決してそうとは言い切れません。むしろ、情報過多になってしまい自分の成長へ生かしきれない可能性の方が高いです

そこで、大問毎にもしくは課題全体を通しての要点をまとめたフィードバックをすることが効果的なフィードバックの方法の1つとして挙げられます。

例えば、数学の課題全体を通して計算ミスが目立つ生徒に対しては、計算ミスを減らすためのポイントをフィードバックとして伝える方法が考えられます。

落ち着いて計算すれば問題ない生徒に対しては、計算時に注意するポイントを伝えればいいでしょうし、基本的な計算力が不足している生徒に対しては計算練習の方法がフィードバックになるでしょう。

もし、時間が許すのであれば、先生側がまとめた情報を一度生徒に伝えて生徒との理解にギャップがないか確認すると、より正確なフィードバックをすることが出来ます。

この方法は、保護者が家庭学習や習い事の宿題などを家庭で見る時にも有効活用できます。

近くで子どもの宿題や勉強を見ていると、つい声をかけるタイミングが増えてしまうと思います。そこで、子どもが一通り取り組んだ後に取り組み全体を通して伝えるべきポイントを要約しておき、子どもの宿題や勉強が終わったタイミングで伝えてあげましょう。

端的に重要なポイントが示されると、子どもも受け取りやすく勉強している最中に自分で取り組む時間も増やす事が出来ます。フィードバックを伝える前に、子ども自身に取り組んでいる時の様子を親から尋ねながら振り返るとより効果的です。

サンドイッチ方式のフィードバック

こちらは、フィードバックをする際のテクニックです。伝えたい課題や改善点をポジティブなフィードバックで挟むことから、サンドイッチ方式と呼ばれています。

フィードバックをする時には改善点を伝えることも多く、内容や伝え方によってはネガティブな印象を与えてしまったり自分が思っているより厳しく伝わってしまうこともあります。

もし、改善点を伝えたい時には、

1)最初に良かった点を伝える
2)次に改善点を伝える
3)最後に改善点を克服出来るような前向きな言葉をかける

の3ステップで改善点を伝えると、改善点をポジティブな印象で伝えることが出来ます。

改善点を伝える前に、改善点が良く慣ればさらに引き立つような良かった部分を伝えておくことで、少し受け取りにくい改善点を受け入れやすくすることが狙いです。そして、「ここが良くなればもっと成長できる」と最後に背中を押して前向きに終わるようにします。

英語のテストを想定して例を挙げてみます。

1)「今回の英語の文法問題はいい出来だったね。」
2)「少しもったいなかったのは、文法問題の中であった単語のミスだね。」
3)「次のテストまでに単語をもっと身につけておくと、得意の文法問題での取りこぼしが減るね。頑張って!」

このように伝えられると、改善点に対して前向きに捉えられると思います。

グループワークなどの生徒同士でフィードバックをし合う場面では、サンドイッチ方式のフィードバックをする事をルールにすることは効果的だと考えられます。

生徒同士で意見を出し合う場面では、意図せず言葉足らずになってしまい相手に不快な思いをさせてしまうことも考えられます。

サンドイッチ方式のフィードバックをルールにしておくことで、意図的にポジティブなフィードバックを増やし相手を不快な思いをさせる事も防ぐことが出来ます。

ただ、言葉で伝えるだけでは不十分ですから、先生と一緒にサンドイッチ方式のフィードバックの仕方の何度か練習してから行うのがいいでしょう。

4: まとめ

フィードバックは、学習者が目指す目標を達成するために必要な情報であったり、今抱えている課題解決に必要な情報です。その得た情報を活用して学習方法や取り組む姿勢を改善した結果、成長が促されていきます。

フィードバックを効果的に使うには、フィードバックをする相手が目指す目標や解決したい課題を知ることが重要です。相手が何を求めているかが分かって初めて、相手が求めている情報を的確に伝えることが出来ます。

理想的なフィードバックを伝えるタイミングは、相手がフィードバックを求めてきた時です。もしフィードバックを伝えるのであれば、一定の学習内容や取り組んだ様子を要約したフィードバックが効果的です。反対に、事ある毎にしてしまうフィードバックは学習効果を下げてしまいますので注意が必要です。

今回ご紹介したポイントを共有しながらフィードバックを伝え合う環境を作ることで、お互いに成長を促すことが出来るようになります。

改めてになりますが、フィードバックが活きてくるのは目標や目的に役に立つからであり、目標に対して行動を起こせるから成長するとも言えます。

そして、どの程度成長したかが分かるからこそ成長の実感を得ることが出来るのですが、その成長をどのように評価するかはあらゆる学習場面において課題になっていることが多いように感じます。

参考文献

Hattie, J., & Timperley, H. (2007). The power of feedback. Review of educational research, 77(1), 81-112.

Nicol, D. J., & Macfarlane‐Dick, D. (2006). Formative assessment and self‐regulated learning: A model and seven principles of good feedback practice. Studies in higher education, 31(2), 199-218.

Schmidt, R. A., Lee, T. D., Winstein, C., Wulf, G., & Zelaznik, H. N. (2018). Motor control and learning: A behavioral emphasis. Human kinetics.

Wrisberg, C. A. (2007). Sport skill instruction for coaches. Human Kinetics.

早川 琢也

2007年東海大学理学部情報数理学科卒、2009年東海大学体育学研究科体育学専攻修了。東海大学大学院では実力発揮と競技力向上の為の応用スポーツ心理学を学ぶ。 2014年8月よりテネシー大学運動学専攻スポーツ心理学・運動学習プログラムに在籍。スポーツ心理学に加え、運動学習、質的研究法、カウンセリング心理学、怪我に対するスポーツ心理学など幅広い分野について学ぶ傍ら、同プログラムに所属する教員・学生達のメンタルトレーニングを選手・指導者へ指導する様子を見学し議論に参加する。 2016年8月より同大学教育心理学・カウンセリング学科の学習環境・教育学習プログラムにて博士課程を開始。スポーツスキルを効率良く上達させる練習方法、選手の自主性を育む練習・指導環境のデザインについて研究。2020年11月に博士号(Ph.D.)を取得。現在は、慶應義塾大学兼任研究員として選手の主体性を育める練習環境をテーマに研究を進める一方、NPO法人Compassionのメンバーとしてスポーツ心理学、運動学習、教育心理学などの学術的な理論や研究内容を応用して、子どもが未来に対して希望を持てる心のサポート活動も積極的に行なっている。