下島一晃
早稲田大学国際教養学部卒。静岡県富士宮市出身、小学校2年生から高校卒業までを米国コネチカット州で過ごす。日本に戻り、大学生時代はバイリンガル講師のみを採用する企業で英語講師を務め、社内トップ講師の一人として活躍する。2009年にはバークレイズ証券株式会社に新入社員として入社し、世界中の投資家を顧客にビジネスを行った経験も持つ。2012年からは軽井沢のインターナショナルスクール(ISAK)の立ち上げに参画し、世界中から生徒を募集するための入試広報や組織として持続的な成長を実現するための調査に基づいた組織改革の実行を担当する。ハーバード大学の発達心理学者ロバート・キーガン教授から直接トレーニングを受けている。

 

Katsuiku Academy スタッフ インタビュー③【下島一晃】

今回はKatsuiku Academyの下島一晃さんにインタビューをしました。小学2年生から高校卒業までを米国で過ごし、大学生時代は日本で英語講師としての働く中でマインドセットの重要性に気づいた過程や、金融業界から日本初の全寮制インターナショナルスクールであるUWC ISAK Japanの立ち上げに関わり、教育畑へと進んでいった経緯などを伺いました。

ーKatsuiku Academyでは現在どのようなことに取り組んでいますか?

下島:現在は中高生向けのキャンプやワークショップ、また日本の学校環境をより深く理解するためのリサーチや教育にもエビデンスベースの考え方を広げるためのブログ記事の執筆等を行っています。自分自身のライフミッションをより鮮明にするため、自らのイキイキがより具体的にどこにあるのか、試行錯誤をしている段階でもあります。

「日本人らしさ」を意識していた海外生活

ーKatsuiku Academyではそれぞれがイキイキを追求する上で、それぞれが持っている価値観やストーリーを大切にしていますが、下島さんのストーリーを聞かせてください。

下島:人生の中での大きな出来事を考えると、小学校2年生に父親の仕事関係で渡米したことが大きな転機になっています。アメリカのコネチカット州の人口2万人弱の小さな町で高校卒業までの12年間を過ごしました。

もちろん英語も喋れない状況での渡米で、周りとは身振り手振りでやっとコミュニケーションが取れるというスタートラインでした。

地元の学校に通うことになったのですが、学校の初日は現地の英語ペラペラの子どもでも親が学校まで送迎することが多い中、僕の場合は3人兄弟の真ん中っ子なのですが両親は3人ならどうにかなるだろうと思ったらしく、学校の初日からスクールバスに乗せられていました。

両親は初日の3人の不安そうな顔が今も目に浮かぶと笑いながらよく話してくれますね。

小さな町なので基本的に同級生などのメンバーが大きく変わることもなく、12年間伸び伸びと生活をしていたと思います。

大体一学年に生徒が200名ぐらいの町だったのですが、基本的に僕の学年は日本人男子が僕一人だけだったため、小学校の頃から「周りのみんなは日本のことを僕を通して知るしかないのかも、ある意味僕は日本代表なんだ」と勝手に思っていた部分がありました。

元から大人しかったり、コツコツと物事を進めることが性に合っていたこともあり、自分の中で勝手に描いていた「日本人らしさ」の勤勉さ、大人しさが更に強調された部分はあったと思いますね。

また、どこまで現地に馴染んでも部外者のままである部分も感じており、一番受け入れてもらえるコミュニティが自分の家族であり、今でも大切な存在として家族が上がるのは海外での経験が大きいと思います。

挑戦しようという想いがないと人は成長しない

教育に関わるようになったきっかけは何ですか?

下島:大学入学と同時に日本に戻ってきたのですが、大学時代はバイリンガル講師しか雇わない塾で英語を教えていました。

教えている生徒さんは主に中学の中でもトップ校と言われるような偏差値の高い私立中学校に通っている子たちが多かったです。

とても優秀な生徒さんが多く、英語の文法や単語に関してはたくさんの知識を持っていました。ただ、知識はたくさん持っているのにいざ英語で自分の意見を書いたり、話したりというアウトプットの段階になると止まってしまうことが多々ありました。

ほとんどの生徒が同じような傾向にあり、間違えてしまうことに対する恐れから挑戦することを躊躇しているのがわかりました。

ただ、半年などある程度の期間教えていくと、徐々に生徒さんたちが失敗しても問題ないんだと気づき、英語で自分の意見や考えを伝える力が一気に開花する段階へ突入し、驚くほど変わっていく様子を何度も見ることができました。

どんなに知識を持っていてもそれを活用しようという意思であったり、挑戦しようという想いがないと人は成長しないというのを目の当たりにした経験でした。

彼らを教えている中で知識を教えるだけの教育ではなく、物事に対する姿勢も含めて成長できる教育への関心がどんどん高まっていくのを感じました。

Katsuiku Academyが大切にしているマインドセット等に関わる記事については下記を確認ください。

最初の職業が教育ではなく金融だったのは理由があるのでしょうか?

下島:実は大学卒業前は教育関連でNPO等への就職も考えている時期もありました。いくつかの教育関連のNPOの代表の方々と話している中で、「想いを持ってくれているのはとても嬉しいけど小さなNPOだと人材育成にかける余裕もないし、必要なのは即戦力だ」と言われてしまいました。

また、どんなに強い想いを持っていてもインパクトを出すためにはある程度の期間を通して活動を行う必要があり、事業の持続性にはお金をどのように回すかがキーポイントになると感じていました。

ゆくゆくは自分の力で教育関連の仕事で起業をしたいとぼんやりと思っていたので、お金に関する仕事に就けばその知識も身につくであろうという想いで金融業界に興味を持ち始めたのがスタートでした。

2009年入社というのを見るとピンとくる方もいるかも知れませんが、世界金融危機とも呼ばれる時代の真っ只中で、金融業界へ就職活動を行なっていました。

入社する前には内定をもらっていたリーマン・ブラザーズが倒産し、幻の最後の内定者となってしまい、就職面接を0から再度行ったり、想定していない困難からのスタートでした。

友人や先輩方からの協力もあり、面接を繋げていただき2009年からバークレイズ証券株式会社というイギリス系の証券会社に入社しました。

金融業界から教育へ

ー金融業界からISAKの立ち上げはどのような経緯があったのでしょうか?

下島:金融業界ではたくさんの方々と出会い、多くのことを学ばせていただきました。

ただ、朝の6時には出社し、日付が変わるまで働く多忙の日々では自分が本当に何をしたいのか、どのように生きていきたいのかを悩む日々でもありました。

そんな中、同僚とランチ休憩を取っている時に本当は何をしたいのかを話す機会があり、奇遇にもお互いが教育に興味を持っていることを知りました。

僕は大学が教育学部ではなかったため、一旦海外の大学院へ進み脳科学と教育などを専門的に学ぶことも考えていることを同僚に伝えたところ、「海外で勉強するのも一つの手だけど、実際のプロジェクトを動かす方が学べることが多いのではないか」と指摘されました。

また日本国内でも面白いプロジェクトが立ち上がっていると紹介されたのが、当時日本初の全寮制のインターナショナルスクールを立ち上げようと奮闘していたUWC ISAK Japan(以下、ISAK)でした。

同僚が送ってくれたウェブサイトに掲載されていた情報は構想段階で夢物語のような学校でしたが、非常にワクワクしたのを覚えています。

ワクワクし過ぎてしまい、その晩に自分の思いやバックグラウンドをISAKへメールし、そこからとんとん拍子で気づいたらISAKで学校創りを本業として働いていました。

ーISAKではどのような活動をされたのですか?

下島:ISAKでは立ち上げに関するあらゆる業務に関わらせていただきました。その中でも主に関わらせて頂いたのが、金融業界で培った経験を活かせる資金集めや長期的な財務計画作り、学校立ち上げにつなげるためのサマーキャンプ、世界中から生徒を集めるための生徒募集です。

ISAKのコミュニティーは尊敬できる方々に溢れており、人生の中でもこんなにたくさんの素敵な仲間に出会えた場所はないと今でも感じています。

その中でも特に印象的だったのがリーダーシッププログラムを一緒に創ったDave Mochel先生との出会いでした。

マインドフルネス、脳科学、心理学などを中心にした彼のリーダーシッププログラムを通して世界中から集まってきた生徒たちが人としての在り方、自分の人生の生き方について深く考え、行動を変容していく姿を見ることができました。

また、単なる知識として情報を与えるのではなく、抽象的な難しいコンセプトを体感できるアクティビティに落とし込んでいたり、研究されたデータや裏付けを紹介していたり、振り返りを通して一人一人の生徒の気づきや学びを深まらせるプロセスには圧倒されました。

そして人間空気清浄機とはまさしくこんな人なのだろうと思わせる、あらゆる場を優しく包み込める人柄に魅了され続ける日々でした。

まさしく僕が大学時代に関心を持っていた知識だけではなく、物事に対する姿勢を教育の中心にしたプログラムとの出会いをISAKで得ることができました。

2014年には、Dave Mochel先生から直接指導を受けた上でリーダーシッププログラムをファシリテートするスキルやノウハウを伝授していただきました。

そのスキルを活用し、ISAKで行っていたリーダーシッププログラムを一つの軸とし、より多くの日本の生徒さんが自らの可能性を信じて、探求する活動を行うための姿勢・マインドセットを身につけるための教育事業を立ち上げることにしました。
ISAKの代表の小林りんさんからも応援していただき、ISAKの同僚である町田来稀と2014年にISAKから独立し、立ち上げたImaginEx(イマジネックス:Imagination + Exploration)では、様々な学校でワークショップを展開させていただきました。

マインドセットだけではなく、環境やシステムへの働きかけが必要

ーKatsuiku Academyに参画されたのはなぜですか?

下島:ImaginExではたくさんのワークショップや研修等を通じて多くの方々に物事に挑戦するマインドセット等を伝える活動が行えました。

ImaginExの活動を通じて、知識だけではなく、物事に対する姿勢・マインドセットを合わせて行う教育を展開することへの手応えやその重要性が今後もさらに増していくと感じていました。

そんな中でKatsuiku Academyの母体である 活育教育財団との出会いがあり、2017年には共同で中高生向けの宿泊サマーキャンプを行いました。

Katsuiku Academyはイキイキとした社会を作るという大きなミッションを掲げており、同じ方向性を向いている仲間がいることにワクワクしたのを覚えています。

ImaginExの活動では、個人がより多くのことに挑戦するためのマインドセットや実際の行動に変容を起こすことができていましたが、社会にインパクトを与えるためには個人だけへの働きかけでは十分ではないと感じています。

より個人がイキイキと生きていくためには、各個人のマインドセットを変えるだけではなく、彼らを取り巻く環境やシステムにも働きかけることが必要だと考えています。

まだまだ抽象的な段階ではありますが、学びを中心としたイキイキコミュニティをKatsuiku Academyでは実現していきたいと思っています。またそれが一つの形として世界中に広がっていく大きな構想を仕掛けていければと思っています。

ー最後に中高生の方に向けて一言お願いいたします。

下島:自分は何も持っていない、何もできないと思ってしまうような場面がいくつもあると思います。

僕自身はどうしても物事がうまくいかない時には自分にばかり焦点を当ててしまい、周りが見えなくなってしまうことが多いです。一人相撲をしながら勝手に物事を背負っては自分に落胆するのを幾度となく繰り返してきました。

そのような状態に陥ったしまった際に僕は「休むこと」と「感謝すること」を心がけています。

目まぐるしく過ぎていく日常の中でも、自分のゆったりとした時間を作ることで自分が大切にしたいことが見えてくるかもしれません。

焦点を自分に当てるのではなく感謝をすることで、周りの人たちとの関係性の中で成り立っている自分にも気づけたりするかもしれません。

冒頭でも話しましたが、僕自身もまだまだ自分の人生でどのようなことを行いたいか、どのように生きていきたいかを未だに考え続けています。

悩み続けるではなく、自分のイキイキや可能性を一緒に考え続ける仲間がこれからも増えていくことを願っています。

Katsuiku Academyの今後の活動の中でいつかお会いできることを楽しみにしています。

感謝することが人にどのような影響を与えるのか等に関して知りたい方は下記の記事をご覧ください。