中村 真由美
canvas代表/KID’S DAY会長

小・中・高すべての教育過程で、日本と海外の学びを体験。小3〜中1はイギリスの現地校へ。中2〜高1は日本で進学塾に通い高校受験。高2〜3はノルウェーのインターナショナルスクールで国際バカロレアを修了。国際基督教大学(ICU)に進学し、リベラルアーツ教育を受け、その後NTTドコモに就職。結婚を機に長野県に移住し、現在2人の中学生の母。英語力だけではなく、アイデンティティ・コミュニケーション力のような国際社会で必要な力を育む学びの場を作ることを目指して、canvas(英会話教室)を開校。そして、同年にKID’S DAY(子ども向けイベント)を立ち上げる。無限な可能性を持つ子ども達のポテンシャルを引き出し、世界を広げるために大切なのは、「出会いと体験の場づくり」と信念を持ち活動中。

ファシリテーションスキル研修参加者インタビュー④
~中村 真由美さん~

平成 31 年度の未来の教室の実施事業者に一般財団法人活育教育財団が採択され、実施された「ファシリテーションスキル研修」(2019年12月~2020年2月)には、全国から教育関係者48名の方が参加してくださいました。今回は長野から参加してくださった中村真由美さんの普段のご活動内容についてインタビューしました。

「ファシリテーションスキル研修」についてはこちらをご参考ください。

英語を通して自分の意見を伝え、アイデンティティを育てる英語教室を開校

ー元々は東京で働かれていたと伺いましたが、なぜ長野県大町市に移住したのでしょうか?

中村:結婚を機に長野県に移り住んだんです。ただ、東京での仕事が楽しくて、しばらくの間は長野から東京に通勤していました。その後長野支店への異動希望も叶ったのですが、子育てをしていく中で「子ども達と過ごせるのは今しかない!」と思い、退職することを決意しました。

大町はとても素敵なところなのですが、これという仕事が見つからず「ならば自分で作ろう!」と思い立ち、英語教室を始めることに決めました!

ーなぜ英語教室を始めようと思われたのでしょうか?

中村:私は元々帰国子女で、英語力には自信があったのと、地域の方の温かい応援のおかげです。

大町に移り住んだ当初は、一人も友達がおらず、都会で生活している友達がSNS上でキラキラしているようにみえて、正直憂鬱でした。自分はみんなみたいにキラキラできていない、ダメだと思ってしまったんですね。

しかし「このままではいけない!」と思い、地元の広報誌をみて、「片っ端から行ってみよう!」と思い、地域に溶け込めるように色々な集まりに参加しました。

1番最初に参加したイベントでは参加者全員が60代以上で、当時20代だった私は場違いな状況でした。しかしそこで多くの方から可愛がってもらい、地元の人の温かさを肌で感じました。本当に皆さん、優しかったですね。

また、地元の育児支援センターにも子どもを連れて通っていました。子ども達を遊ばせておくことができるので、ママ達同士が繋がってゆっくり話せるんです。その会話の中から私が英語ができることを知っていただき、教えて欲しいというリクエストをもらいました。

自分にも地域の皆さんのためにできることがあると感じられて本当に嬉しかったですね。

そして教えるなら英語力だけではなく、英語を通して自分の意見を伝える力、アイデンティティを育てる英語教室にしようと思いました。

地域における教育活動について、地域創生の人材育成と絡めた記事が下記リンク先から読めます。ぜひ併せて読んでみてください

ー「自分の意見を伝える、アイデンティティを育てる」ことの重要性は海外での経験が大きいのでしょうか?

中村:そうですね、私は小学3年から5年間イギリスで過ごし、中学2年の時に日本に帰国しました。高校2年からもノルウェーで2年間過ごし、大学で日本に戻ってきました。

小学校、中学校、高校を日本と海外の両方で暮らしたおかげで、それぞれの良さを感じることができました。

海外の学校生活では、何よりも行動を起こすこと、自分の頭で考え、自分の意見を持ち、それをしっかりと相手に伝えることが求めれます。

自分の意見を持つには、まず「Why?」と考えることから始めなくてはいけませんでした。

「なぜ学校のルールはこうなっているのか?」「なぜ自分はあの時あのような言動や行動をとってしまったのか」

ただ単に与えられる情報を受け取るのではなく、自分自身の感情や行動も含めて身近にあること全てに「why」を持ち、自分なりに物事を分析し、深く考えることが習慣になっていきました。

今思うのは、この海外での経験があったからこそ、「本当の自分らしさ」に気付くことができたのだと思います。人の意見に合わせることが多く、周囲からは何を考えているか分からないと言われていた私が、海外の経験を通してしっかりと自分の意見を持てるようになったのは大きな変化でした。

自分はどんなことが好きで、どんなことに興味関心があって、どんな時に楽しいと感じるか、自分で感じたこと、経験したこと、考えたこと、その全てが自分らしさに繋がっていくのだと思います。

そして様々な人と出会い、周りの人に受け入れてもらうことで自信を持てるようになり、自分らしさが輝いていくようになるのだと思います。

「自分らしさ」とは何でしょうか?それをひもとくキーワードが「アイデンティティ」です。アイデンティティについて下記ブログから詳しく読めます。

親の世界から離れた新たな体験と出会いを通して自信をつける

ー英語教室以外にも「KID’S DAY」というイベントを毎年夏に開催されていると伺いました。詳しく教えていただますか?

中村:はい、私は個人で英語教室を運営している他に、毎年夏にKID’S DAYというイベントを企画、運営しています。KID’S DAYを始めた理由は、さきほどお話した子ども達が持っている無限の可能性を引き出し、子ども達の世界や視野をより広げていきたいと思ったからです。

私自身が英語が好きで、今後ますます世界で活躍するには英語力が必要だと想い、自分の子どもにも英語を習わせています。他にもスキーが大好きで、子どもには赤ちゃんの頃からスキーを習わせたり、かっこいいという理由だけで空手教室にも通わせたりもしました。

親が子供に習い事をさせるときって、割と親の期待や願望、趣味などが入り混じってしまうと思うんです。

ただ、子ども達が自分らしさ、可能性を広げていくためには、親の世界から離れた新たな体験と出会いが必要なのでは?と思ったんです。

KID’S DAYというイベントは、当日会場に集まった子ども達に、その日体験できるアクティビティーを発表し、自由に体験してもらうんです。

親のバイアスがかからないように講座の種類は、イベント当日に発表して、子ども達自身に当日選んでもらうというスタイルを取っています。

2016年から始まり現在は30種類以上の講座の中から、4つほど体験できるような仕組みにしています。(1日2講座、2日間で4講座が受けられます。)

講座の種類は毎年様々で、サッカー、野球、バトミントン、SUPなどのスポーツの他、フラダンス、刺繍、料理、工作などもあります。毎年開催される講座もあれば、その年にしかない講座もあります。

できるだけ地域の魅力を引き出せるように、地元らしさが感じられる講座を盛り込むようにしています。

各講座は人数制限があるため、必ずしも子ども達が希望する講座ができるわけではないのですが、こういった制限の中からも想定していなかった出会いと経験があり、感動が生まれています。

例えば、野球の枠しか空いていなくて、野球があまり好きではなかった女の子が嫌々参加した結果「野球ってこんなに面白いんだね!!」と目をキラキラさせてもどってきたり、たまたま参加したフラダンスにはまって、その後教室に通いだしたり。

自分の中の思い込みを大きく変えるチャンスでもあるんです。偶然の出会いにもちゃんとした意味があること、それによって素敵な出会いと発見があることを子ども達にも気付いてもらえればと思います。

最近は、募集を開始して数分で予約が埋まってしまう大町人気のイベントになっていて、毎年200人ほどの子ども達が遊びにきてくれます。

ーKID’S DAYを通して子ども達の成長を感じられる瞬間はありますか?

中村:子ども達の成長で感じられたのは、「挑戦」することを怖がらなくなったということですね。

普段の学校や塾とは違って、自分が選んだ講座には全く知らない子がたくさんいるという状況を2日間の中で何度も繰り返します。

そのような状況下で今までやったこともなかった講座に挑戦して、講師の先生からは褒められたり、一緒に参加した子からは「ありがとう!」と感謝されたりする経験を通して、少しずつ自信がついてくるようです。

すると「これやってみない?」と問いかけても「え~、ちょっと怖いから嫌だな~」「めんどくさいな~」と捉えるのではなく、「やってみる!」と目をキラキラさせてまずは挑戦してみることができるように成長していきました。

こういった経験を小さい頃から繰り返して成功体験を作ることが大切だと感じています。

成功体験の積み重ねを含めた「自信をつける方法」を3つ、下記リンク先で紹介しています。併せてぜひお読みください。

KID’S DAYは大人にとっても自分らしさに気付くチャンス

ーKID’S DAYに関わっているスタッフはほとんどがボランティアだと伺いました。KID’S DAYを通して大人の方が成長したこと、気付いた変化などありますか?

中村:講師の方はほとんどが、保護者のネットワークや市の紹介からお声がけさせて頂いた方達です。地域には素晴らしいスキルをお持ちの方が大勢いらっしゃいます。その道に情熱を持つかっこいい様々な世代の方達にご協力を頂いています。

講師以外のボランティアスタッフは毎年50人ぐらい必要なのですが、その多くが参加する子ども達の保護者です。

私は海外経験が長いので、ボランティアはよくしていたのですが、日本はそういったことをする機会が少ないように感じます。

イベントの運営はとても大変なのですが、「子ども達が自分のこと頼ってくれた!」「子ども達にありがとうと言われたことがすごく嬉しい」など、仕事や家庭以外で必要とされること、感謝されることを体感してとても充実している様子が伝わってきています。

さらに自分の子ども以外の色んな子ども達に接してみて、「初めて自分の子どもの良さに気付いた」「悩んでいたことが子どもにとっては当たり前のことだと気付いた」と元気になられる姿もたくさん見てきました。

KID’S DAYは大人にとっても、自分らしさに気付く1つのきっかけになればと思っています。

ただ昨年に引き続き、2021年度もコロナの影響で実施を取りやめようと思っていたのですが、多くのお声をいただき、規模を縮小したミニバージョンで実施できればと思っています。(大北地域在住限定) 詳細はこちらからご確認ください。

これからも多くの子ども達の可能性を広げていくために、温かい場づくりを続けていきたいと思います。

子どもたちの可能性を広げることに関連して、視野を広げることにフォーカスした下記のブログも参考になります

編集後記

いつも元気で底抜けに明るい中村真由美さん。友達が一人もいなかった大町で多くの地域住民の方と繋がり、毎年200人以上の子ども達と、50人以上のスタッフボランティアを集めることができるパワフルさに圧倒されました。

子ども達にできるだけたくさんの出会いと経験を、そして将来大人になるのが楽しみと思えるような素敵な大人に出会える場づくりを純粋な気持ちで続けているからこそ、多くの人が共感し、共に場を作る同志になっていくのだと感じました。ありがとうございました!