石森和麿(いしもりかずま)

宮城と山形のハイブリッド、東京育ち。東邦大学理学部卒業後、ベンチャーにて企画・営業を経験し、JICA協力隊日系日本語学校教師としてブラジルに派遣。現地学校の日本語クラスシステム構築、教授法指導などを担う。帰国後、スタートアップ企業にて会社立ち上げに関わり、日本の教育を変えるべく独立・起業。2020年、オンライン教室「アリストテレスの窓」を立上げる。現在、教室や提携学校にて、日本や世界の子供たちにAI時代にイキイキと生きる武器を授けている。

ファシリテーションスキル研修参加者インタビュー⑤
~石森和麿さん~

平成 31 年度の未来の教室の実施事業者に一般財団法人活育教育財団が採択され、実施された「ファシリテーションスキル研修」(2019年12月~2020年2月)には、全国から教育関係者48名の方が参加してくださいました。今回は参加してくださった石森和麿さんの現在の活動や取り組みについてインタビューしました。

「ファシリテーションスキル研修」についてはこちらをご参考ください。

ブラジルで体感した子ども達の自由と自主性

ーファシリテーションスキル研修に参加しようと思った理由をお聞かせください。

石森:Katsuiku Academyのファシリテーションスキル研修について知ったのは、とある勉強会に参加しているメンバーからの紹介でした。当時は、自分自身の生き方を模索している時でもあり、同時に「教育」を通して日本や世界を良くしていきたい!と考えている時でした。

元々子ども達が大好きで大学生の時から学習塾で英語講師を務めるなど、子ども達の学びや成長に関わってきました。
社会人になってからブラジルで2年間過ごす経験をして、その時にブラジルと日本の教育の在り方の違いを痛感して、日本に戻ってきました。

帰国後、日本の子ども達に「ありのままの自分」を感じられるような教育をしていきたいと思い、子ども達の想いや考えを引き出すファシリテーションスキルを学びたく参加しました。

研修から多くを学ばせていただき、かつ、参加者同士の繋がり・交流から自身の事業構想が少しずつ固まっていきました。参加して本当に良かったと思っています。

ー2年間ブラジルで過ごされたと伺いましたが、どのような経緯でブラジルに行かれたのですか?

石森:大学を卒業した後は、イベントの企画・運営や商品開発などを手がけるベンチャー企業に就職をしたのですが、昔からの夢である「海外で生活したい!」という想いが日増しに強くなりました。

退職を決意した後は、「どうしたら海外で生活できるのか?」を考えました。そこで出会ったのが、「日本語教師」という職業だったんです。

日本語教師であれば、海外のどこでもニーズがあると思い、日本語教師養成講座を受講し始めました。その後日系人向けに日本語を教える「日系社会青年ボランティア」に応募し、ブラジルに派遣されることが決まりました。

ブラジルで配属された先は、日系人も通う現地の私立の小中一貫校でした。その学校では、日本語は課外授業の1つとなっていて、私はその日本語の教員になったんです。

ーブラジルで生活されて大きな気付きや学びはありましたか?

石森:ブラジルの子ども達はとにかく「キラキラ」しているんです。そして「自己」をしっかり持っています。みんな楽しそうで、「ありのままでいる」ことが自然にできている。

例えば、授業中であってもトイレに行きたければ、人目を気にすることなくさっと手を挙げてトイレに行ったり、ある程度の自主性が認められているので休み時間はゲームで遊んでいたり。

学校には、生徒一人一人が「今本当にしたいこと」ができる自由と自主性がありました。

ブラジルの国民性でもあるかと思いますが、みんな本当に楽観的でポジティブです。貧富の差はすごくあるのですが、お金がなくても本当に楽しそうでした。

日本に生まれ育った私は、何か欲しいものがあればそれを買わなくてはいけないという発想になるのですが、ブラジルでは「買えないなら作ればいいじゃん!」ってなる笑

それが例え家であっても自分で作っている人は周りにたくさんいましたね。

彼らのそんな姿を見ていて、「自分のやりたいことを形にする」というのが本当に上手で、ある種の豊かさを感じました。

ブラジルでの大きな気付きは、今までの人生で自分自身に「あたなは本当に何がしたいの?」と聞いて実行したことはあるのか?ということでした。今までの人生を振り返るとてもいい機会になったと思います。

自分とはなにか?を考える時に参考になる「アイデンティティ」に関する理論や具体的な方法がこちらから読めます。

ーブラジルで日本の子ども達や日本の教育環境について何か気付かれたことはありましたか?

石森:ブラジルにある日本人学校に、現地の先生たちを案内したことがあったんです。視察した時は、ちょうど体育の時間で、先生の号令に合わせて子ども達が体操の陣を組んで、動いたり、止まったりしているところでした。

それを見た現地の先生たちが一言。「まるでロボットみたいね。

今までその光景を当たり前に思っていた私は、そんな風に見えるんだとかなりの衝撃を受けました。

「まるでロボットみたいね。」という言葉が、頭の中にずっと残り、「自分がどうしたいか」という自分の感情や想いを大切にしているブラジルの子ども達と比較して、日本の子ども達は「こうあるべき」という規律を優先しているように感じました。

先生に号令をかけられて綺麗に動く日本の子ども達。そこに「あなたは本当にどうしたいの?」が問われない。

「この子達らしさはどこにあるんだろう。」「どうすれば一人一人の個性や想いを活かした教育ができるんだろう。」そんな大切な問いを持ち帰ることができたブラジルでの出来事でした。

学習の個別化について詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。

子ども達がありのままでいられる居場所づくりへの挑戦

ー日本に戻られてから「アリストテレスの窓」というオンライン教室を始められたのはなぜでしょうか?

石森:ブラジルから日本に帰国した後、どうしたら日本の子ども達が「キラキラ」しながら生きられる環境を作れるんだろうかと悩んでいました。

いろいろな勉強会に参加して、Katsuiku Academyのファシリテーションスキルに参加したのもまさにこのタイミングだったんです。

そのような中で逆説的なのですが、「明確にこれをやりたい!!と思うことはない。とにかく何でもいいから始めよう!」と開き直ることができました。

ブラジルの時から考えていた「子ども達がありのままでいられる居場所づくり」をしようと思い、アリストテレスの窓を立ち上げました。

当初は教室を作って対面形式の場づくりをしたかったのですが、コロナ禍の感染拡大に伴い、急遽オンラインの教室に変更しました。

ー「アリストテレスの窓」ではどのようなことをされているのでしょうか?

石森:アリストテレスの窓は学習塾ではありません。つまり、学力向上を目指していないんです。では、何をしているかというと、好奇心や興味を惹かれるテーマを選び、子ども達がそのテーマで対話することを通して、自己肯定感や表現力などを育成しています。

今の時代は複雑性が増し、これまでの常識や経験が通用しない時代に入りつつあります。先が見えない時代だからこそ、アリストテレスの窓は「自分の頭で考える」ことを大切にしています。

生徒は授業の中で、多くの「答えのない問い」に向き合います。「答え」は他者が教えてくれるものではなく、「自分で生み出すもの」だということを仲間と共に自然に体感していきます。

今のところ対象は小学4〜6年生と中学生(今後は小学1~3年生にも拡大する予定です)。小学生は最大6人で集団授業を行います。(アリストテレスの窓の無料体験はこちらから。 )

「アフガニスタンの紛争はなぜ起きたんだろう?タリバンはなぜ暴力や恐怖を使うのか?」「『命の重さ』に違いはあるのか?」「正義とは何か?」「お金とは何か?(中学生)」など、毎回さまざまな分野のテーマ(哲学、宗教、紛争、宇宙、生物、自然、経済、社会など)を設定し、私が問いかけをしながら、子どもたちに議論をしてもらいます。

この議論が本当に面白いんです。例えば「1+1=2というのは本当かな?」というテーマで議論した時に、ある生徒が「1+1は1だよ!」と伝えて来てくれたんです。

不思議に思って理由を聞いてみると「粘土だったら、くっつければ1つになるから!」と、するとその回答に続けて別の子が「でも量は2個分だね。」と言ってくれたんです。

このやりとりを聞いている子ども達は自然に「世の中には色んな考えがあっていいんだ。」と体感できます。大人がどれだけ言葉で伝えようとしても伝わらないのですが、こうした子ども達の自発的な議論を促すことで、発言する子も、聞いている子も多くの気付きと学びがあります。

自己を受け入れてもらえる環境の中で育まれる自信

ー「アリストテレスの窓」に参加している子ども達にはどのような変化や成長があるのでしょうか?

石森:自信がついて積極的に発言するようになる子が多いです。

なぜ子ども達が自信を持って意見や想いを発言できるようになったかというと、このアリストテレスの窓では、「どんな意見を言っても受け入れてもらえる」と子ども自身に感じてもらうように心掛けているからです。

人が自信を持つには、「ありのままの自分」を「受け入れてもらえる」という感覚がとても大切だと思っています。

生徒の中に不登校傾向の子がいたのですが、アリストテレスの窓に参加してから保護者の方に「僕は幸せだ。初めて僕は僕でいていいと思えた。初めて認められた気がした。」と語ってくれていたことを聞きました。ぐっときましたね。

その子は次第に、自信がつき、以前から挑戦してみたかった声優オーディションに挑戦し、見事に合格を果たしました。海外のドキュメンタリー映画の日本語吹き替え版の声優としてデビューを果たし、本当にキラキラしています。

不登校についてもっと深く知りたいという方はこちらの記事をご参照ください。

ー保護者の方からはどのような感想をいただくのでしょうか?

石森:保護者の方からは有難いことにたくさんの感想をいただいております。具体的には、下記のような感想をいただいております。

「授業で積極的に⼿を挙げるようになったと、学校の先⽣から⾔われました。今までの⼦供の様⼦からして信じられない変化です!(3年生・男子)」

「「私は〜だと思う。」と、⾃分の意⾒をはっきり⾔うようになりました。親として本当に嬉しいです。(6年生・女子)」

「最初は⼤丈夫かと⼼配で⾒ていましたが、授業で科学の元素について話している姿を⾒て驚きました。親も知らない⼦供の⼀⾯を⾒させてくれる場だと思います!(3年生・女子)」

「学校で友達関係の悩みをアリ窓で話し、それにみんなが向き合ってくれたことで、息⼦は勇気をもらったようです。学校で⼀歩を踏み出すことができ、⾃分で解決することができました。アリ窓の仲間に感謝です。(4年生・男子)」

「塾で疲れている中、肩肘張らずいられる場を得た様⼦で安⼼しました。⾃分らしくいられる場なんだと思います。(5年生・女性)」

ー今の子ども達に必要なものは何だと思いますか?

石森:私は「自信と踏み出す勇気」の2つがとても大切だと思っています。

人は何かに挑戦しようと思う時に、自信が全くなかったらできないと思うんです。

「失敗するかもしれないけど、自分ならできるかもしれない」というわずかな自信さえあれば踏み出すことができます。この「できるかもしれない」と思えるかどうかが挑戦できるかできないかの分かれ目のように感じます。

だからこそ、このアリストテレスの窓は「ありのままの自分に自信をもつ」をコンセプトに対話の中での肯定をとても大切にしています。この受け入れてもらえたという肯定感が自信を醸成するからです。

どんな時代になっても、自分が本当にやりたいことに挑戦して、自分で責任が取れる大人になって欲しいと心から願っています。

自信とは何か?どのようにしたら身につくのかが気になる方はこちらのブログをご覧ください。

ー最後に一言お願いいたします。

石森:私は今オンライン教室を運営していますが、学校は絶対に必要であるという考えは昔から変わっていません。公教育がしっかりしてるからこそ、アリストテレスの窓のような場を作ることができるんです。

なので今は学校との連携や出前授業を積極的に行っていますし、学校の先生たちとの連携も深めていきたいと考えています。

Katsuiku Academyのファシリテータースキル研修を通して、最前線で活躍している全国の先生と仲間になることができました。
本当にかけがえのない宝物です。今後も先生方と連携し、協力して日本の教育や子供たちをキラキラさせていきたいというのが私の願いです。

編集後記

石森さんがアリストテレスの窓で、子ども達と対話している様子を拝見させていただきました。本当にどの子の意見に対しても「すごいね!」「そんな考え方があるんだね!」と肯定してくれ、子ども達が安心して自分らしさを発揮している様子が伝わってきました。

世間の常識や、大人の期待から一歩外に出て「こうでなくてはいけない」という想いから「これがやってみたい!本当に自分のやりたいことはこれ!」と胸を張って言える子ども達が増えればいいなと心から思いました。

石森さん、インタビューにご協力いただきありがとうございました。