シリーズ「休校中の学びを考える」〜第1弾〜

日野田直彦プロフィール

まとめー第1弾ー

①オンライン化への第一歩は誰も取り残さないシステムを構築すること

②正解がないことだからこそ、全員でチャレンジするマインドが大切

③休校中は特に子供達の小さな変化を見逃さない

④第2弾予告:武蔵野大学中学校・高等学校の具体的な事例紹介

新型コロナの感染拡大で、今までのライフスタイルががらりと変わる変革期をむかえています。会社や学校の在り方など既存の概念が変化していく中で、多くの方が不安や心配を抱えていることと思います。

今回Katsuiku Academyは、いち早く学校内でオンライン化を進められた武蔵野大学中学校・高等学校・日野田直彦校長にオンライン上で緊急インタビューをさせていただきました。今どういう心構えでいた方がよいのか、やるべきことは何かなどたくさんのヒントとアイディアをいただきました。

新型コロナの感染拡大等で休校になったり、外出自粛の日々が続いています。日野田先生の周りで聞こえてくる保護者や生徒の皆さんが抱えている問題はどのようなものがありますか?

日野田直彦インタビュー

(日野田)今すごく感じるのは、どの方も不安なのだということです。この先どうなってしまうのかという先行きが見通せない不安ももちろんありますが、多くの方が在宅勤務や在宅学習に切り替わることで、既存のやり方からオンラインツールを駆使するなどの変化を迫られていることが不安要素の1つになっていると感じています。

 例えば、私が勤めている武蔵野大学中学校・高等学校では、登校ができなくなった際のフォローとしてZoomを活用した出欠確認、スタディサプリなどのツールを使った教科学習を進めてきました。

このような新しい事に取り組む際に、私自身がいつも気を付けていることは、誰も取り残さないということです。まずオンラインコンテンツを使用する際に、どんなリスクが想定されるのか、導入した後はどんなルールに則って実施すべきか、どのように先生方に説明して運用いただくかを徹底的に考え抜きます

 学校という組織で動く以上、チームでの対応となるので、運用方法やルールを徹底するというのは学校運営上とても重要なことだと考えています。その上で、先生方と話し合い、全員がこのツールを使いこなせるように説明会を開催して、まず先生方が誰も取り残されないようにしています。「オンラインツールに慣れていない生徒と先生方でもできるシステムを作りましょう!」という言葉に現場の先生方からは「ほっとした。」とのお声をいただきました。

 保護者の方と生徒達に案内をする際は、誰もが分かるように詳細に説明していきます。現場の先生方も、生徒も、その保護者の方も、みな不安なのです。学校ができることといえば、今後の学びの方向性をしっかりと示し、少しでも皆様の不安を受け止める受皿になることだと思っています。

保護者の方や生徒達の不安に応えるために、現在武蔵野大学中学校・高等学校で取り組んでいることを教えてください。またこの時期に大切にすべきことを教えてください。

(日野田)保護者の方からの質問を随時受け付けて、FAQにまとめて定期的に返すことを現在やっています。日々不安や疑問に思うことはどんどん出てきますので、その思いを溜め込まずに学校側に伝えていただければと思っています。このような不測の事態が起きた時にこそ、コミュニケーションは非常に大切だと感じています。

またオンラインツールを活用した授業の取り組みは始まったばかりで、一定の効果があることはアメリカの先行事例でわかっていますが、日本においては、まだまだ検証がされていない部分もあります。今大切なことは、保護者、生徒、先生の全員で一緒に作りあげていくというマインドだと思っています。

何が正解なのか分からない中で、今できるベスト、というよりベターな選択を行い、フィードバックを得ながら良いものを作り出していこうというチャレンジ精神が求められていると思います。チャレンジしてみて、何度もフィードバックをしながら、改善していき、よりよい物へと作り変えていく。今は小さな事を積み上げていくことが求められています。

武蔵野大学中学校・高等学校で私が学校説明会をする際に「チャレンジする子に来て欲しい」という事を何度も言っているのはそのためです。正解を求め、与えられることを待つのではなく、今の状況の中からベターな答えを見つけだし、実行する能動的な姿勢が未来を切り拓いていくと思っています。

私がこのように武蔵野大学中学校・高等学校で新しいことにチャレンジさせていただけるのは、そういった想いを信じて受けとめてくださる先生、保護者、生徒の皆さまのおかげだと思い感謝しております。

このような状況の中で、先生としてやるべきことがあれば教えてください。

日野田直彦インタビュー

(日野田)若輩者の私から何か提案することは難しいのですが、先生方が恐らく大事にしている「日頃の生徒の様子をよく見る」ということを、さらに注意深くしていただくことが大切だと、私個人としては考えております。

先生方の授業をオンラインで流すこともとても大切なことだと思います。ただ、今回を機に、「先生=レクチャーをする人」を脱却し、適切なコンテンツ(今までは教科書・参考書・問題集でしたが、今回のコロナの件ではオンラインコンテンツ)を探し出し、それをファシリテーションし、常に生徒の心に寄り添うことを大切にしてほしいと感じております。

それはまさに大村はま先生や有田和正先生、岸本裕史先生など、偉大な先生方がめざされた、生徒一人一人を大切にする教育、につながると感じております。

先生方の授業をオンラインで流すことは、費用も時間も人員もかかります。特に公立学校などにおいては、予算がなく、ネットワークも整っていないため、ご苦労が多いことと思います。

大切なことは、現有戦力でできる範囲のことからチャレンジする。そしてまずは生徒主体で考えること、だと思っています。今はたくさんの素晴らしいオンラインコンテンツがあります。その素晴らしいコンテンツを使うことで無理をせずに準備されてはいかがでしょうか。

このような状況の中で、保護者としての心構えややるべきことがあれば教えてください。

(日野田)まず保護者の方にお伝えしたいのは、「頑張りすぎないでください」ということです。大事なことは、疲弊しない前提で物事を考えていくことです。長期化することは自明の理だと思います。短距離走ではなく、マラソンと考えていただければ幸いです。

これは今回の件だけではなく、全ての学びにおいて「継続性」や「動機付け」「目的意識」「自己選択」という部分が最も大切だからです。「学び」には時間がかかる部分があります。保護者の方が今回の事態を受けて、あまり深刻に捉えすぎず、前のめりにならないこと、余裕を持って楽しむことがポイントと思っています。

次に大切なことは、子供達に「選択肢を与える」ということです。例えば、子どもが自宅でも学習できるいい教材やコンテンツはないかと血眼になって探すのではなく、子どもと一緒に探して、子どもに選択してもらうことが大切です。

何でも親が選んで子どもに与えてしまっては、子どもは受け身になってしまいます。家庭の中でお子様と向き合う機会が増えた今だからこそ、リラックスしてお子様と向き合ってみてください。

最後に一言お願いします。

(日野田)新型コロナの感染拡大等で大きな変化が訪れているのは事実です。ただ、大きな変化の中にはいい変化もあったと思います。

私自身は、より「家族を大切にしよう。」という意識が強くなり、家族と過ごす時間を大切にするようになりました。自炊にも子供達と一緒に挑戦しています。子供達はこの機会にたくさんの本を読むようになりました。
そういった小さないい変化を1つ1つ大切にしていっていただければと思います。

日野田直彦インタビュー

第2弾に続きます!第2弾では武蔵野大学中学校・高等学校の具体的な取り組みを紹介しております。

日野田直彦プロフィール

幼少期をタイで過ごし、帰国後、同志社国際中学・高校に入学。当時の日本の一般的な教育とは一線を画した教育を受ける。同志社大学卒業後、馬渕教室入社。2008年奈良学園登美ヶ丘中学・高校の立ち上げに携わる。2014年大阪府の公募等校長制度に応じ、大阪府立箕面高等学校の校長に着任。着任後、全国の公立学校で最年少(36歳)の校長として改革を推進。着任3年目には海外トップ大学への進学者を含め、顕著な結果を出す。2018年より武蔵野大学中学校・高等学校の校長に着任。2020年より武蔵野大学附属千代田高等学院の校長を兼任。著書『なぜ「偏差値50の公立高校」が世界のトップ大学から注目されるようになったのか! ?』(2018年、IBCパブリッシング)