皆さんは高校・大学卒業後はどのような進路選択を考えていますか?

進学や、就職など学校を卒業した後は、すぐに何かしらの道を選択することが一般的になっているのではないでしょうか?

海外では高校や大学を卒業してから入学・進級・入社までの間、「ギャップイヤー」と呼ばれるお休み期間を取ることが一般的になっています。

すぐに自分の進路を決めるのではなく、進路を決めるために「ギャップイヤー」を活用する事例が世界にはたくさんあります。ギャップイヤーの事例や過ごし方、効果にはどのようなものがあるのかみていきたいと思います。

もくじ
1. ギャップイヤーとは~ギャップイヤーの歴史~
2. ギャップイヤーのメリット・効果
3. ギャップイヤーのデメリット
3-1. 金銭の問題
3-2. 時間の浪費
4. ギャップイヤー海外の事例
4-1. イギリス
4-2. デンマーク
4-3. ギャップイヤーの取得方法
5. 日本のギャップイヤー導入大学事例
5-1. 東京大学「FLY program」
5-2. 神戸大学「神戸グローバルチャレンジプログラム」
5-3. 国際教養大学「ギャップイヤー入試」
6. まとめ


1. ギャップイヤーとは~ギャップイヤーの歴史~

「ギャップイヤー」とは、高校、大学や大学院など、卒業、入学、就職の間などの節目と節目の間の期間のことで、英語では「人生の節目の空いた期間を使って旅をする」という意味です。一般的には、1年前後の期間で取得することが多いといわれています。

1978年イギリスのチャールズ皇太子が世界中の17歳~24歳の若者を集め、世界各地で働くという活動をサポートした「ドレイク活動」が始まりといわれています。その活動拠点が16世紀に活躍したイギリスの海軍副大尉(Vice Admiral)フランシス・ドレイク卿のルートにそっていたこと、そしてドレイク卿が世界を股にかけて活躍していたことでドレイク卿の名前を付けてドレイク活動と付けられました。

今では世界中でこのギャップイヤーを利用して、人生の節目と節目の隙間時間を活用して、旅行や留学、インターンシップやボランティアなどの社会体験活動が行われています。

少し立ち止まって、様々な経験をすることで今後自分が何をやっていきたいのか、どんな道に進んでいきたいのか、自分を見つめ直すことができる期間なのです。

2. ギャップイヤーのメリット・効果

このギャップイヤーは人生の節目と節目の時間において自分を見つめ直すことができる期間ですが、実際にはどのようなメリットや効果があるのでしょうか?

American Gap Association(AGA)が調査したところ、ギャップイヤーを経験した学生は、普通にそのまま入学した学生と比較すると、より成熟し、自立し、独立心があり、国際感覚もより優れ、キャリアの選択や就職時にギャップイヤーの経験が役に立つだけでなく、就職後の仕事に対する満足度が高いことが分かりました。

AGA代表のイーサン・ナイト氏はギャップイヤーに関して以下のようなコメントを発表しています。

「ギャップイヤーについて高校を卒業後、そのまま大学生活を送らないことについて否定的な見解もあるが、高校卒業後まっすぐに大学へと向かうことは、様々な体験ができる折角の機会を失うことになる。

ギャップイヤーを取得して大学に入学した学生は、そうでない学生より、学力が19%抜きんでている。また、しっかりと計画立てたギャップイヤーを過ごした学生は、そうでない学生より留年する人数も少ない。」

またシドニー大学アンドレー・マーティン教授の研究によると、ギャップイヤーを経験した大学生はそうでない大学生と比べて「就学後のモチベーション」「企画力」「忍耐力」「適応能力」「時間管理能力」がいずれも高いことを統計的に立証しました。

またアンドレー教授は、904人の高校卒業生の学業成績とギャップイヤーの有無を追跡調査し、入学後4学期間(2年)の芸術、社会科学、科学分野専攻の学生の成績を調査しました。

その結果、ギャップイヤーを取得した学生のスキル獲得への意欲と好成績が連動していることが分かりました。特に意思決定が明確であり、自己開発・自己統制のスキルを積極的に開発し、自律・自信を持つ傾向が強いことが分かりました。

すでに様々な大学や機関でギャップイヤーを通して経験したことが、その後によい効果をもたらしていることが立証されています。

3. ギャップイヤーのデメリット

様々な効果があるギャップイヤーですが、デメリットの部分に関しても探っていきたいと思います。

3-1. 金銭の問題

ギャップイヤーのデメリットの1つ目は、金銭の問題があげられます。ギャップイヤーの期間にどのようなことをするのか個人の自由ですが、多くが旅行や留学をするのが一般的です。

長期での旅行や留学となると、その期間にワーキングホリデーやアルバイト等をしない限り、ある程度金銭的に余裕がないとできません。

実際イギリスの調査によると37%の学生がギャップイヤーを取得したいと考えてはいるものの、金銭的な余裕がなく断念しているとのことでした。

高校卒業後、大学の高額な学費と合わせて、ギャップイヤーには平均約3,000~4,000ポンド(1ポンド=140円として、42~56万円)のお金がかかるので、約20%の若者が大学入学後や大学卒業後にギャップイヤーを取得しようと考えているとのことでした。

どのタイミングでどのような経験をしたいかにもよりますが、ギャップイヤー中にやりたいことをやるためには、計画的に資金を貯めておくことも重要ですね。

3-2. 時間の浪費

ギャップイヤーのデメリットの2つ目は、時間の浪費です。 ギャップイヤーの過ごし方には正解はありません。どこで、誰と、何をするのか、全ての決定権はあなた自身にあります。

ですので、明確な目的意識がないままギャップイヤーをとってしまうと単なる時間の浪費に終わってしまうことがあります。

また、就職活動においても、ギャップイヤーの期間に何をして、何を学び、何を得たのかを説明できなければ、良い評価には繋がっていきません。

何をやるのか自分で自由に決めることのできる自由な時間だからこそ、強い意志と行動力が求められるのです。何かやりたいことをするために必要な期間としてギャップイヤーを捉えると良いかもしれませんね。

ギャップイヤーを時間の浪費にしないために、自己理解を深めるための記事を是非参照ください。

4. ギャップイヤー海外の事例

Gap Year Associationの統計データによると、ギャップ・イヤーに関しては、アメリカよりもヨーロッパ諸国の方が進んでおり、アメリカでは取得率はまだ1.2%ですが、イギリスでは11%、ノルウェー、デンマーク、トルコに至ってはなんと2人に1人、50%もの学生が取得しているとのことです。
代表的なイギリスとデンマークの取り組みを見ていきたいと思います。

4-1. イギリス

イギリス圏の大学では、ギャップイヤーをつかってさまざまな体験をすることが推奨されており、そのために入学までの期間はあえて長めに設定されています。

この期間を使ってアルバイトなどで学費を稼ぐ人もいるようですが、語学留学やボランティア活動、海外での就労(ワーキングホリデー)をする人も多いとのことでした。

またイギリスではギャップイヤー・プログラムは商品であり、消費者としての保護、安心に寄与する標準化や認証が必要との発想があり、 英国規格(British Standard BS 8848)が2007年に成立し、ギャップイヤー認証が作られています。

大学入試担当官や企業は、認証を取得しているようなよく練られたギャップイヤー制度を好意的にみているとのことでした。

他には、イギリスでは高校卒業後、大学入学前の1年を利用した産業界でのインターンをテーマとしたプログラム「Year In Industry(以下YINI)」があります。1年間に毎年約750人ものギャップイヤー生(ここでは、大学入学前の高卒者)が大々的に本格的インターンを行います。

業種は、工学系、科学系、技術系、IT、eコマース、一般営業会社など英国トップ300社に現れるような企業で、ロレアルやシェル、ブリティッシュ・エネルギーなども含まれます。

97%の学生がYINIに参加すると将来就業力が向上し、CV(履歴書)もアピールできると言われています。

近年では2011年に結婚した英国王室のウィリアム王子も大学に入る前に1年間ギャップイヤーを使い世界各地を見て回り、南米や農村地帯で職業経験を行っています。2003年から2004年には弟のハリー王子も1年間のギャップイヤーでオーストラリアやアフリカに滞在していました。

イギリス王室の王子2人による各地でのチャリティー活動などが海外で大きく報道されたことが、ギャップイヤーの認知度を上げたといわれています。

4-2. デンマーク

デンマークでは、ギャップイヤーを利用して「フォルケホイスコーレ」という北欧独自の教育機関に通うことが一般的になっています。

デンマークの哲学者であり教育者でもあるニコライ・フレデリク・セヴェリン・グルントヴィが「すべての人に教育を」という理念を提案し、それをクリステン・コルが民主主義的教育メソッドを入れて創ったのがフォルケホイスコーレです。デンマークの民主主義普及に大きく貢献しました。

フォルケホイスコーレの特徴は、試験や成績が一切ないこと、民主主義的思考を育てる場であること、知の欲求を満たす場であることです。大学(ユニバーシティ)や単科大学(カレッジ)とは全く違い、単位や学位は取れません。

加えて、全寮制となっており、先生も含めた全員が共に生活することなども代表的なフォルケホイスコーレの文化です。試験も成績もない自由な学習環境下で、自分自身を見つめ、人と一緒に共生することを学ぶことに重きを置いています。

フォルケホイスコーレの立地場所は田舎町であることがほとんどで、まちづくりとひとづくりの共生の形を表しています。

デンマーク国内に70前後あるフォルケホイスコーレは、17歳以上であれば誰でも入学することができます。学べることとしては、文学、歴史、心理学、IT、コミュニケーション、教育、音楽、演劇、スポーツ、アウトドア、ダンス、絵画、写真、環境学、哲学、政治学、国際文化など多岐に渡り、学校によっては特定の分野に特化しているところもあります。

また、生徒はみな国籍関係なく国からの助成金を受けることができ、学費の一部を払うだけで入学できるので、日本人であっても入学可能です。

4-3. ギャップイヤーの取得方法

海外におけるギャップイヤーの取り方は、大きく分けて2通りあります。

1つ目は、進学する大学を決めた後、入学を遅らせる方法です。この場合は、高校卒業後すぐに大学に進学する学生と同じように進学準備を行います。そして、進学を決めた大学にデポジットを納めて大学の籍を確保した上で、事務局に連絡を取り、入学延期の依頼をします。

2つ目は、進学先を決めずにギャップイヤーを取り、自分が目指す活動に取り組んだ後で大学進学準備を行う方法です。さまざまな活動に取り組みながら、時間をかけて大学選びができるので、高校在学中に満足のいく進学準備ができなかった学生にとっては、理にかなった方法と言えるでしょう。

また、ボーディングスクールなど一部の高等学校ではPG(Post Graduate)という13年生の学年を有し、学校内でギャップイヤー・プログラムを提供しています。

他にも大学進学後にギャップイヤーを取る方法もあります。何らかの理由で、大学に通うのが辛くなった時、ギャップイヤーを取り、新たな環境で自分を見つめ直すことは、極めて効果的です。大学生活が困難になった学生が、ギャップイヤーを機に立ち直り、大学に戻って卒業したケースもあります。

5. 日本のギャップイヤー導入大学事例

日本では日本ギャップイヤー推進機構協会(JGAP)というギャップイヤーを専門的に調査研究・推進・啓発する団体が誕生しており、2013年にはJGAPが中心となって「ギャップイヤー白書」を作成しています。国レベルの検討も本格化し、2014年度には文部科学省内に「学事歴の多様化とギャップタームに関する検討会議」が設置されました。

検討会議の中では、ギャップイヤー期間中の活動を推進するために、海外のギャップイヤーの状況や国内の先行事例の情報を収集し、日本に相応しい環境整備の在り方について審議を重ねています。

その中で、日本において入学前・直後のギャップイヤーがなかなか広がらない背景には、大学だけが秋入学に全面的に移行した場合の課題と同様に、ギャップイヤー期間中の「受け皿不足」や「活動資金がない(欧米では奨学金制度なども充実しています)」等の制約とともに、「就職につながらない(評価されない)おそれ」など、様々な要因が指摘されています。

そのような中でも各大学によるギャップイヤー・プログラムが推進され始めています。

5-1. 東京大学「FLY program」

東京大学では2013年度からFLY programという制度を導入しており、自ら申請することで自由に活動ができる1年間を取得することができます。

FLY Programでは、入学した直後の学部学生が、自ら申請して1年間の特別休学期間を取得したうえで、自らの選択に基づき、東京大学以外の場において、ボランティア活動や就業体験活動、国際交流活動など、長期間にわたる社会体験活動を行っています。

毎年10名前後の学生が採用され、申請に応じて最大50万円の活動支援金の支給を受けることができます。(特別休学中の1年間は学費はかかりません。)

プログラムは、大学が学習メニューをつくって提供するものではなく、その内容は学生自身の主体的な判断によって決定されます。過去の参加者の事例では、日本語教育ボランティアでカナダの学校教育を体験したり、世界一周をして各都市の比較分析をしたり、被災地で復興とまちづくりを学んだりしているようです。

5-2. 神戸大学「神戸グローバルチャレンジプログラム」

神戸大学には、「神戸グローバルチャレンジプログラム」があり、1・2年生の1つのクォーターを「チャレンジターム」として設定し、国際的なフィールドで学生が行う自主的な活動を、「グローバルチャレンジ実習」として単位認定するものです。

国際的なフィールドで行う活動を通して、グローバル人材として必要な「課題発見・解決能力」とは何かを直接感じ、またその必要性に気づくことが狙いとされています。

5-3. 国際教養大学「ギャップイヤー入試」

秋田県にある国際教養大学では「ギャップイヤー入試」が導入されています。

9月入学試験の出願の際、「ギャップイヤー活動計画書」を提出し、9月に入学するまでの期間(4月から8月まで)で、計画書に基づいて研修活動に従事してもらう制度です。

活動内容は学生の自主性を尊重し制限はありません。様々な活動に取り組み、実践を通じてグローバルな知識・思考能力を身につける珍しい入試制度です。

6. まとめ

ギャップイヤー制度についてメリット、デメリットも含めて理解することはできたでしょうか?近年このギャップイヤーの認知が広がり、日本においてもギャップイヤーに取り組み始める大学が増えてきました。

高校卒業後、大学在学中、大学卒業後、転職活動中の時など、人生の節目ごとに自分の人生を見つめ直し、自分のやりたいことやライフミッションを探す方法の1つとして是非ギャップイヤーを活用いただければと思います。

その際には、ギャップイヤーの時間を有効に使うために、情報を集め、計画をたて、自分が何を得たいのか、目的をはっきりさせてから始めてみてください。