解いた問題が間違っていたり計画したことが上手くいかなかった時は、間違いや上手くいかなかった事に目が向いてしまい、気落ちしてしまうこともあるでしょう。

一方で、間違えた問題からは、次に問題を解く時に正解するためのヒントを得ることもできます。また、計画が上手くいかなかった経験からは、今後より良い計画を立てるために気をつけるポイントを知ることもできます。

後者のように、「失敗から学ぶ」「上手くいかなかった時を成長の機会にする」といった考え方は、これまでもあらゆる場面で耳にして、その重要性を実感している人は多いでしょう。

しかし、頭では分かっていても気づいた時には上手くいかなかった事ばかり気になってしまい、なかなか成長のヒントを掴めないことも少なくないでしょう。

ですが、先日のブログ「無気力を乗り越える方法:無気力感を成長の意欲へ変えていく」でも触れましたが、このような物事の捉え方は習慣であり、継続した取り組みを繰り返すことで成長に目を向けやすくする捉え方を身につけることは可能です。

この「無気力を乗り越える方法:無気力感を成長の意欲へ変えていく」の内容に加えて、今回のブログでは失敗やミスを学びに変えるために必要な取り組みに関連した内容をいくつかご紹介します。

もくじ
1: Self-Theory(セルフ・セオリー)とは?
2: 小さな事でも学んだ事や克服した事を記録しておく
3: 難しすぎたことは、取り組みやすくするために小さく簡単な内容に細かくしてみる
4: 保護者が子どもに出来ること: ミスしたことへの指摘ではなく、チャレンジや努力した姿勢を褒める
5: まとめ

1. パフォーマンス目標と日々のラーニング目標を立てる

まず、ミスや失敗を学びにするためには、成功や失敗などの結果で物事を評価する捉え方から、行ったことが目標達成に役立っているかどうかで評価する捉え方を身につけるのが重要です。

そこで、先日のブログでも紹介したパフォーマンス目標とラーニング目標を活用していきます。

パフォーマンス目標は、1週間や1ヶ月単位などある程度期間のある中で達成したい目標を指します。

パフォーマンス目標を立てることで自分が成長する上で目指すものが明確になり、目標に近づいた分で自分自身の成長を把握しやすくなります。

一方で、このような成果(結果)だけを求めるパフォーマンス目標だけだと、達成できたかどうかが評価基準になりがちです。その結果、達成できなかった時は自分の能力が目標達成に足りていなかった、と判断することが増えてしまいます。

このように成果や結果の成否で判断する習慣があると、自身の成長に目を向けるのが難しくなってしまいます。

そこで、パフォーマンス目標を達成するために必要な具体的な取り組みを目標にしたラーニング目標を併せて立てるようにしましょう。

そうすることで「達成したいパフォーマンス目標に必要な取り組みとして、これを頑張ればいい」と目の前のやることを明確にすることができます。

この日々のラーニング目標に取り組んだ内容を振り返ることで、どのような学びがあったかを確認することができ、成長の実感を得やすくなります。

2. 小さな事でも学んだ事や克服した事を記録しておく

パフォーマンス目標やラーニング目標を立てて取り組み始めても、最初のうちはそれでもミスや失敗した事実に目がいきがちでしょう。

上手くいかなかった事を受け止めることはもちろん大切です。それでも、何かしら小さな事でも目標を立てて取り組んだプロセスにおいて、学んだことや目標に向かって一歩前進したことなどはあるでしょう。

そこで、目標への取り組みを振り返る際には、どんなに小さな事でも学んだ事や成長したことを見つけるようにしてみましょう。

この取り組みも始めたばかりの頃は、なかなか小さな成長や前進を見つけるのは難しいでしょう。

そのような場合は、事前に周囲の人に自分の目標を共有して、自分が取り組んでいる様子を見てもらうのも1つの方法です。自分では気づかなかった事を指摘してもらうことで、小さな進歩を見つけるきっかけにもなります。

目標達成を促す理論としての「自己調整サイクル」についても、下記ブログから詳しく読めます。

3.難しすぎたことは、取り組みやすくするために小さく簡単な内容に細かくしてみる

目標を立てたのはいいけれど、目標に向かって取り組めなかったり、やると決めた事に手がつかなかった経験も少なからずあると思います。

このような場合は、立てた目標の難易度を見直してみましょう。

目標は難しすぎても簡単すぎても目指す意欲が湧きにくい、という特徴があります。一方で、一番意欲的に目指せる目標の難易度は「簡単すぎない、自分が頑張ったら達成できるような難易度」とされています。

このような最適な難易度の水準は、教育心理学ではThe Zone of Proximal Development(最適な発達のための領域)と呼ばれる理論でも説明されます。

実際に予備知識や学習経験も十人十色です。そのため、万人に共通する明確な指標を示すのは簡単ではないという側面もあります。

自分自身のスキルや実力を加味した上で「簡単すぎない、自分が頑張ったら達成できるような難易度」の目標を設定する事で、その人に合った目標を立てやすくなります。

スポーツの指導についてはLTAD(Long Term Athlete Development)として発達に応じた目標が理論としてまとめられています。LTAD理論についても下記ブログから読んでみてください。

4. 保護者が子どもに出来ること: ミスしたことへの指摘ではなく、チャレンジや努力した姿勢を褒める

保護者の立場で子どもがミスや失敗を学習の機会と捉えられるような後押しをするには、チャレンジした姿勢や努力した事に注目して声をかけるのがいいでしょう。

例えば、子どもがテストの結果を報告してくれた時に「90点も取れてすごいね!」「70点かぁ、もう少し頑張ろうね」といった具合に取った点数を褒めたり指摘したりすると、子どもは「いい点数を取らないと評価してもらえない」と思うようになってしまいます。

一方で、「毎日勉強頑張ってたよね」「難しい問題を解いている時も最後まで頑張ってたよね」など、勉強に取り組んだ姿勢が良かった事を伝えると、頑張ることや努力することで評価されると思うようになります。

もし、子どもがどんな事を学んだかに注目して欲しいのであれば、「どんな事を学んだの?」「どんな問題が解けるようになったの?」と学んだ事や出来るようになった事について聞いてみましょう。

保護者から聞かれると、保護者に伝えるために学んだことを整理して理解しようとします。このやりとりが日常的に行われると、子どもは自然と学んだことに目を向ける習慣を身につけることができます。

young asian parents and two children sitting on couch chatting in family living room at home

教育において大切な「フィードバック」についても下記の記事でまとめています。子どもへの声かけについて具体的な例などを参照できますのでぜひお読みください。

5. まとめ

今回は、失敗やミスを学びに変えるために、ミスや失敗の捉え方を工夫する方法をご紹介しました。

基本的な取り組みとして、パフォーマンス目標を立ててパフォーマンス目標を達成するための具体的な取り組みにあたるラーニング目標も併せて立てていきます。このラーニング目標で掲げた具体的な取り組みを行うことが、パフォーマンス目標へと近づく実感が持てるようにするのがポイントです。

このラーニング目標を実施して学んだことを積み上げていくために、実際に取り組んだ経験から学んだことを記録していきましょう。

もし、目標は立てたけど実際に上手く取り組めなかったとしたら、目標の難易度を見直してみましょう。難しすぎず簡単すぎない、自分が頑張ったら出来そうな難易度の内容に設定し直してみるのが効果的です。

保護者の立場で考えていくと、子どもへの声かけの内容を工夫することでミスや失敗から学ぶ捉え方を身につけることができます。具体的には、子どもが行った事の結果ではなく、努力した姿勢や学んだことを聞いてみるなど、プロセスに注目した声かけを多くするのが大切です。

今回ご紹介した内容を実際にやっていくと、最初のうちは上手くいかない事も多々あるでしょう。

しかし、実際にやって上手くいかない経験をして、そこから工夫して出来るようになることで自分の身をもって失敗やミスから学んだ経験を積むことができます。

読者の皆さんが実際に今回のブログの内容を試してみて、何か学べるきっかけになることを願っています。 

目標を達成するための効果的な練習に関して学びたい方はこちらのブログをご覧ください

参考文献

Dweck, C. S. (2013). Self-theories: Their role in motivation, personality, and development. Psychology press.

Harwood, C. G., Keegan, R. J., Smith, J. M., & Raine, A. S. (2015). A systematic review of the intrapersonal correlates of motivational climate perceptions in sport and physical activity. Psychology of Sport and Exercise, 18, 9-25.

Locke, E. A., & Latham, G. P. (2006). New directions in goal-setting theory. Current directions in psychological science, 15(5), 265-268.

Patrick, H., & Ryan, A. M. (2008). What do students think about when evaluating their classroom’s mastery goal structure? An examination of young adolescents’ explanations. The Journal of Experimental Education, 77(2), 99-124.

早川 琢也

2007年東海大学理学部情報数理学科卒、2009年東海大学体育学研究科体育学専攻修了。東海大学大学院では実力発揮と競技力向上の為の応用スポーツ心理学を学ぶ。 2014年8月よりテネシー大学運動学専攻スポーツ心理学・運動学習プログラムに在籍。スポーツ心理学に加え、運動学習、質的研究法、カウンセリング心理学、怪我に対するスポーツ心理学など幅広い分野について学ぶ傍ら、同プログラムに所属する教員・学生達のメンタルトレーニングを選手・指導者へ指導する様子を見学し議論に参加する。 2016年8月より同大学教育心理学・カウンセリング学科の学習環境・教育学習プログラムにて博士課程を開始。スポーツスキルを効率良く上達させる練習方法、選手の自主性を育む練習・指導環境のデザインについて研究。2020年11月に博士号(Ph.D.)を取得。現在は、慶應義塾大学兼任研究員として選手の主体性を育める練習環境をテーマに研究を進める一方、NPO法人Compassionのメンバーとしてスポーツ心理学、運動学習、教育心理学などの学術的な理論や研究内容を応用して、子どもが未来に対して希望を持てる心のサポート活動も積極的に行なっている。