「アントレプレナーシップ教育」という言葉を聞いたことはありますか?

近年、子供たちにこのアントレプレナーシップ教育を受けさせたいというニーズが高まっています。

なぜそのようなニーズが高まっているのでしょうか?

アントレプレナーシップを身に着けることがどのようなスキルやマインドセットを育むことに繋がるのかみていきたいと思います。

もくじ
1: アントレプレナー・アントレプレナーシップとは?
2: 日本におけるアントレプレナーシップ醸成の現状と課題ー日本の起業家が少ない理由ー
3: アントレプレナーシップ教育の必要性
4: アントレプレナーに求められるスキル
5: アントレプレナーシップを学ぶ
6: まとめ

1. アントレプレナー・アントレプレナーシップとは?

「アントレプレナー」とは、「ゼロから会社や事業を創り出す人」(起業家)のことを指します。ここから派生した言葉である「アントレプレナーシップ」は「起業家精神」、つまり自分でゼロから事業を起こそうとする精神を意味します。

その語源は、フランス語の「entrepreneur」から来ており、東西貿易が盛んであったマルコポーロ時代に生まれた「entreprendre」という動詞から派生した言葉で、「仲買人」を意味していたと言われています。

そしてそれを、経済学者シュンペーター(Shumpeter,J.A.)が「イノベーションを遂行する当事者」を指す経済的用語として定義し、経営学者のドラッカー(Drucker,P.F.)が、「アントレプレナーシップという言葉は、経済の領域に限定されるものではなく、人間の実存に関わる活動を除くあらゆる人間活動に適用される。」等と述べて、その概念を一般に広めました。

また、ハーバード・ビジネススクールのハワード・スティーブンソン教授によると、アントレプレナーシップとは「コントロール可能な資源を超越して機会を追求すること」とも定義されています。

何か新しい事に挑戦する際に、人材や資金が足りているということは滅多にありません。

だからこそ「創造性」を駆使して果敢にチャレンジしていくことが必要で、その姿勢や能力を持つのがアントレプレナーであると説明しています。

多くの学者達により繰り返し定義されているアントレプレナー・アントレプレナーシップという言葉。それは単に「起業家」を意味するのではなく、あらゆる人間活動に適用される概念なのです。

創造性を育むことの大切さについて知りたい方はこちらの記事をお読みください。

2. 日本におけるアントレプレナーシップ醸成の現状と課題ー日本の起業家が少ない理由ー

世界のアントレプレナーシップに関するランキング(Global Entrepreneurship Index 2019(The Global entrepreneurship and Development Institute))によると日本は26位となっています。

このランキングは、世界各国が起業家精神の育成にどのように資源を配分しているかを調査し数値化しているもので、日本はG7主要国で6位、アジア諸国の中でも6位と先進国の中では低い順位となっています。

では、なぜ日本では起業が少ないのでしょうか?考えられる原因は大きく分けて3つあると言われています。

起業に関心のある者に対して、我が国の開業率が低い理由として考えられるものを聞いたところ(中小企業庁委託「日本の起業環境及び潜在的起業家に関する調査」)、大きく三つの理由・課題に分類されることが分かりました。

一つ目の理由は、「起業家を育成するための教育制度が十分ではない」、「大企業への就職等、安定的な雇用を求める意識が高い」、「起業を職業の選択肢として認識する機会が少ない(身近に起業家がいない)」といった「起業意識」に関するものでした。

二つ目の理由は、「起業に要する金銭的コストが高い」、「起業にかかる手続きが煩雑」といった「起業に伴うコストや手続き」に関するものでした。

三つ目の理由は、「起業した場合に、生活が不安定になることに不安を感じる」、「個人保証の問題等、起業に失敗した際のセーフティーネットが整備されていない」、「雇用の流動性が少なく、失敗した時の再就職が難しい」といった「起業後の生活・収入の不安定化」に関するものでした。

特に日本人は不安遺伝子を世界で一番保有しており、不安を感じやすい国民と言われています。起業ということをリスクと捉え、思い切った挑戦ができないというのが国民性なのかもしれません。

世界で最も不安を感じやすい日本人と言われる日本人について詳しく知りたい方はこちらの記事をお読みください。

3.アントレプレナーシップ教育の必要性

ジョセフ・E・アウン氏(ノースイースタン大学第7代学長)は、AI時代の大学教育におけるアントレプレナーシップの必要性を「機械の労働市場への侵入により、第三の認知的能力のアントレプレナーシップ(起業家精神) は、 デジタル化した職場で自らを差別化する手段として、ますます高い価値をもつ」と話しています。

また、「テクノロジーは脅威ではなく、チャンスの源である。仕事を破壊するのではなく、潜在的な仕事を新しく創り出す。それを左右するのが、アントレプレナーシップである。」とも語っています。

アントレプレナーシップには、二つの機能が存在します。

一つは、伝統的な起業のモデル(新しいベンチャーや産業を立ち上げることによって市場を拡大する)。

二つ目は、すでにある機関や企業の文脈の内側での機能(革新的なマインドセットをもつ従業員は、企業に価値をもたらす新しい方法を生み出し、まだテクノロジーには習熟できない新しい領域を見出す、起業家的なエネルギーが企業に改革をもたらす)です。

アントレプレナーシップ、とくに社会起業家的精神を教えることは、今後不確実性がます社会においても日本の教育においても非常に重要な要素となります。

90年代以降、日本は長い間経済が低迷してきました。実際日本人の平均年収は、金融危機に襲われた1997年をピークとして、現在まで20年以上の長きにわたり減少傾向が続いています。

日本人の平均年収は、1997年から2020年までわずか0.3%の上昇でしかなく、世界平均給与ランキングでの順位は14位から22位まで落ちています。この状況の中で、アントレプレナーによる新たなビジネス創出が強く期待されています。

世界ではAIやブロックチェーンなどの新たなテクノロジーの出現によりビジネス環境が大きく変わろうとしている現在、既存の事業戦略だけでは生き残ることができません。

また消費者ニーズの多様化に伴い製品やサービスのライフサイクルが短くなっていることから、より速いスピードのビジネス創出が求められます。変化の波を上手く乗りこなしてイノベーションを創出するアントレプレナーシップこそが、今日本に求められているのです。

不確実性が高い世界で今後必要となるスキルやマインドセットについては、こちらをお読みください。

4. アントレプレナーに求められるスキル

では具体的にアントレプレナーにはどのようなスキルが求められるのでしょうか?

4-1.クリエイティビティ(創造性)

アントレプレナーに求められるクリエイティビティのイメージは、独創的でオリジナルのビジネスアイディアを生み出す力ではないでしょうか。

ただそれだけではなく、ビジネスチャンスの捉え方、経営資源の動かし方における創造性なども含まれます。

変化の激しいVUCAの時代において、世間や人々の行動や流行を敏感に察知し、どのようなビジネスモデルを構築して、実行していくのか。何度も失敗と挑戦「トライアンドエラー」を繰り返しあきらめずに行動していくことが求められます。

「やり抜く力、グリット」についてはこちらをお読みください。

4-2.コミュニケーション力

自身の作ったビジネスプランを実行するには、一人だけでは達成することはできません。

多くの人の賛同やサポートを得ることによってより成功に近づくことができます。

そのために、人脈やネットワークを構築する力は非常に重要になります。

多くの人と繋がり、情報を交換し、ビジネスプランをブラッシュアップさせ、資金提供者や必要なリソースを持った人々と繋がること。それには、誠実なコミュニケーションを積み重ねて信頼を構築することが何より重要です。

また、人を惹きつけるプレゼン力を身につけることで、共感の輪を広げてより多くの人達と繋がることができます。

コミュニケーションに関しては、こちらの記事をお読みください。

4-3.リーダーシップ

起業は一人でもできるかもしれません。しかしそのビジョンが大きければ大きいほどチームの仲間やビジネスパートナーなど多様な価値観を持った多くの人々と関わり合いながら展開していくことが必要です。

そのためアントレプレナーは、明確なビジョンや目標を示し、その達成に向けてリーダーシップを発揮し、チームをまとめて率いていく力が極めて重要です。

自分の意見を一方的に押し付けるだけではなく、異なる意見や性格、違いを理解しながら合意形成を進めていく的確なマネジメント力が求められます。

4-4.ポジティブシンキング

起業し、ビジネスを進めていく中で何度も危機的な状況に陥ることが想定されます。

しかし、リーダーとして危機的な状況に直面しても悲観的になるのではなく、常に前向きに解決策を考えられるスキルやマインドセットが求められます。

日々未知への挑戦で、恐れや不安といったネガティブな感情が湧き上がってくると思います。その感情を否定することなく、その感情を上手くコントロールしながら、今できる最善が何かを探し、困難な状況を切り抜ける力が必要です。

ポジティブ心理学についてはこちらの記事をお読みください。

5. アントレプレナーシップを学ぶ

アントレプレナーシップを学ぶには、アントレプレナーシップ教育に力を入れている学校を選択したり、学校外で開催されているセミナーや教室に通うのも手です。今回はアントレプレナーシップを学べる場所、実践できる場所をいくつかご紹介したいと思います。

5-1.大学

次世代アントレプレナー育成事業 (EDGE-NEXT)とは、EDGEプログラムに採択された大学をはじめ、これまで各地の大学で取り組まれてきたアントレプレナー教育で得られた成果や課題を踏まえて、大学等の研究開発成果を基にした起業や新事業創出に挑戦する人材の育成、関係者・関係機関によるベンチャー・エコシステムの構築を目的としています。

学生等によるアイディア創出にとどまらず、実際に起業まで行える実践プログラムの構築、アントレプレナー育成に必須の新たなネットワーク構築等を通じて日本全体のアントレプレナーシップ醸成、ベンチャー創出力の強化を行っています。

支援規模は、約8千万円/1コンソーシアムで、現在5コンソーシアム、24大学が実践しています。

①主幹機関:東北大学、協働機関:北海道大学、小樽商科大学、京都大学、神戸大学、宮城大学 

②主幹機関:東京大学、協働機関:筑波大学、お茶の水女子大学、静岡大学 

③主幹機関:名古屋大学、協働機関:岐阜大学、名古屋工業大学、豊橋技術科学大学、三重大学 

④主幹機関:九州大学、協働機関:奈良先端科学技術大学院大学、大阪府立大学、立命館大学 

⑤主幹機関:早稲田大学、協働機関:山形大学、滋賀医科大学、東京理科大学、多摩美術大学)

2017年度から2020年度までの成果としては、 プログラム参加者数が延べ約38,600名、起業件数は135件となります。

5-2.高校

全国各地には高校でアントレプレナーシップ教育を推進している学校が多数あります。

今回は高校向けにアントレプレナーシップ教育プログラムを提供している企業をご紹介いたします。

StartupBaseU18

・会社HP:https://school.startupbase-u18.com/

高校生向けに提供しているプログラムでは、アイデアや自分の考えを短く話すピッチ練習、ケーススタディからの学び、動画サイトの作成、プロジェクト型学習によるチームワーク等を学ぶことができます。また、卒業生や地域の方にも学校の学びに参画してもらい、学校と社会・地域が連携したプロジェクトを実行することができます。

プロジェクト型学習(Project Based Learning: PBL)に関してはこちらのブログをお読みください。

アントレプレナーシップ開発センター

・会社HP:https://entreplanet.org/

こちらのセンターでは、小学生、中学生、高校生、大学生、大人向けなど様々な層に対する教育プログラムを充実させています。

高校生向けには、「グローバルエンタプライズチャレンジ(Global Enterprise Challenge)」という世界が共有する社会問題の解決に新たな事業アイデアで挑戦する12時間の国際競技があります。競技は全て英語で行われ、国内予選の入賞者が世界大会へと進みます。

参加者は3人以上8人以内でチームを結成し、その解決策を英語で2ページの事業プランと3分の動画プレゼンテーションにまとめて提出し、最終的に創造性・革新性、実現性、市場性、コミュニケーション能力などの点で総合的に評価・審査されます。

6. まとめ

いかがだったでしょうか?

AIやテクノロジーの進化や、コロナウイルスの感染拡大によって急激に変化している現代社会において、時代の流れに合わせて私たちは適応しながら生きていくことが求められています。

このような時代の中で、アントレプレナーシップはますます重要になっています。起業という形式に関わらず、一人一人がアントレプレナーシップを身に着け、明るくポジティブに時代を切り開いていきましょう。