「相手の気持ちがもっと分かればいいのに」

「〇〇さんはどんな風に感じているのだろうか」

私生活やビジネスでも、相手のことをもっと深く理解できれば、よりうまく行動できると思ったことがある方もいるのではないでしょうか。

価値観や考え方が多様化している世の中では、相手のことを理解することがより重要になっています。

今回は相手のことを理解する上で重要なエンパシー・共感力についてご紹介します。

もくじ
1: エンパシー(共感)の意味は?
2: シンパシーとエンパシーの違い
3: 共感力を持っている人の特徴
4: 共感力を高める方法
5: まとめ

1: エンパシー(共感)の意味は?

エンパシーとは、相手の立場になりきって相手の考えや思いを想像して理解することです。頭だけで相手の感情や言葉を受け止めたり、理解するだけではなく、想像力を働かせて「もし自分が相手の立場であったらどのように感じるのか、どのように考えるのか」まで想像することがエンパシーです。

英語のフレーズでは”to walk a mile in someone’s shoes” という言葉がありますが、相手のことを判断する前に相手の立場になってみないとその人のことは理解できないということが強調されています。

2: シンパシーとエンパシーの違い

エンパシーという言葉と類似している言葉としてシンパシーという言葉があります。共感するという点ではエンパシーとも似ている部分もありますが、シンパシーは日本語では「同情・思いやり」と訳されることが多いです。

エンパシーが相手の立場になって考えるという行動に対してシンパシーは相手に同情する、かわいそうに感じる相手に理解を示すこととなります。

イギリスで多様な人たちと交流しながら成長していく息子の話を中心に書かれた『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』で多くの文学賞を受賞したブレイディみかこさんはエンパシーとシンパシーの違いについて下記の解釈を出しています。

シンパシー:

「感情とか行為とか友情とか理解とか、どちらかといえば人から出て来るもの、または内側から湧いてくるもの」

「かわいそうだと思う相手や共鳴する相手に対する心の動きや理解やそれに基づく行動」​​

エンパシー:

別にかわいそうだとも思わない相手や必ずしも同じ意見や考えを持っていない相手に対して、その人の立場だったら自分はどうだろうと想像してみる知的作業

3: 共感力を持っている人の特徴

共感力がある人はどのような特徴を持っているのでしょうか。

好奇心が高い

共感力が高い人は他者に対する好奇心が強いことが一つの特徴です。相手がどのようなことを考えているのか、なぜその行動をとっているのか等、相手のことを理解しようとする傾向が強いです。

自分が慣れ親しんでいる日常の外側にいる人の話を聞いたり、今まで知らなかった新しいことをもっと知りたいと思う好奇心はエンパシー・共感力を発揮する上で重要な要素になります。

好奇心や好奇心の高め方についてもっと深く知りたい方は下記の記事をご覧ください。

傾聴力がある

上記の好奇心にも繋がりますが、共感力が高い人は相手の話に耳を傾ける傾聴力も高いことが特徴の一つです。

Non-violent Communication (NVC:非暴力コミュニケーション)の提唱者でもある米国の臨床心理士のローゼンバーグ氏は傾聴する上で相手がその瞬間にどのような特定な感情やニーズを感じているのかが非常に重要であると話しています。

共感力が高い人は相手の話をより深く理解するために効果的な質問を重ねていたり、また自分が話している割合が低いことも多いです。

傾聴力について詳しく知りたい方は下記の記事をご覧ください。

弱さを見せる勇気がある

共感力・エンパシーが高い人はただ単に相手に質問を重ね、傾聴しているだけではなく、自分の弱さをみせる勇気も持っていることが特徴です。

相手の立場に立つことによって湧き上がってくる感情に対して素直に反応ができたり、場合によっては人前でも涙を流したり、または自分自身が感じている感情を相手に晒し出せる勇気を持っています。エンパシーは一方通行の行動ではなく、お互いが考えや価値観等を共有し合うことで相互理解を深めることが可能になります。

弱さを見せる勇気の研究について詳しく知りたい方は下記の記事をご覧ください。

4: 共感力を高める方法

それでは共感力を高めるにはどのようなことをすればいいのでしょうか。

結論から共有するとエンパシー・共感力を高めるには意識をして、練習を重ねることが必要です。

日常的にエンパシー・共感力を発揮する場面がどのような形や頻度で訪れるのかをトロント大学の研究者であるデパウ氏が研究しました。彼の研究では246名の異なる背景の人々を対象に1日7回、1週間を通していくつかのエンパシー・共感力に対する質問に答えていただきました。近くに感情をあらわにしている人がいてエンパシー・共感力を発揮できる場面は12時間の間で平均9回訪れており、エンパシー・共感を受け取る場面においても12時間の間で平均6回あり、そのうち88%の場面で共感力の実行が確認されていました。

サンプルが少なく限られた実験ではありますが、日常的に私たちもエンパシー・共感力を発揮するまたは受け取る機会がたくさん存在することが見受けられます。

共感力やエンパシーを高めるために傾聴力や共感力に関わるスキルを高めることに焦点を当てている研修プログラムも多く存在しますが、共感力やエンパシーを発揮できないのは、それらのスキルを保有していないからではなく、発揮する意識やモチベーションが低いからという研究も行われています。

ハーバード大学でエンパシーの研究を行っているエリカ・ワイズ氏によると多くの人は共感する力やスキルはすでに保有しているが、それを発揮するためにはスキルの強化も重要だが、モチベーションや意識を高めることも効果的だと発表しています。

彼女の研究では、大学新入生292人を対象に3つの研究を行いました。そのうちの一つの研究では対象者は高校1年生の相談者に手紙で答えるという行動を行いました。学校にうまく馴染めず、苦しい状況であると相談している高校生からの手紙に対して、対象者の大学生は共感力を高めることでクラスメイトとの繋がりを強化できるというアドバイスを高校生にするよう指示されました。

この行動を通して、対象の大学生の中で「共感力は鍛えれば高められる」と意識付けし、共感力を高めることへのモチベーションを引き上げていきました。

この研究で共感力を高めるための行動を行った対象者はコントロールグループに比べて共感力を試す試験(映像で話をしている人の感情を当てる試験)でより高い精度の結果を出していました。また共感力を高めた対象者の方がより多くの親しい友人が増えたという結果もでています。

共感力の高め方に関して上記の研究はまだサンプルも小さく限られている研究ではあるものの、日常的に意識しながら行動することで共感力が高められる可能性を感じられます。

心の知能指数をさすEQに関してはこちらの記事をお読みください。

5: まとめ

自分とは異なる価値観や考え方を持っている人と協働する場面はVUCAといわれる時代では今後もさらに増えていくことが予想されます。

そのような中で共感力やエンパシーを活用し相手の立場になって、どのような考え方、感じ方があるのかを想像して行動に移すことはとても重要なスキルになります。

相手が感情をあらわにして共感力やエンパシーを発揮する機会も我々は日々対面しているはずです。そのような場面を共感力を高める機会と捉えて、意識しながら日常生活を送ることでより相手のことを理解したり、広い視野で物事を考えたり、自分たちの世界観を広げることにもつながります。ぜひ皆さんも身近な場面から練習を重ねてみてください。