【目次】
1.これからの時代に必要なEQとは
1-1:EQが生まれた背景ー心の知能指数を広めた本ー
1-2:EQの特徴
1-3:EQの測定方法
2.社会で活躍するために必要不可欠なEQ
2-1:EQとIQの違い
2-2:リーダーに求められるEQ
3.教育現場で行われるEQ教育
3-1:アメリカ・イリノイ州の事例
3-2:EQを高めることで得られる効果
4.まとめ

EQという言葉を聞いたことはありますか?
EQとは「Emotional Intelligence Quotient」の略で、「心の知能指数」を意味します。

EQはこれからの時代、社会で活躍していくために非常に大切な要素であるにも関わらず、
今まで学校や職場でEQについて学んだことはないのではないでしょうか?

これからの時代、なぜEQという、人の感情や気持ちに焦点をあてた力が必要とされるのでしょうか?

これからの時代に必要なEQ(Emotional Intelligence Quotient)とは

EQが生まれた背景ー心の知能指数を広めた本ー

EQは、「Emotional Intelligence Quotient」の略で「心の知能指数」を意味します。1989年に米国イェール大学のピーター・サロベイ博士とニューハンプシャー大学のジョン・メイヤー博士によって、初めて論文で発表されました。

その後1995年に心理学博士のダニエル・ゴールマン(Daniel Goleman)がまとめた「Emotional Intelligence(邦訳『EQ こころの知能指数』講談社、1996年)」によってEQという概念が世界中に広く知られるようになりました。全世界で500万部、日本でも80万部以上の販売部数を記録する大ベストセラーとなっています。

なぜゴールマンは、EQに注目したのでしょうか?

ゴールマンの母親は、革新的な女性で、大学では人種差別の撤廃や男女機会均等を訴える積極的差別改善委員会の委員長を務める傍ら、カリフォルニア州の青少年精神衛生委員会委員として、知事のアドバイザーを5代にわたり務めた人でした。

ゴールマンが青少年の精神衛生に問題意識を持ち、大学院で臨床心理学を専攻したのは、母親の影響があったといわれています。

「EQこころの知能指数」の本来の主題は、「情動(emotion)をいかに自分で抑制、コントロールするか」という精神衛生面に置かれていることがポイントです。

実際同書の中でも、青少年の犯罪が増加する理由を「私たちが社会として一人ひとりの子供に怒りを処理する方法や、紛争を建設的に解決する方法をきちんと教えてこなかったからだ。」と指摘し、青少年に対する情動教育の必要性を強調しています。

EQの特徴

ゴールマンは、EQは次のような5つの能力であるとされています。

  • 動機付け:自身を動機づけ、挫折しても粘り強く取り組める能力
  • 自己抑制:衝動をコントロールし、快楽を我慢できる能力
  • 自己認識:自身の感情を把握し、整え、感情の乱れに思考を阻害されない能力
  • 共感性:他人に共感し、希望を見出せる能力
  • ソーシャルスキル:他者との調和した人間関係をマネジメントする能力

人の言動や行動は、その時々における自分自身の感情に大きく左右されています。したがって、自身の感情を意識して上手にコントロールし、適切な行動をとることが大切なのです。

また、自分だけではなく、相手の今の感情を認識し、相手に配慮した言動や行動がとれれば、対人コミュニケーションを円滑にすることができます。

EQの測定方法

EQは比較的新しい概念であり、今もなお多くの学者によって研究されています。そのためIQと異なり、最適な測定方法が明確に存在するわけではありません。

ただ今はインターネット上で検索すると複数の質問に応えることでEQを測れることができる無料診断ツールがあるので、気になる方は是非チェックしてみてください。

社会で活躍するために必要不可欠なEQ

EQとIQの違い

IQというのは、「Intelligence Quotient」の略で、「知能指数」を指します。一般的に浸透している言葉なので、IQが高い人といえば、多くの方が記憶力が高く、勉強や仕事ができるイメージを持つのではないでしょうか。

今までは人の能力を測る指標のひとつとして有力視されているのが、修士や学士といった学歴でした。このため、学歴が高い、すなわちIQが高い人材がビジネスでも成功すると一般的に考えられてきたのです。今までの学校教育が偏差値の高い学校に行って、高い学歴を得ることが勧められてきた背景でもあります。

しかし、IQが高いからといって必ずしも成功できるとは限りません。学校や会社などの組織の中で上手く人とコミュニケーションをとれなければ、円滑に社会生活を営むことはできないからです。

国内200万部を突破したアドラ―心理学の入門書である「嫌われる勇気」の中でも、「人間の悩みは、すべて対人関係の悩みである。」と書かれており、どんな種類の悩みであれ、そこには必ず他者が関わるといわれています。

人間関係を円滑にすることができるEQがあってこそ、IQをいかすことができるのです。

リーダーに求められるEQ

「IQが高く優秀な人をリーダーに選任しても、チームとしては上手く機能しなかった。」

こういった経験は誰しも一度は感じたことがあるのではないでしょうか?

前述したピーター・サロベイ博士ジョン・メイヤー博士は、心理学の立場から、ビジネス社会における成功の要因とは何かを探りました。

その調査の結果分かったことは、「ビジネスで成功した人は、ほぼ例外なく対人関係能力に優れている」というものでした。

具体的には、ビジネス社会で成功した人は「自分の感情の状態を把握し、それを上手に管理調整するだけでなく、他者の感情の状態を知覚する能力に長けている」というものだったのです。

心理学・組織行動学の権威として名高いデイビッド・マクレランド教授の研究によると、ある世界的な食品・飲料メーカーに関する1986年の調査で、同社の経営陣のなかでEQがある一定の水準に達している経営幹部の場合、担当する事業部門の年間利益が目標を20%も上回っていることを発見しました。

他者と円滑にコミュニケーションをとれることで、クライアントなど社外との関係もうまく維持調整することができ、社内的にも多くの協力者を得ることができるため、結果的に高い成果を生み出すことができます。これはどんなにIQが高くても、EQが低ければ実現できないことです。

今はVUCAの時代といわれ、激しい変化と不透明な未来の中で事業を推進していくことが求められます。またグローバル化も進み、様々な要因が絡み合っている複雑な社会や組織の中では、自分一人の力だけで対応することはほぼ不可能です。

今後のリーダーに求められる能力は、他者のもつ専門性・知見・ネットワーク・アイディア等を引き出し、未来を構想しながら、推進していく力です。今後リーダーには、ますますEQの力が求められていきます。

世界トップ企業といわれる「フォーチュン500社」のうち、8割の企業が教育などの研修等によって、自社になんらかの形でEQを導入しています。

教育現場で行われるEQを高める教育

日本の教育現場ではまだ耳慣れないEQ教育ですが、世界ではどのようにEQを高める教育が行われているのでしょうか?

世界では現在EQを高めるために、SEL(Social and Emotional Learning)教育が行われています。SELは日本語では「社会性と情動の学習」と訳されます。(詳細は以下の記事をお読みください。)

アメリカ・イリノイ州の事例

イリノイ州では、幼稚園から高校の最終学年までのすべての学年で、SELの能力に関する具体的な学習基準が設定されています。

カリキュラムの一例を挙げると、小学校低学年では、自分の感情とそれがどのように行動に結びついているかを自分で認識し、正確にその感情がどういうものなのかを学びます。

小学校の後期には、共感力の授業で、相手の気持ちを知るための非言語的な手がかり(動作、表情など)を見極めることができるようになります。

中学生になると、自分にとって何がストレスになるのか、何が最高のパフォーマンスを引き出すのかを分析できるようになります。

高校では、仲間同士で何かもめたときに、その対立をエスカレートさせるのではなく、対立を解決するための聞き方や話し方を身につけ、お互いに何がベストな解決策なのかを話し合って交渉できるようになります。

これら全てが包括的にSEL教育の中に組み込まれています。

この教育を受けると、社会人になるまでに自己認識力が高まり、自他共に感情の動きに敏感になり、共感能力が高まり、他者とのコミュニケーションを円滑に進めることができるようになります。

EQを高めることで得られる効果

1995年にゴールマンによって行われた「暴力問題を防止し、かつ子どもの学習を向上させるプログラム」において、SELが有効であることを示唆する証拠を発表しました。

SELは、子どもたちの自己認識と自信を高め、不安定な感情や衝動を整理し、他者への共感力を高めます。これは行動の改善だけでなく、学業成績の向上にもつながることが分かっています。

また、イリノイ大学シカゴ校のロジャー・ワイズバーグ教授によって、幼稚園児から高校生までの子どもたちを対象としたSELプログラム668件が調査された結果、SELプログラムは、学業成績の向上に大きな効果をもたらしたことが分かっています。

調査された学校では、最大50%の子どもたちが学力テストの成績が向上し、38%の子どもたちの成績平均点が向上しました。

さらにSELのプログラムが導入されたことで、学校がより心理的に安全な場所となり、出席率が向上し、63%の生徒がより積極的な行動を示すようになるという結果も出ています。(研究の詳細はこちらをご参照ください。)

まとめ

これからの時代に求められる能力である、自分自身と他者の気持ちや感情に寄り添うEQの力。

まずは自分自身の中にある感情がどのようなことがきっかけで生じ、それがどのように行動に繋がっていくのか、自己認識能力を鍛えることが最初のステップになります。

その上で、その感情の適切な扱い方を身に着け、実践していくことで、自分自身だけではなく、他者の気持ちや感情にも敏感になり、深いレベルで共感し、円滑なコミュニケーションに繋がっていくということが分かりました。

世界中の人と繋がり、これからの未来を作っていく上で非常に重要なEQ。

今後の日本においてもEQを高める必要性が高まることを期待しています。