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「グループ」として機能するために大切な要素とは?:社会心理学におけるポイントを理解し実践してみる

Teacher with students working on desktop

まだ感染症対策に注意しなければならない状況ではあるものの、徐々に対面で仕事したり授業を受けたりする機会は増えてきている印象です。

しかし、これまでオンライン上で人と会う機会が多かったため、実際に会ったときに変な感じを受けている人も少なくないでしょう。

特に、新しい職場やクラスでプロジェクトや有志でグループを作るのに苦労している人もいるかもしれません。

ですが、大事なポイントを押さえることで、コミュニケーションを活発にさせたり協力し合えるグループを作ることが出来ます。

このような状況を逆に利用して、今回のブログを通して「効果的なグループ作り」について考えていきましょう。

もくじ
1: グループとは?
2: 機能的なグループになるために必要な4つのポイント:心理的安全性・目標・Norm・自律性
3: グループに必要なことが欠けていると、どんなことが起こるか:リンゲルマン効果とフリーライダー効果
4: 機能的なグループを作るためにできること
5: まとめ

1. グループとは?

「グループ」という言葉は日常的に使われていますが、その意味は単純に人が集まって出来上がった集団という意味だけではありません。

社会心理学において、グループとは「目的や目標が共有されている2人以上の集まり」と定義されています。

つまり、グループとしての人の集まりには、集まる目的やグループとして達成したい目標があるのが前提となります

例えば、スタディグループには「仲間と集まって勉強する」という目的があります。会社のプロジェクトグループであれば、目標とする成果がありそれを達成することがグループの目的となります。

2. 機能的なグループになるために必要な4つのポイント:心理的安全性・目標・Norm・自律性

機能的なグループを「仲間と協力し合って目標や目的を達成できるグループ」と定義した際に、このようなグループになるために必要なことがあります。ここからはそれらについて紹介していきます。

1. 心理的安全性

心理的安全性とは、ハーバード大学のエイミー・エドモンドソン博士によって体系化された理論で、グループや集団にいる一人ひとりが高いパフォーマンスを発揮するために必要なものとされています。

心理的安全性のあるグループでは、メンバーの発言に対して安心・安全が確保されていて、自分の意見をグループ内ので共有し合える関係性があることです。

同時に、グループとして達成したい目標が共有されていて、その目標に向かってメンバーが行動している時に、パフォーマンスは最大化されると説明されています。

心理的安全性についてもっと知りたい方はこちらの記事をご覧ください。

2. グループとして達成したい目標

先程の心理的安全性でも触れましたが、グループとして達成したい目標を明確化して共有することで、グループ内のメンバー同士と協働しやすくなります。

グループで掲げる目標の例として、スタディグループを作る際に「このグループのメンバーみんなで今日の授業でわかりにくかった問題を解決しよう」といった目標設定をすることが挙げられます。

このような目標をグループ内のメンバー同士で話し合って決めたら、グループとして集まった時にはその目標を達成するためにそれぞれが教え合ったり調べ物をして目標達成に向けて取り組んでいきます。

このように個々が目標達成に向かって行動することが、結果的にグループとして掲げた目標達成に繋がっていくのです。

3. Norm (規範、基準)

グループとして活動していくと、グループ内での「決まりごと」や「求める基準」や「共有している価値観」などが自然と形作られてきます。

このように、グループの中で自然と作られたルール、基準、価値観、規範といったものを社会心理学ではNorm(ノーム)と呼ばれています。比較的、「文化」や「慣習」に近いものと捉えられます。

例えば、スタディグループとして集まって勉強している最初の30分間、誰も喋らずに自分の勉強に黙々と打ち込んでいるのが自然と行われているとします。そのスタディグループに新しい仲間が加わった時に、新しいメンバーがその様子をみて「このグループでは最初の30分くらいは自分で勉強する時間なんだ」と判断し、同様に30分は自分だけで勉強するようになりました。

この場面では、スタディグループのメンバーが自然と30分自己学習をするという行動がノームとなり、新しいメンバーが加わった時に勉強する際の基準となったと捉えることができます。

その後、後半の30分は仲間同士でディスカッションをしながら分からない課題を解決する時間にすることを仲間同士でルールとして決めて、それが習慣化されて「このスタディグループでは当たり前に行うこと」として行われるようになったら、このグループのノームと捉えることができます。

このようにグループ内に出来上がったルールや価値観がそのグループの行動基準(ノーム)となり、グループの目標や目的を達成するために取るべき行動の目安となります。

4. 自律性

一人ひとりがグループの中で意欲的に活動するためには、一人ひとりが自律性を感じられるような仕組みにすることも大切です。

グループ内で自律性を感じられる状況とは、一人ひとりがグループの一員としてやることが与えられている状態ではなく、自分でやることを見つけて取り組んでいるような状況です。

他にも、メンバーがやることを自分で選べる余地がある状態も、メンバーの自律性が保たれている状況と言えます。

メンバーの自律性が大事な理由として、自律性が尊重されることで自ら取り組む意欲(内発的モチベーション)が高まることが挙げられます

例えば、グループプロジェクトとして「新しい教育プログラムを作成して実装する」という目標を掲げた場合、「この目標を達成するために自分ならどんなことで貢献できると思うか」とメンバーに問いかけてみます。

この質問に対して、「教育プログラムの中身を考えたい」と答えるメンバーがいる一方で、プログラミングが得意なメンバーであれば「オンラインプログラムのプログラミングをやりたい」と答えるメンバーもいるでしょう。

このように、個々の得意なものを尊重した上でグループの目標達成を目指すことで、それぞれのメンバーのパフォーマンスや取り組みに対する意欲を高めることができます。

内発的なモチベーションを高める方法についてもっと知りたい方はこちらの記事をご覧ください。

3.グループに必要なことが欠けていると、どんなことが起こるか:リンゲルマン効果とフリーライダー効果

グループとして活動していて上記のポイントが上手く活用できていない場合、主に「グループメンバーとして活動しているけど、無意識に手抜き・手加減をしてしまっている」ことと、「周りの頑張りに便乗して自分はグループに貢献しない」という行動が出てきてしまいます。

社会心理学では、前者のような状態はリンゲルマン効果、後者のような状態はフリーライダー効果として説明されています。

リンゲルマン効果は、フランスの農業工学博士のマクシミリアン・リンゲルマンが1913年に提唱したもので、人間は「協働する人数が増えるほど発揮する力が低下する現象」を説明したものです。

リンゲルマン効果を検証した実験の1つとして、綱引きをした時の人数によって一人あたりが発揮する力の大きさの変化を調査したものがあります。

この実験では、「人数が増えれば増えるほど、一人あたりが発揮する力は低下する」ことが明らかとなりました。

このように、グループとして大事なポイントが活かされていないと、グループの活動に参加はしているものの無意識のうちに手抜きをしてしまう(パフォーマンスを低下させてしまう)リンゲルマン効果が起きる可能性が出てきます。

もう一つ懸念されるのは、フリーライダー効果と呼ばれるものです。

これは、グループに所属していながら自分は特にグループに貢献せずにグループの成果を得るような、いわゆる「タダ乗り」をしているような状況を指します。

グループに所属して頑張っているフリをしているのは、最たる例と言えます。

4. 機能的なグループを作るためにできること

リンゲルマン効果とフリーライダー効果を防ぐには、グループのメンバーがグループの目標を共有して、一人ひとりが目標に対して自分が貢献できることを選んで行うことが大切です。加えて、自分の存在がチームの目標達成に大きな役割がある、と感じられるようなグループ内の役割を持つ(作る)ことも効果的です。

例えば、定期的にグループの目標を再確認して目標に対して自分ができることや役割をメンバー間で共有するミーティングを持つことが効果的です。

他にも、グループ内のルールやノームを見直すことも効果的です。もし、ルールやノームがメンバーの行動を制限しすぎてしまっているようでしたら、もう少しメンバーが取り組みを自分で決められる余地を作るといいでしょう。

ポイントとなるのは、メンバーの自律性や自己決定を通してメンバー個々が自分の行動がグループにいい影響を与えて目標に近づくためには欠かせないと思えるようにすることです。

5. まとめ

今回は社会心理学の観点からグループを作る上で大事なポイントを考えていきました。

大事なポイントとして、心理的安全性、グループ内で共有する目標やグループとして集まる目的の共有、ノーム、グループメンバーの自律性の尊重、があります。

このようなポイントが上手く活かせていない時は、リンゲルマン効果やフリーライダー効果のようなネガティブな行動が生まれてしまいます。

このような行動を防ぐには、グループの目標を確認・共有する、ノームを見直してメンバーの自律性を尊重できるような仕組みに変えていくことが効果的です。

近年は対面で人と会ったりグループを作ったりする機会が限られていて、思ったようなコミュニケーションが取れなかったり、グループワークが進められなかったりしているかもしれません。

今回の内容を参考に、充実したグループワークやコミュニケーションに繋げてみてください。

参考文献

Hogg, M. A., & Vaughan, G. M. (2018). Social Psychology eighth edition. Pearson.

Edmondson, A. (1999). Psychological safety and learning behavior in work teams. Administrative science quarterly, 44(2), 350-383.

Ringelmann, M. (1913). Recherches sur les moteurs animes: Travail de l’homme. Annales de l’institut National Agronomique, 2e serie, 12, l-40.

早川 琢也

2007年東海大学理学部情報数理学科卒、2009年東海大学体育学研究科体育学専攻修了。東海大学大学院では実力発揮と競技力向上の為の応用スポーツ心理学を学ぶ。 2014年8月よりテネシー大学運動学専攻スポーツ心理学・運動学習プログラムに在籍。スポーツ心理学に加え、運動学習、質的研究法、カウンセリング心理学、怪我に対するスポーツ心理学など幅広い分野について学ぶ傍ら、同プログラムに所属する教員・学生達のメンタルトレーニングを選手・指導者へ指導する様子を見学し議論に参加する。 2016年8月より同大学教育心理学・カウンセリング学科の学習環境・教育学習プログラムにて博士課程を開始。スポーツスキルを効率良く上達させる練習方法、選手の自主性を育む練習・指導環境のデザインについて研究。2020年11月に博士号(Ph.D.)を取得。現在は、慶應義塾大学兼任研究員として選手の主体性を育める練習環境をテーマに研究を進める一方、NPO法人Compassionのメンバーとしてスポーツ心理学、運動学習、教育心理学などの学術的な理論や研究内容を応用して、子どもが未来に対して希望を持てる心のサポート活動も積極的に行なっている。

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