「こんなに素敵な活動をしている人がいるんだ」
「こんなに面白い新しい作品が世の中にはあるんだ」
「実は世界ではこんな取り組みがされていたんだ」
ニュースや記事をみることで、今まで知らなかった取り組み、活動や作品について知る機会を得たことがある人も大勢いるのではないでしょうか。
中にはその取り組み、活動や作品を知ったきっかけがその活動がある賞に輝いたから、有名な表彰・アワードを受賞していたからという方もいると思います。
今まで知らなかった分野や接点が少ないテーマの活動や取り組みについて知る上で表彰・アワードについて調べるのは有効な手段かもしれません。
では教育でのアワードや表彰制度はどのようなものが存在するのか、それぞれの目的や表彰制度の仕組みはどうなっているのか。
今回は教育者の表彰制度・アワードについて、日本と米国および国際的な表彰・アワードを紹介しながら紐解いていきます。
もくじ
1: 日本での表彰
2: アメリカでの表彰
3: 国際的な表彰グローバルティーチャープライズ
4: 日本発の包括的な表彰制度の立ち上げ
5: まとめ
1. 日本での表彰
日本では各教育委員会や地域が行っている賞や民間企業が行っている教育関連の賞も存在しますが、教育者に焦点を当てた賞としては文部科学省が主催者として実施されている「文部科学大臣優秀教員表彰」が挙げられます。この賞は文部科学省が平成18年度より教職員を対象に学校教育における教育実践とその成果に対して行っているものです。
大きな目的として下記の2つが設定されています。
① 教育実践等に顕著な成果を挙げた教職員の功績を表彰し、広く周知すること
② 教職員の意欲及び資質能力の向上
今までの制度では、公立学校については教育委員会の推薦、国立大学附属学校については学長の推薦、私立学校については都道府県知事の推薦が必要となっていました。
しかし、新しい学習指導要領では社会に開かれた教育課程を実現するということに焦点をあてているため、より社会にも開かれた形で表彰を行うことを目的に教育委員会、大学の学長、都道府県知事以外の民間の団体等からの推薦と有識者による選考によって表彰される「社会に開かれた教育実践奨励賞」が令和2年度から新しく設立されました。
この賞の対象者は現役の国立学校、公立学校または私立学校の教職員となっており、先行基準は下記の9つの点が挙げられています。
①学習指導における特に顕著な成果
②生徒指導、進路指導等における特に顕著な成果
③学校体育や学校保健、学校給食における特に顕著な成果
④特別活動や部活動等の指導による、児童生徒の育成における特に顕著な成果
⑤特別支援教育における特に顕著な成果
⑥地域との連携・協働の推進における特に顕著な成果
⑦ユネスコ活動や国際交流等の分野における特に顕著な成果
⑧学校事務の機能強化や勤務環境の改善等、学校運営の改善における特に顕著な成果
⑨その他学校教育において、他の教職員の模範となるような実践による特に顕著な成果
(文部科学省の「令和3年度文部科学大臣優秀教職員表彰「社会に開かれた教育実践奨励賞」に係る推薦団体の募集について」から抜粋)
全国から推薦された教職員について文部科学省が最終的に審査を行い表彰者を決定しています。
令和2年度は全国から790名(国立20名、公立736名、私立34名)が表彰されました。
2020年度から順次施行されている新しい学習指導要領では「アクティブ・ラーニング」も推奨されています。下記リンク先でアクティブ・ラーニングを実践する際に役立つウェブサイトなどが確認できます。

2. アメリカでの表彰
米国での教育の表彰としては、全米最優秀教員(National Teacher of the Year)が挙げられます。
米国でも日本と同様に数多くの賞が存在していますが、その中でも最も古い賞の一つとして権威もあるのが全米最優秀教員です。
この賞の主催者はNPO法人全米州教育長協議会(The Council of Chief State School Officers:CCSSO)という団体であり、構成員は全米の州の教育長で構成されています。
CCSSOのウェブサイトにも記載されていますが、賞が設立された目的としては、国民に教育の大切さを認識してもらうということとなっています。
380万人いる全米の教育者の中から毎年一人が全米最優秀教員として選ばれています。選考としては、日本の「文部科学大 臣優秀教員表彰」と同様に推薦されることが必要になります。推薦者に関しては学校の関係者ではなく、保護者、生徒や学校以外の方からの推薦が可能となっています。
全米最優秀教員になるためには、まずは自分の州の最優秀教員として選ばれる必要があります。各州や年度によって選考基準は異なりますが、各州で選ばれた最優秀教員の中から、4名のファイナリストへと絞られ、最終的に1名の全米最優秀教員が決定されます。
最優秀教員として選ばれた人は1年間の給与が保証され、勤務校での仕事を離れて、米国や海外を周りながら、教育に関する研修を受けたり、世界中に講演を行いながら自らの力をさらに伸ばすための1年間を過ごします。
例年通りの流れとして受賞者は5月にホワイトハウスにて大統領から祝福を受け、全米最優秀教員としての最初の仕事であるスピーチを行い、そこからは全米や世界を回りながら教育について多くの情報を共有したり、より多くの方が教員として働きたいと思ってもらうための活動を重ねていきます。
海外と日本では受験制度も違っています。リンク先から受験制度の国際比較について詳しく読めます:

3. 国際的な表彰グローバル・ティーチャー・プライズ
一つの国に収まらず国際的な教育の表彰制度・アワードも存在します。
その中でも一躍有名なのが「教育界のノーベル賞」としてもいわれる「グローバル・ティーチャー・プライズ(GTP)」です。
グローバル・ティーチャー・プライズはイギリスのバーキー財団が主催しており、全世界から応募者を募り、10名のファイナリストとその中からさらに1名の最優秀賞が選ばれます。
バーキー財団では、世界が抱えている多くの課題を改善させる上では教育には絶大なる力があると信じており、その教育を日々現場で支えている教員とその教員の社会的立場や価値が非常に重要だと考えています。教員の社会的立場や価値が、新たな教員の募集・採用、定着、仕事の満足度、パフォーマンスに大きな影響を与えると考えており、教員の価値を引き上げるために賞を主催しています。
対象者としては5-18歳の子どもを教えている教員としており、選考基準として下記の点に焦点を当てています。
1. 世界の教育の質に影響を与えるために、再現性と拡張性のある効果的な指導方法を採用すること。
2. 学校/コミュニティ/国が抱える課題に対し、それらの課題に対処するために効果的であることを示唆する十分な証拠を示した革新的な教育方法を採用すること。
3. 教室で実証可能な学生の学習成果を達成していること。
4. 教室以外の地域社会において、教職者や他の人々に卓越した独自のモデルを提供し、影響を与えていること。
5. さまざまな国籍、文化、宗教を持つ人々と生活、仕事、社会生活を共にする可能性のある世界を考え、価値観を大切にする教育を提供することで、子どもたちが地球市民になることを支援する。
6. 教育の水準を高め、ベストプラクティスを共有し、同僚が自分の学校で直面するあらゆる課題を克服するのを助けることで、教育の専門性を向上させる。
7. 政府、全国教育組織、同僚、より広いコミュニティのメンバー、または生徒からの教師として評価を受けている。
上記の選考基準を活用し、多様な分野で活躍している世界中から集まっている審査員が最終評価を行います。
最優秀賞には100万ドルの賞金が与えられ、2021年には8,000以上の応募が全世界から集まっています。
世界の共通課題としてSDGsがあり、SDGsに関わる教育実践も多く見られるようになりました。SDGsについては下記リンク先のブログで詳しく説明しています:

4. 日本発の包括的な表彰制度の立ち上げ
日本や米国または国際的な教育者に対する賞についていくつかの事例を紹介してきました。
教育者を学校の先生と定義して教職員を対象にしている表彰制度・アワードが多い中、より包括的な教育者にスポットライトを当てるために、活育教育財団では新たな教育のアワードとして「Next Education Award」を立ち上げます。
Next Education Award(NEA)とは「今後世界が迎える課題を解決する人は現場から生まれる」という信念のもと、そのような子供を育む教育をしている教育者にスポットライトをあて、表彰する制度です。
各地で行われている素晴らしい教育活動をもっと世の中に知ってもらいたい!
面白い活動を行っている教育者同士がつながれる場所をつくりたい!
そんな想いを発端に活育教育財団では日本から世界へにもつながる教育アワードを目指して、第一回目の開催を実施することになりました。
下記の実践をしている教育者の方を多く募集しております。
①課題を学びに変える実践=活動する地域や子どもの課題に根ざした教育を行い、試行錯誤をともなう実践
②子どもへのポジティブ・インパクト=子どもの変化や成長が定性的・定量的に企図され測られている実践
③コミュニティ/社会/環境/地球への貢献=地域づくりや地域活性化、または環境や地球に良い影響を与え、未来へつながる実践
皆さんが教育を受けたことのある学校の先生、塾の先生、習い事の先生、課外活動で関わった方やお子さんの教育を通して知った方など、素敵な教育活動を引っ張っている多くの教育者にスポットライトをあてるために、ぜひ下記のリンクを共有してください。
Next Education Award: http://nexteducationaward.com/
5. まとめ
今回の記事では教育業界での表彰制度・アワードについて焦点を当てています。
世の中にはたくさんの素敵な取り組みや実践を日々行っている教育者がいます。ただ、多くの場合、その活動内容や取り組みの実践は直接関わっている人のみにしか伝わらない状態になっています。
表彰制度やアワードはそのような日々スポットライトが当たらない活動やそれを引っ張っている人物に焦点を当てることで、より素晴らしい取り組みが周知されること等を目的に多くの国や団体が取り組んでいます。
世界が迎えている様々な課題を乗り越えるためには教育は重要な役割を果たします。
その教育を日々、現場でサポートしている教育者の方々にスポットライトを当てることで、世界の課題がより解決されやすい未来が実現されるかもしれません。
Next Education Awardという教育者を表彰するアワードを設立しました。
第一回目となるアワードに関する詳細を知りたい方は下記をご覧ください。