教育界・ビジネス界で注目を受けているデザイン思考

「いろいろと試したけど効果がない」
「課題は解いたはずなのに、別の問題が発生してしまう」

「解決策」を施しても時間が経つと問題が繰り返し現れる事は大勢の方が経験している。そのような状況では多くの場合、奥深くに隠れている問題の本質を捉えていない可能性がある。そのような行き詰ってしまった状況では、問題へのアプローチを変えることが一つの糸口になるかもしれない。

新たな視点から状況を把握し、課題を深く掘り下げ、問題の本質を探る力を養う創造的な問題解決プロセスとして、教育界およびビジネス界でも注目を受けているのがデザイン思考である。

一般的な問題解決法が集中しがちな問題の延長線上にあるアイデアではなく、今までとは異なる発想を可能とする「デザイン思考」は多くのトップスクールや企業に導入されている。デザイン思考がビジネス界で注目を受けているのは、これまでの方法だけでは新しい発想を試みることに限界を感じている企業が増えているからではないだろうか。

それに合わせるかのように、スタンフォード大学やハーバードビジネススクール等世界のトップスクールを始め、世界中でデザイン思考を取り入れている学校が増えている。デザイン思考のプロセスを提唱してきたデザイン会社のIDEOとスタンフォード大学がまとめた、世界中でデザイン思考に取り組んでいる学校およびプログラムのリストは拡大する一方だ。(http://www.designthinkinginschools.com/

大学などの高等教育に限らず、中等教育や初等教育を行っている学校や団体がリストに含まれていることから、「早い段階からこの手法を身に付けることで、長期的かつ幅広くそれを応用できる」という教育界の期待が感じられる。

パソコンとノートが机の上にある写真

人を中心とした創造的解決プロセス

「デザイン思考」は従来の問題解決法とは異なり、「人」を発想の中心としている。単に表面化している問題を解くのではなく、サービスまたは製品を使用している人の立場から考え、本質的な問題を探る「問題定義」を行う。それにより今まで問題だと定義していた事象とは異なる所にも焦点をあて、チームとともに創造的な解を発想し、形へとつなげることを可能としている。

「どうしたら給食の余りを無駄にしないようにできるか」「どうやって学園祭へもっと人を呼べるか」等の身近な課題から「発展途上国において未熟児の生存率の向上」等、社会が抱えている大きな課題にも適用できる手法である。

デザイン思考では下記の5つのステップを活用して問題解決を実現する。

ステップ1 観察・共感(Observe)
通常の問題解決法では問題に直面した際に、答えを見つけることに思考が働いてしまう。デザイン思考ではまず問題をより深く理解するために、その問題に影響されている人や環境・状況を観察することから始める。

ステップ2 問題定義(Synthesize)
問題の本質的な原因を捉えずに、「解決策」を施しても同じ問題が再浮上してしまう。観察を通して集めた情報をもとに、表面化しているものの奥に隠れている、解くべき問題の本質を追求することが重要である。

strong>ステップ3 アイデア発想(Ideate):
問題の本質を捉えた上で、初めて解決策のアイデア発想を行う。とにかく質より量を重視し、幅広くたくさんの解決策を出していくことが重視されている。どんなアイデアでもまずは肯定し、多様なグループメンバーがあらゆる視点からアイデアを出し合うことで、今まで考えもしなかった発想が訪れる可能性を高めている。

ステップ4 アイデアを形にする(Prototype)
数多く出た発想を組み合わせたりすることで、より磨かれたアイデアが作れる。アイデアの有効性を考えるために試作品・解決プロセス(プロトタイプ)をデザインし、他の人にもアイデアを分かりやすく伝えるために、アイデアを形にしていく。完成度等は気にせず、とりあえず素早くアイデアを形にすることにより、そのアイデアが抱えている問題点や改善点が明確になってくる。

ステップ5 検証・フィードバック(Feedback)
作成したプロトタイプを、実際に問題を抱えていた人に試してもらい、改善点や使った上での感想等の情報を収集していく。フィードバックをもらうことで更なる改善を加えた解決策を模索する。一つの試作品に執着せず、形を変えたり、場合によってはまったく別のアイデアを検討することが重要なポイントである。

「吸引力の変わらない、ただひとつの掃除機」で有名になったダイソンは最終製品に辿り着くまで5172台もプロトタイプを重ねたことで有名である。

小学校から大学まで幅広く教育現場での応用が進んでいるデザイン思考が今後どのように活用されていくのか期待が集まる。