不確実性・複雑さの増すVUCAの時代を背景に、進路や転職の「常識」も変化しています。自己分析法のひとつである「ストレングス・ファインダー」を提供しているギャラップ社が経済学者・心理学者・科学者と150以上の国・文化に共通するウェルビーイングの要素研究をしたところ、ウェルビーイング(人生への満足度)が90%を上回る人に共通する要素として下記5つが挙げられました。

仕事: 自分の時間を自分でコントロールできている、毎日していることが好きである
人間関係: 人生で強い絆の人間関係と愛を持っている
経済: 経済生活(*1)を効果的に過ごしている、自分の思うような経済生活ができている
身体: 健康で日常的に仕事をこなすエネルギーを持っている
地域社会: 生活している地域への帰属意識を持てている

これはコロナ禍で生活が変化した現在でも思い当たるものではないでしょうか。5つのうちいずれかの満足度が低いと、別の進路を考えること・悩むことが表面化してくるそうです。また仕事面で充足感を覚えている人は、人生全体の幸福感が倍以上となっているとの調査結果も併せて公表されています。

*1:経済生活
個人や家庭における「やりくり」のこと。貯蓄だけでなく家計としてお金の収支に気をつけることや、持ち物など資産の管理をすることなどを含む

今回の記事では、学生・社会人に関わらず人生やキャリアにおける進路選択において知っておきたいことをまとめています。ぜひ読んでみてください。

もくじ
1: 人生をつくる「才能(Element)」とは
2: リーディング企業における選考基準・成功に関する考えの変化
3: おわりに:進路について悩むほど「創造力が増す」理由

VUCAの時代と求められるリーダーシップについては、下記ブログで詳しく紹介しています。ぜひ併せてお読みください。

1. 人生をつくる「才能(Element)」とは

英国ウォーリック大学・教育学部の名誉教授でありTEDの世界一有名な講演家でもあるケン・ロビンソン卿 (Sir Ken Robinson) は、著書『才能を磨く(Finding Your Element)』の中で「人生の3原則」として下記を挙げました。

1. 自分の人生は「唯一無二」である
2. 人は「自分自身の人生」を創造している
3. 人生は「生きもの」である

この3点はすべて当たり前に聞こえるかも知れませんが、ケン・ロビンソン卿は「人生そのものが、自分の内面を探る、自分を取り巻く外界に機会を求めて出ていく旅」であるといい、誰一人として「同じ人生」を歩む人はいず、またどこにいても何歳からでも「自分らしい人生」を歩むことができるのだと言います。

ケン・ロビンソン卿は、「才能(Element)とは、それに取り組んでいると時間の感覚が変化するような大好きなこと、と定義しています。たとえば本を読んでいると1時間が5分に感じられる、といったような時間感覚の変化をもたらすものです。

才能(Element)に関連して、自分の力を最大限に発揮する自己管理についての下記のブログが参考になります。

著書『才能を磨く』の中で、ケン・ロビンソン卿は自分の人生を輝かせる才能(Element)を見つける方法をいくつか挙げており「マインドマップ(自分の大切な価値観をマップにして書き出す)」や「ビジョンボード(送りたい人生を表すイメージをコラージュする)」などを紹介しています。

また特に大きな選択をするときに試した方がいい方法として「自己分析の4分割法」を挙げています。進路について考えるときには、1ヶ月の間、週末の1時間ずつ計4時間程度を使って下記に取り組んでみても良いでしょう。

■ 自己分析の4分割法
フォーマットを こちら から参照・ダウンロードできます。よろしければご活用ください。

 1. A3程度の大きな紙を4等分し、4つの長方形をつくる
 2. それぞれの長方形に下記を記す

  上段の2つの長方形には、①強み、②弱みについて書く。

  このとき自分の資質や特徴と向き合い、「才能:時間を忘れて没頭できるものや得意なもの」
  に関する強み弱み・「情熱:好きなことや熱中できること」に関する強み弱み・
  「態度:性格や傾向」に関する強み弱みについてそれぞれ青・赤・緑など3色を使って書くと良い。

  下段の2つの長方形には、③機会、④困難について書く。

  ここには、年齢・責任・リスク・ハードルなど、考えられる現状や環境・リソースについてメリット
  考えられるものを「機会」に、デメリットと考えられるものを「困難」に書く。

 3. 上記を書いた上で、どうすれば自分の強みと情熱を最大限に引き出せるか、下記の問いなどを
  もとに書き出す。ここで考えたことが「あなたの次の一歩」になる

  ・強みを発展させるため、より多くの時間・トレーニングや「これまでとは異なる機会」が必要か?
  ・弱みは何か?その弱みについて、周囲も同じ意見か?その弱みに関する深刻度はどのくらいか?
   弱みを改善するために何ができるか?
  ・どうすれば情熱を追い求めることができるのか?その前にどんな経験を積んでおく必要があるか?
   社会に出て経験・視野を広げる時間も必要か?

またケン・ロビンソン卿は日々取り組むこととして、上記のアップデートのほかに、「情報がありすぎるので、ほんの数分間、心を落ち着けること。自分自身が探りたい事柄に焦点を当てるシンプルな瞑想」を勧めています。

ケン・ロビンソン卿が発表した「世界で最も再生されたTEDトーク」などについては下記から読めます。

2:リーディング企業における選考基準・成功に関する考えの変化

学生の期間を終え社会に出ると、人生≒キャリアとなっていきますが、選考基準や社内におけるポジション就任についてもここ数年で変化があり、思い込みを覆すような調査結果などが公表されています。

企業の採用においては、学歴を問わず、マインドセットやスキルを問うための観点や質問・経験が重視されるようになっています。4つの会社の例を挙げます。

1. フェイスブック社 Facebook, Inc.
採用応募者の評価において、3つの観点から応募者の同社における活躍の可能性を評価する。その3つの観点とは応募者の①強み②創造力③困難を乗り越えて学ぶ力である

2. スペースX社 Space Exploration Technologies Corp. (SpaceX: 月旅行ロケットで有名。連続起業家イーロン・マスク(Elon Musk)氏がCEO)
大学卒業資格を問わない。能力・スキルを重視し、キャリアについて「どのような困難に立ち向かい、 肝心なときにどのような意思決定をしたのか」を質問する

3. IBM社 International Business Machines Corporation (IBM)
学歴不問の採用を始め、特にIT分野でのスキル採用に注力している。2017年時点では米国における新入社員の15%が4年制大学・大学院の学位保有者ではなかった

4. グーグル社 Google LLC
2020年7月にオンラインプログラム・MOOCsを提供するCourseraと連携し、新しい認定資格プログラムを発表。修了すれば、Googleの求人において大卒同等の資格として扱う。プログラムは、授業料が300ドル・期間6カ月

自分を見つめ直す時期や機関について、「ギャップイヤー」のブログで詳しく読めます。

キャリアに関して、デューク大学 ヴィヴェク・ワドワ教授(Prof. Vivek Wadhwa)の調査についても共有します。

ワドワ教授は500社以上のテクノロジー企業で、CEOとプロダクトエンジニアリングのトップたちに調査を行いました。652名のトップ・マネジメントに調査したところ、
 工学あるいは数学の学位保有者は 4割
 経営学・人文科学系の学位保有者が 6割
ということが明らかになりました。

またワドワ教授はこの調査から
人々・事業を成功に導くのは、動機とやる気、ミスから学ぶ能力、そしてハードワークである
という結論を導きました。

先述したように、才能(Element)のうちの強み・情熱が活かされることが、仕事の成功にとっても必要だということを裏付けています。

3: おわりに:進路について悩むほど「創造力が増す」理由

人間は、進路について悩んだときほど想像力・創造力が高まります。
それは悩むことが「将来どうなりたいか?」「どんな状況を望んでいるか?」「どのような社会を目指すのか?」を自分や事業・所属組織に問い、イメージする・言語化することだからです。また問いに向き合い、実現するためのスキルや知識を積み上げることで、自分や周囲・社会の未来への選択肢が広がるのです。

自分の人生や進路について悩むことは、決してネガティブなことではありません。悩みながら、上記の問いや自分の才能(Element)について考え行動してはいかがでしょうか。

悩みにぶつかって逆境を乗り越える力=「レジリエンス」について、下記のブログで詳しく紹介しています。併せて読んでみてください。

◆参考リソース:

・The Five Essential Elements of Well-Being – Gallup
https://www.gallup.com/workplace/237020/five-essential-elements.aspx

・Finding Your Element | Sir Ken Robinson – Youtube
https://www.youtube.com/watch?v=17fbxRQgMlU

・Resumes Are a Terrible Way to Hire People – Bloomberg Quint
https://www.bloombergquint.com/gadfly/resumes-are-a-terrible-way-to-hire-people

・21 Interview Questions You Need to Nail to Work for Elon Musk – vault
https://www.vault.com/blogs/interviewing/21-interview-questions-you-need-to-nail-to-work-for-elon-musk

・Why IBM wants to hire employees who don’t have a 4-year college degree – CNBC Make it
https://www.cnbc.com/2017/11/07/why-ibm-wants-to-hire-employees-who-dont-have-a-4-year-college-degree.html

・グーグルが6カ月間、300ドルで大学卒業と同等の認定資格プログラムを発表|Sangmin Ahn – note
https://note.com/sangmin/n/n912224a6a9a2

・Google ITサポート プロフェッショナル認定 – Coursera
https://www.coursera.org/professional-certificates/google-it-support

・Education and Tech Entrepreneurship | Vivek Wadhwa – SSRN
https://papers.ssrn.com/sol3/papers.cfm?abstract_id=1127248