世界にはたくさんの表彰制度やアワードが存在します。

教育者にスポットライトを当てる表彰制度も数多く存在し、それぞれが特徴的な活動を行なっている教育者を選定しています。

では具体的にどのような活動を行なっている教育者が表彰されているのでしょうか。

また、表彰されている教員や事例を見ることでどのようなことが読み解けるのか。

今回の記事では世界的にも有名なグローバルティーチャープライズでの表彰例を紹介しながら上記の問いを紐解いていきます。

教育でのアワードや表彰制度はどのようなものが存在するのか、それぞれの目的や表彰制度の仕組みはどうなっているのか等の詳細を知りたい方は下記の記事をご覧ください:

もくじ
1: 過去の日本人の受賞者:グローバルティーチャープライズ
2: 過去の受賞者:グローバルティーチャープライズ
3: 地域の課題に取り組む
4: Next Education Award:日本発の教育者のアワード
5: まとめ

1. 過去の日本人の受賞者:グローバルティーチャープライズ

世界各地で行われている教育の表彰制度・アワードの中でも最も有名なアワードの一つが「教育界のノーベル賞」ともいわれる「グローバル・ティーチャー・プライズ(GTP)」です。

グローバル・ティーチャー・プライズはイギリスのバーキー財団が主催しており、全世界から応募者を毎年募っています。

2021年には8000以上の応募があり、年によっては数万を超える応募の中からまずは50名のファイナリストが選定されます。そこから更に絞られた10名のファイナリストと、最終的には10名の中から1名の最優秀賞が選ばれます。

2015年から行われている賞ですが、実はファイナリストに日本からの先生が3名も過去に選ばれていることをご存知でしょうか。

2016年に日本人として初めてトップ10ファイナリストとして選ばれたのは当時工学院大学附属中学校・高等学校で教員として活躍されていた高橋一也先生です。

高橋先生は、レゴを活用した授業で思考力を養うレッスンや、日本の高校生がをインドネシアへ連れていき、現地で起きているゴミ問題の解決策を導きだすプログラム等、グローバルな視野をもった活動を実施している点が評価されています。

高橋先生の次にグローバルティーチャプライズのファイナリストとして選定されたのが、2018年にトップ50ファイナリストに選ばれた滋賀県立米原高等学校 英語科の堀尾美央先生です。

堀尾先生は、海外との遠隔交流授業を積極的に実施し、地方にいる生徒でもテクノロジーを活用し海外と繋がる授業を展開していました。実際に海外にいる人たちと繋がることで生徒たちが英語を学ぶ重要性や必要性をより強く実感することができる授業展開を仕掛けたことが評価されています。

2019年には立命館小学校で英語を教える正頭英和​​先生がグローバルティーチャプライズのトップ10ファイナリストに選出されました。正頭先生は、ICTを有効的に活用し、英語学習、プログラミングや教科を超えた取り組みを実施していたことが評価されています。

過去の日本人の受賞者の例を見ると、英語教育とテクノロジーを活用した事例がピックアップされていることがみられます。どのようにテクノロジーを教育の中で有効に活用するのか、またどのようにより効果的な英語学習を行うのか等、国としても取り掛かろうとしている大きな課題に対してユニークかつ結果を残している事例がピックアップされています。

英語だけでなく身につけるべき力とは?不確実性が高い時代に求められるスキルについて、下記リンク先でまとめています:

ではグローバルティーチャープライズの最優秀賞の受賞者はどのような方々なのか?

2. 過去の受賞者:グローバルティーチャープライズ

グローバルティーチャープライズの最優秀賞の受賞者を少し遡り、2019年から2021年の過去3年間の受賞者をご紹介します。

2019年:ケニアのPeter Tabichi

2019年に受賞したのはケニアのPeter Tabichi(ピーター・タビチ)さんです。タビチさんは理科の先生で月収の8割を貧しい人々のために寄付しています。彼の献身的な態度と生徒の才能を信じる情熱によって、ケニアの片田舎にある彼の学校は、全国科学コンテストで国内の優秀校と対戦し、勝利を収めるほど成長しています。その献身的な活動がタビチさんの表彰に繋がっています。

彼の学校がある地域では干ばつや飢餓が頻繁に起こり、地域住民の生活は厳しいものです。タビチさんの学校の生徒の95%は貧困に直面しており、約1/3は孤児か片親です。家庭ではまともな食事ができない生徒も多くいる状況です。

もちろん、そのような中で学校の設備も十分に揃っていない状況であり、タビチさんの学校はコンピューターが1台しかなく、インターネット環境もあまり整っていない状況です。また生徒と教師の比率が58対1であり、個別のサポートが難しい状況にありました。これらの条件のもとで生徒の生活状況を立て直すことは容易ではありません。

そんな中でもタビチさんは80%の授業にICTを活用し、生徒の学びをサポートし続けました。授業外でも1対1のサポートを行なったり、生徒の家庭に足を運び彼らが日常的にどのような課題に直面しているのかをより深く理解するなど努力を重ねていきました。タビチさんの授業内外の熱心な活動により、3年間で学校の入学者数は400名へと倍増し、大学や短大への進学者も増えています。

2020年:インドのRanjitsinh Disale

2020年に受賞したのはRanjitsinh Disale(ランジシン・ディセール)さんです。彼の活動は地域の多くの少女たちの人生を変えています。その彼の活動と地域へのインパクトが表彰されています。

彼の学校に通う少女たちの多くは部族出身で、学校への出席率が2%程度ということもあり、10代での結婚も頻繁に行われる地域でした。学校に通える場合でも、カリキュラムが生徒たちの母国語であるカンナダ語ではないため、多くの生徒がまったく学ぶことができない状態でした。

ディセールさんはこの状況を打破するために、積極的に現地の言葉を学びました。教科書を現地の言葉に訳すだけではなく、生徒がより教材にアクセスできるように教科書にQRコードを入れ込み、ビデオレッスンや課題にアクセスできるよう工夫を重ねていきました。また、それぞれの提出課題を分析することによって、生徒たちがそれぞれ抱えている課題を把握し、それに基づいてQRコードでアクセスできるアクティビティや課題を個別に調整し、各生徒に特化した学びの個別化を実践していました。

彼の献身的な活動が地域にもたらしたインパクトは絶大でした。学校が所属している村での10代の結婚がゼロになり、学校への女子の出席率も100パーセントになりました。​​彼の学校は地区で最も優秀な学校として表彰され、彼の生徒の85%が毎年地域で行われる試験でAグレードを獲得しています。彼の学校を卒業した女子生徒の一人が大学卒業まで進み、彼が来る以前の状態では想像できなかったことが起き始めています。

学習の個別化に関しては、こちらの記事をお読みください。

2021年:米国のKeishia Thorpe

2021年に受賞したのは米国のKeishia Thorpe(ケイシャ・ソープ)さんです。ソープさんはメリーランド州ブラデンズバーグにあるインターナショナル・ハイスクール・ラングレー・パークで低所得のアメリカ人一世、移民/難民の生徒を対象に英語を教えています。彼女が行なっているサポートによって実現されている生徒たちの大学入学の実績が受賞へと繋がっています。

彼女が所属している学校の生徒の全員が英語を母国語としない英語学習者です。学校に通う95%の生徒が低所得者で、85%がヒスパニック系の学生です。ソープさん自身も幼少期に貧困と暴力から逃れるためにジャマイカから米国へと移住した経験があり、全米の49.8%の生徒が多様な背景を持っている中、教員は87%が白人であることに違和感を覚え、教員の道へ進みました。

ソープさんは16年間の教師生活の中で、大学受験生や学生アスリートの指導に専念し、より多くの生徒が学資援助、全額奨学金にアクセスできるように活動を続けてきました。彼女の活動によって多くの生徒が大学進学を実現しており、彼女が指導した2018-2019年の卒業生だけを見ても総額670万ドルの奨学金を獲得しており、多くの生徒が全額奨学金を受けて進学しています。

3. 地域の課題に取り組む

2019年から2021年のグローバルティーチャープライズの最優秀賞受賞者の実績をご紹介しましたが、受賞した先生方のそれぞれが、自分が抱えている生徒だけではなく、地域全体にポジティブなインパクトを与えていることが見受けられます。

また地域へのポジティブなインパクトを与える上でそれぞれが各地域の課題に対して、学校という枠を超えて地域の課題を理解するために努力を重ねていることが垣間見れます。

ケニアでの貧困地域での教育の課題、インドでの女子教育の課題、アメリカでの移民/貧困地域の教育の課題など、各受賞者が地域の課題に特化していると同時にそれぞれが所属している国が抱えている大きな課題を象徴しているようにも思えます。

このような教育者の活動と実績を表彰することによって、それぞれの活動を讃えるだけではなく、同じような課題を抱えている地域で活動している教育者やコミュニティにも希望を与えているのではないでしょうか。

地域課題に対しては、日本国内でも様々な学校が独自の授業を工夫しています。小学校から高校までの様々な事例について、下記リンク先から詳しく読めます:

4. Next Education Award:日本発の教育者のアワード

教育者を学校の先生と定義して教職員を対象にしている表彰制度・アワードが多い中、より包括的な教育者にスポットライトを当てるために、活育教育財団では新たな教育のアワードとして「Next Education Award」を立ち上げます。

Next Education Award(NEA)とは「今後世界が迎える課題を解決する人は現場から生まれる」という信念のもと、そのような子供を育む教育をしている教育者にスポットライトをあて、表彰する制度です。

各地で行われている素晴らしい教育活動をもっと世の中に知ってもらいたい!

そんな想いを発端に活育教育財団では日本から世界へもつながる教育アワードを目指して、第一回目の開催を実施することになりました。

下記の実践をしている教育者の方を広く募集しております。

①課題を学びに変える実践=活動する地域や子どもの課題に根ざした教育を行い、試行錯誤をともなう実践

②子どもへのポジティブ・インパクト=子どもの変化や成長が定性的・定量的に企図され測られている実践

③コミュニティ/社会/環境/地球への貢献=地域づくりや地域活性化、または環境や地球に良い影響を与え、未来へつながる実践

教育者が行なっている活動が生徒だけでなく、地域の課題にもポジティブなインパクトをもたらすことができること、またそれが未来へ繋がるという実践をお待ちしております。

Next Education Award: http://nexteducationaward.com/

5. まとめ

今回の記事では教育業界での表彰制度・アワードの過去の受賞者にスポットライトを当て、どのような活動が表彰されてきたのかを紹介してきました。

一人ひとりの受賞者に関して今回はキーポイントのみを紹介する形になりましたが、それぞれの受賞の背景には教育者のストーリーや想いが詰まっていることが活動を通しても見受けられます。

また今回ピックアップした受賞者それぞれの活動から教育実践のインパクトは教室や生徒だけには止まらず、コミュニティへもポジティブなインパクトを与える可能性が感じられます。

多くの課題に取り組んでいる教育者やその実践にスポットライトを当てることで、同じような課題を抱えているコミュニティにも新たな希望を与えることができるかもしれません。