新年度は、環境が新しく変わる人や、「何か新しいことを始めよう!」と考える人が多い時期ですね。期待に胸を膨らませている人もいれば、中には不安を覚えてしまう人も少なくありません。

「新しい学校や職場で上手くやっていけるのだろうか」

「自分は変わらず、このままでいいのだろうか」

そんな不安を解消し、快適に過ごすには、まず不安について知ることが大切です。
特に日本人はこの「不安」という感情を強く感じる傾向があると言われています。

なぜ日本人は不安を感じやすいのか、不安を感じた際にどのように乗り越えていけばよいのかを紐解いていきたいと思います。

もくじ
1. 不安とはー不安を感じる脳の仕組みー
2. 不安遺伝子ー世界で最も不安を感じる日本人
3. 日本人が不安を感じやすい理由
4. 不安を乗り越える方法
5. まとめ


1. 不安とはー不安を感じる脳の仕組みー

まず不安が生まれるメカニズムをみていきたいと思います。
いくつかある脳内物質(ホルモン)の中で、3大脳内ホルモンといわれるものがあります。

それは「セロトニン」、「ノルアドレナリン」、そして「ドーパミン」です。

①「セロトニン」は不安感を抑え、楽観性を増す脳内物質です。精神を安定させる物質です。

②「ノルアドレナリン」は興奮や覚醒をつかさどる物質で、これが多いと活動的になります。ただ、ストレスに対しても反応します。例えば、危険を感じた時(つまりはストレス時)の反応として、ノルアドレナリンが分泌されます。

③「ドーパミン」は新規探索志向、つまり好奇心の源といわれる物質です。

このうち「不安」に直結する物質が「セロトニン」で、精神の安定に寄与するホルモンです。
何かストレスがかかると、脳全体に突起を伸ばしている神経から「ノルアドレナリン(恐怖、驚きなど)」や「ドーパミン(喜び、快楽など)」などの神経伝達物質が放出されますが、それらをコントロールし、精神を安定させる働きがセロトニンにあります。

セロトニンは、神経終末(前シナプス)から放出され、後シナプスの受容体に結合し、情報伝達を行います。セロトニンの役割はノルアドレナリン(ストレス物質)の作用を抑えて不安を鎮めること、ドーパミン(快楽物質)の作用を抑えて満足感を与えることにあります。

放出されたセロトニンは分解されるのですが、一部は前シナプスに回収され、リサイクルされます。このセロトニンを再回収するのが「セロトニントランスポーター」です。

そのため、セロトニントランスポーターの少ない人はセロトニン不足に陥りやすく、攻撃性が高まったり、鬱やパニックなどの精神症状を発症したり、満足感を得られず不安行動をとるといった症状に結び付く傾向があります。

2. 不安遺伝子ー世界で最も不安を感じる日本人

セロトニントランスポーターには遺伝子量の多い「L型(ロング)」と遺伝子量の少ない「S型(ショート)」の2種類があります。

L型はセロトニンを多く作り、S型は少なく作ります。S型はセロトニンの量が少ないため、「不安遺伝子」と言われています。

遺伝子の型は「SS型」、「SL型」、「LL型」の3種類の組み合わせです。

「SS型」の遺伝子を持っている人は不安を感じやすい人、「LL型」の遺伝子を持っている人は楽観的な人、「SL型」はその中間ということになります。

不安を感じやすいかどうかは、ある程度、生まれつき決まっているのです。

セロトニントランスポーター遺伝子に「L型」を持つ人の割合は人種により異なり、アフリカ人>アメリカ人>アジア人です。世界全体をみても、アジア人にL型が少なく、不安を感じやすい傾向があるようです。

「S型」遺伝子(不安遺伝子)保有は日本人80.25%、中国人75.2%、台湾人70.57%、スペイン人46.75%、アメリカ人44.53%、南アフリカ人27.79%となっています。

調査によれば、特に日本人では「SS型」が最も多く、全体の68.2%を占めます。
アメリカ人のSS型は全体の18.8%なので、日本と比べると大きな差があります。

「LL型」遺伝子を持つ人(セロトニンの多い人:前向きな人が多く、ストレスを感じる状況でも精神的に安定していると言われています)はアメリカ人では32.3%で、日本人ではたった1.7%の人しか保有していないことが明らかになりました。

セロトニントランスポーター遺伝子が少ない(SS型)人は、放出されたセロトニンがリサイクルされずに体外に排出され、その結果、慢性的にセロトニン不足に陥ります。

日本人はそもそも遺伝的に不安を感じやすい傾向にあり、そのため事前にいろいろ準備をしたり、細部まで細かく目を通すのではないかといわれています。

3. 日本人が不安を感じやすい理由

なぜ日本人は心配性の「SS型」が多いのでしょうか。その理由は定かにはなっておらず様々な説があります。

有力な説として挙げられるのは、災害大国であるということです。

日本は世界でも有数な災害大国であり、地震、津波、台風、暴風、豪雨、豪雪、洪水、高潮、噴火など様々な災害が各地で発生しています。

日本の国土の面積は全世界のたった0.28%しかありません。しかし、全世界で起こったマグニチュード6以上の地震の20.5%が日本で起こり、全世界の活火山の7.0%が日本にあります。

また、全世界で災害で死亡する人の0.3%が日本、全世界の災害で受けた被害金額の11.9%が日本の被害金額となっています。
このように、日本は世界でも災害の割合が高い国なのです。

もし、日本において「LL型」の人が多く、「なんとかなる」と楽観的にかまえていたら、いざというときに対応することができず、多くの人が亡くなってしまう危険があります。

自分一人の判断で行動せず、共同体の全員で協力し合い、災害から住民を守るために、日本人は不安遺伝子を育ててきた可能性があります。

そういった意味では、不安遺伝子は、長期的な目線で何がリスクかを考え、リスクを回避するための施策や備蓄などができるため、計画的な行動や貯金が得意な国民性を育むのにも一役買いました。

日本では、個人が保有する2019年9月末時点の金融資産の残高は1864兆円となっており、単純に人口で割ると1人あたりの金融資産額は1470万円ということになります。世界でも有数な個人資産保有国なのです。

ただ、災害をある程度、事前に予測し、克服できるようになった今、過剰な心配や不安は必要なものではなくなってきています。どのように過剰なまでの強い不安感を緩和させることができるのでしょうか?次はその方法を探っていきたいと思います。

日本人が得意な協働するチームでの取り組み。
チームワークと効果的なチームが持つ心理的安全性についてはこちらの記事を御覧ください。

4. 不安を乗り越える方法

日本人が遺伝的に不安を感じやすい傾向であることは分かりました。しかし、強い不安から動けなくなってしまったり、止まってしまうのは非常にもったいない話です。

不安を感じたときにどのような行動をすれば、いいのでしょうか?

そんな時には「認知行動療法」がいいといわれています。

「認知行動療法」とは、自分が不安に思うもの、その源泉が何なのかということを論理的に解明していく方法です。多くの方が、なんとなく漠然とした不安感をもたれているのではないでしょうか?

原因を具体的に突き止められれば、その原因を取り除けばいいだけなのです。たとえ簡単に取り除けないとしても、どうすればリスクを減らしていけるのか、どう行動すればいいかが明確になります。また、その結果、あり得る最悪の状況を考えて、その状況は回避できるようになるのです。

「不安」は明確化すると課題に変わります。イメージできないものをコントロールすることはできません。

逆に言えば、漠然とした不安だから対処できずに、ただただ怯えてしまうのです。
その姿形をしっかりと思い描くことができれば、多くの場合、対処できるようになります。

アメリカ認知治療研究所の創設者であり、国際認知療法学会会長であるロバート・リーヒ氏の著書「不安な心の癒し方」によると、アメリカでは約37%の人が、毎日のように不安を感じており、これらの心配性の人に対し、何が心配なのか、この先何が起こるのかについて、二週間記録してもらいました。

すると、心配事の85%は、実際には「良いこと」が起き、残りの15%(悪いこと)においても、そのうち79%は、当初想定していたよりも良い結果につながったことが分かりました。

計算すると、なんと97%もの心配事がとり越し苦労だったことになります。このように漠然とした多くの不安が想像上のものであり、現実に起きないことが証明されています。

にも関わらず、心配性の人たちは、何か事が起きたときにはネガティブなことばかり考え、マイナスの情報を集めてしまいます。こうして、ますます不安に陥っていくのです。

実際に不安を感じたときは、その不安がどのようなものなのか、なぜ生じているのかを言葉にして明確にしてみる。するとそれを解決するための手段や方法をいくつか思い描くことができます。

例えそれを自分一人で解決することはできなくとも、他者の手を借りればどうにか解決できるはずです。

不安から逃れるには、実際に明確にして行動することが一番で、行動することで、徐々に事態が把握できるようになり、対処法もまたわかってきます。成果は行動からしか生まれず、自信は成果からしか生まれません。

人前で話す緊張や不安を乗り越える具体的な方法はこちらのリンクを御覧ください。

人に助けを求めるには、時には弱さを曝け出すことも大切です。「弱さを見せる」行動についてはこちらのリンクをご覧ください。

5. まとめ

いかがでしたでしょうか。日本人が不安遺伝子を多く持っている事実に驚いた方も、納得された方も多かったのではないでしょうか。

日本人は新しいことへの挑戦や0から1を作り出すことが苦手だとされる傾向がありますが、決してそうではありません。

あくまで遺伝子という観点から不安を感じやすい傾向にはありますが、研究によるとこういった特性はいくらでも後天的に変わっていけることが分かっています。

リスク感度の高さや長期的な視点で物事を考え、判断できる強みを活かしながら、不安を明確にし、コントロールすることができればいくらでも新しいことに挑戦していくことができます。

大切なのは自身の特徴や傾向を掴みながら、それにどう向き合って乗り越えていくかです。

色んなことに挑戦して一度しかない人生を楽しんでいきましょう。

自分の特徴や傾向と向き合うことに興味ある方は下記のブログをご覧ください。