新年の抱負や年度始めの目標に、「今年一年は◯◯をする」といった目標を立てた人は多いのではないでしょうか。

ですが、立てた目標を覚えていますか?今年一年実行すると決めた事はまだ続いていますか?

三日坊主になってしまう事や目標を立ててそれっきりにしてしまう事は、多くの人が経験した事があると思います。

では、なぜやると決めた事を続けるのは難しいのでしょうか?

今回は継続に関わる理論やメカニズムについてご紹介していきながら、改めて物事を継続することについても一緒に考えていければと思っています。

もくじ
1: 目標を立てても続かない理由
2: 設定した目標に対する進捗を確認するシステムを作る
3: 自己調整学習サイクルの実践例
4: 自己調整学習サイクルを作るためのヒント
5: まとめ 

1. 目標を立てても続かない理由

勉強や物事が続かない理由を考えていくと、大きな理由から些細な理由まで、数多くの続かない理由が挙げられるでしょう。

多くの人が直面しそうな2つの大きな理由があります。

理由1:立てた目標が漠然としている

例えば、次の定期テストで「いい点数を取る」と目標を立てたことがある人は多いのではないでしょうか?

ですが、いい点数とは具体的に何点を目指しますか?
その点数を取るために、どんな勉強をして自分が苦手にしている部分を克服していきますか?
テストでいい点を取りたいと思った理由や、いい点数を取ると自分にとってどんなメリットがありますか?

目標は達成したい物事に対して行動を起こすための方法として使われます

ですが、目標設定の原理原則を踏まえていなかったり、立てた目標があいまいだったりすると、立てた目標に対して行動を起こす意欲が湧きにくくなります。

前述の質問は、目標の具体性を確認する質問の一部ですが、目標を立てる際には研究で効果があると認められた内容を活用することで、目標達成に向けてやるべきことを続けやすくできます。

理由2:目標を立ててそれっきりにしている

冒頭に挙げた、新年や年度始めに立てた目標意外にも、受験に向けて立てた目標や社会人として成し遂げたい事など、節目に大きな目標を立てたことは誰もが一度は経験していることでしょう。

しかし、目標を立てたら立てっぱなしになっていることが多いようにも見受けられます。

立てた目標への経過を確認したり、目標達成に必要な取り組みを振り返ったりするからこそ、自分自身が目標にどれだけ近づけて、その過程でどんな学びを得たのかを実感することができます。

立てた目標にに対する進捗を定期的に確認することで、目標達成に必要な取り組みが継続しやすくなります。

2. 設定した目標に対する進捗を確認するシステムを作る

物事の継続のコツは、続けたいことが達成したい目標に近づく取り組みであるという実感を持つことです。

そこで必要になってくるのが、詳細な目標設定目標に対する進捗を確認するシステムを作って実行することです。

目標設定の原則:8つのポイント

目標設定の原理原則を説明している研究はいくつかありますが、その中でも教育心理学研究者のバリー・ジマーマン博士が提唱している目標設定における8つのポイントをご紹介します。

1:具体的な目標である
2:短期目標は成長へとつなげやすい
3:短期目標は段階的に立てて長期目標へとつなげる
4:自分の目標に対して周囲の理解がある
5:簡単すぎず難し過ぎない挑戦的な目標である
6:誰かに決められていない、自分の意思で決めた目標である
7:目標を振り返って気づきを得る
8:成長が強調されている目標設定である

この8つのポイントはどうのように目標を立てればいいかだけではなく、立てた目標をどのように扱えばいいかまで言及しているのがポイントです。

例えば、7つ目に挙げている目標を振り返って気づきを得ることに触れていて、目標は立てるだけでなく振り返って取り組んだ状況から学ぶ必要性に触れています。

他に興味深いポイントとして周囲から理解を得る重要性を挙げているところです。

例えば、子どもがプロスポーツ選手になりたいと思っていても両親が反対していたらその目標を達成するのが難しくなってしまいます。周囲の理解が目標設定の達成に与える影響は重要です。

上記の8つのこれらの原理原則を踏まえて、まずは長期的な目標を立てることがスタートポイントになります。

目標に対する進捗を確認するシステム作り:自己調整学習サイクルとは?

立てた目標の進捗を定期的に確認するには、
(1)目標と達成に必要な取り組みの設定
(2)取り組みを続けるためのストラテジーの実行
(3)取り組み全体の振り返り
(4)振り返りを基に目標と取り組みの再設定

の4ステップでサイクルを回していくのが効果的です。

このサイクルは自己調整学習サイクルと呼ばれる、教育心理学で使われる理論的枠組みです(図1)。

上記の図の「予見」が(1)にあたり、「遂行制御」が(2)にあたり、「自己省察」が(3)にあたり、自己省察から予見に戻るフェーズが(4)にあたります。

自己調整学習サイクルの詳細について

もう少し詳しく自己調整学習サイクルを見ていきましょう。

まず最初に、先ほど立てた長期的な目標を確認します。この目標は、自己調整学習サイクルに入る前の下準備となります。

時間をかけて達成したい大きい目標を描き、その目標をこの後に立てる小さな目標を1つずつ達成しながら近づいていくようなイメージを描きます。

長期目標を達成するプロセスは時間もかかり、予定通り行かないことも多いです。長期間取り組み続けるためにも、自分の興味や好きなことに基づくような目標を立てて内発的な動機を上手く利用するのが有効的です。

内発的な動機についてもっと詳しく知りたい方はこちらをご覧ください:

(1)目標と達成に必要な取り組みの設定

自己調整学習サイクル最初のステップは、この長期的な目標に近づくための短期的な目標や取り組みを定めます。

長期的な目標は現在地から遠い目標であるため、達成できるかどうかの実感が湧きにくいものです。

そこで、「この目標を達成したら目指す大きな目標に一歩近づける」と思えるような短期目標を立てます。

短期目標を立てる際には、前述の目標設定をする上でのポイントを踏まえて詳細な目標を立てるのが重要になります。

2)取り組みを続けるためのストラテジーの実行

自己調整学習サイクルの次のステップでは、大きな目標達成に必要な取り組みを実行したり継続するためのストラテジーを決めます。

このストラテジーとは、決めた取り組みを実行する手助けをしてくれるようなアクションや取り組みを意味します。

例えば、立てた目標を思い出すためのリマインダーを用意することや、空き時間などのスケジュールを管理するためのタイムマネジメントなどが該当します。

他にも、集中して取り組むための集中力を維持するためのプランやアクション、目標達成のために行っている最中の自分を客観視することも、取り組みの継続のためのストラテジーに含むことができます。

ストラテジーを決める際には、目標達成に必要な取り組みの継続を手助けしてくれるかという観点から判断するのが大切です。

(3)取り組み全体の振り返り

3つ目のステップでは上記のストラテジーを用いて目標達成のための取り組みを行った後に、実際にやってみてどうだったかを振り返ります。振り返りを通して、次の取り組みをより良くするためのヒントを探ります。

振り返りの時間は後回しにされたり重要性が低いと見られがちですが、学習効果を高める上では欠かせないくらい重要なアクティビティです。

まず、振り返りを通して取り組んだことが実際に効果があったかどうかを評価します。
この時、もっと効果のある別の方法を選んだ方がいいと分かれば軌道修正できます。
よかった取り組みであれば、引き続き継続していきます

他にも、振り返りで取り組んだ内容を思い出す過程は一度学んだことを再度覚える作業となり、学習効果を高める期待もあります。

思い出す以外にも、得た教訓や次の取り組みをよくするヒントを見るける上でも、振り返りは役に立ちます。

(4)振り返りを基に目標と取り組みの再設定

そして、この学びやヒントを活かして最初に立てた取り組みを継続するか別の方法にするかを検討して、目標達成のための取り組みを再度設定して最初のステップに戻ります。

再度目標設定する際には、一つ前で行った振り返りで得た学びや知見がとても役に立ちます。

この振り返りで得た学びがないまま再度目標設定してしまうと、あまり効果のない取り組みを続けてしまう可能性が出てきてしまいます。

取り組みに対する軌道修正と学習効果の高さを活かすことで、次に立てる短期的な目標も長期的な目標へ繋げていけます。

この一連のサイクルを回しながら長期的な目標に近づいていく過程で、必要な取り組みが目標達成には欠かせないことが分かると、継続して取り組みやすくなります。

振り返りの重要性に関しては下記リンク先の記事も参考になります:

3. 自己調整学習サイクルの実践例

定期テストに対して目標を立てた生徒さんの例を用いて、自己調整学習サイクルがどのように進んでいくかを見てみましょう。

(1)目標と達成に必要な取り組みの設定
次の定期テストで全教科8割以上の点数を取ると長期的な目標を定めます。 その目標を達成するための取り組みとして帰宅後に苦手な英語の勉強を1時間やると設定します。

(2)取り組みを続けるためのストラテジーの実行
この帰宅後1時間の勉強を実行するためのストラテジーを立てるのが、自己調整学習サイクルの2つ目のステップです。

日々の時間管理(タイムマネージメント)をして勉強のスケジュールを決める、勉強に集中するためにスマートフォンを自分が勉強する別の部屋に置いておく、などの具体的なストラテジーがが考えられます。

(3)取り組み全体の振り返り
勉強が終わった後に実際にどの程度勉強出来たか、スマートフォンを遠ざけて集中出来たか、1時間の勉強時間は妥当だったか、など振り返ります。

4)振り返りを基に目標と取り組みの再設定
スマートフォンが近くに無かったことで集中することは出来たが、勉強時間よりも中身の方が大事だと気づき、明日からの勉強は音読をしながら単語を覚える練習をすることに決めた。

上記のようなこのサイクルが続くことで必要な取り組みを継続することにつながります。目標達成に必要な取り組みそのものが変わる事もあると思いますが、目標達成への歩みは続いています。

4. 自己調整学習サイクルを作るためのヒント

(1)続けたいことが達成したい目標にどう関係しているかを考える

よくあるケースとして、手段が目的になってしまい、続けたいことに取り組む事その物が目的になっている事が挙げられます。

そこで必要になるのが、続けたいことが達成したい目標達成にどう役に立つのかを考えてみることです。

もし毎日新しい英単語を10個単語を暗記することを続けたいのであれば、なぜ続けたいのか?続けるとどんな目標達成につながるのか?続けたいことは達成したい目標に近づく取り組みだろうか?

など、目標と続けたいことの関係を探ってみましょう。

もし目標達成には他の取り組みの方がいいのであれば、より良い取り組みを選ぶべきです。

全科目で8割以上の得点を取る方法は毎日10個の単語を暗記する意外にも効果的な方法はあるかもしれません。

大事なのは、目標達成のために必要な取り組みを続けることです。

(2)継続を妨害する要素を見つけて対処する

目標が定まり必要な取り組みも決まっていざ取り組んでみたものの、他のことに気を取られて頓挫した経験は珍しくはないでしょう。

長く取り組んでいればできない日が出てきてしまうこともあります。長い目で見た時には、挫折してしまった後にすぐに再開することで結果的には長期間に渡って継続することにもつながります。

そこで、上手くいかなかった時の経験を活かして将来起こりそうな妨害要素への対処方法を用意しておくのが、継続する上では効果的です。

まず継続を妨げられた要因をリストアップします。

パソコンで作業している最中にSNSを開いてしまった、帰る時間が遅くなった、など思いつく物事を洗い出してみましょう。

そして、出てきた妨害要素に対処方法を考えていきます。

例えば、先ほどの「スマートフォンを別室に置いて勉強に集中しやすくする」もひとつの例です。

このように事前に対処方法を用意しておくことで、いざ妨害されそうな場面に出くわした時にも対応することができます。

目標設定に関して、下記リンク先で「SMARTの法則」やマインドセットのTipsが読めます:

5. まとめ

今回は、物事を続けるためのコツを目標設定と自己調整学習サイクルの観点から考えていきました。

物事を続ける時には、いかに取り組み始めたこと継続するかを考えがちです。

しかし、意外と見落とされているのは、続けていることが自分が立てた目標を達成することにつながっているかどうかです。

そこで、効果的な目標設定の原理原則を基に長期的な目標を見直して、自己調整学習サイクルで目標の進捗を確認するシステムを作ることで、目標達成に必要な取り組みを続けたり見直すことができます。

目標達成のために必要だと分かれば続けるモチベーションも維持できます。状況によっては今やっている取り組みからより良い方法へ変えることもあると思います。

まずは少し時間を作って、自分が目指したいことや達成したいことを思い浮かべてみましょう。この目標が形になれば、どんな取り組みを続けていくのがいいかが見えてくると思います。

参考文献

Pintrich, P. R. (2000). The role of goal orientation in self-regulated learning. Handbook of Self-Regulation, 451, 451–502. 

Loughran, J. J. (2002). Effective reflective practice: In search of meaning in learning about teaching. Journal of Teacher Education, 53, 33–43. 

Zimmerman, B. J. (2008). Goal Setting: A Key Proactive Source of. Motivation and self¬ regulated learning: Theory, research, and applications, 267.

Zimmerman, B. J. (2013). From cognitive modeling to self-regulation: A social cognitive career path. Educational Psychologist, 48(3), 135–147. 

Zulfikar, T., & Mujiburrahman. (2018). Understanding own teaching: Becoming reflective teachers through reflective journals. Reflective Practice, 19(3), 1–13. 

早川 琢也

 

2007年東海大学理学部情報数理学科卒、2009年東海大学体育学研究科体育学専攻修了。東海大学大学院では実力発揮と競技力向上の為の応用スポーツ心理学を学ぶ。 2014年8月よりテネシー大学運動学専攻スポーツ心理学・運動学習プログラムに在籍。スポーツ心理学に加え、運動学習、質的研究法、カウンセリング心理学、怪我に対するスポーツ心理学など幅広い分野について学ぶ傍ら、同プログラムに所属する教員・学生達のメンタルトレーニングを選手・指導者へ指導する様子を見学し議論に参加する。 2016年8月より同大学教育心理学・カウンセリング学科の学習環境・教育学習プログラムにて博士課程を開始。スポーツスキルを効率良く上達させる練習方法、選手の自主性を育む練習・指導環境のデザインについて研究。2020年11月に博士号(Ph.D.)を取得。現在は、慶應義塾大学兼任研究員として選手の主体性を育める練習環境をテーマに研究を進める一方、NPO法人Compassionのメンバーとしてスポーツ心理学、運動学習、教育心理学などの学術的な理論や研究内容を応用して、子どもが未来に対して希望を持てる心のサポート活動も積極的に行なっている。